67-大事な話・後
この先、俺が先程のクエストをちゃんとクリア出来る程に強くなる事が出来なければ白銀と黒鉄を失う可能性がある。
その事を話しておくべきか否か、暫し悩んだ後に今はまだ話さない方がいいだろうと決断する。
「今はまだ、あの方に関する知識は朧気らしいからな。レベルが上がって成長した後が問題だろう」
『今はまだ、どうにもしてあげられないの?』
『マオ兄ちゃん…魂を縛る糸は、そう簡単には解けないよ…』
尻尾を垂らし問い掛けてくるマオの問いにセラフィが答える。
魂に関する事は魂魄鳥の名の通りセラフィの方がよく知っているのだろう。
他にも同じようなペットや使い魔を所持している登場者が居れば、それなりに情報を集められたのだろうが俺程にレア種に囲まれている者は居ないように感じる。
掲示板で確認した時ですら、セラフィと同じ魂魄鳥しか情報が得られていないのだ。
「この先、白銀と黒鉄を解放することが出来る可能性はあるが…それ相応のリスクもある」
『…僕、手伝うからね!だって、白銀と黒鉄のお兄ちゃんだもん!』
『ボクも白姉ちゃんと黒兄ちゃん大好きだもん…手伝う!』
胸を張って告げる二匹を見て微笑むと、優しく頭を撫でてから俺も強くならねばならないと感じる。
目下の目標は俺の種族クエストの消化と、アクティブスキルの解放を優先しなければならないだろう。
ラルクのお陰で大変な思いをさせられる事になったが、それはそれで修行だと考えている可能性もある。
ある程度の話を終え宿に戻ろうかと思ったが、買い忘れた物を買いに出ると告げたのだから何かしら買って行かなければ不審に思われてしまう。
「一旦この話はここまでにしよう。買い忘れたと言った手前、何か買って帰らないとな」
『パパー!なら僕、アレが欲しいー!』
「ん?どれだ?」
『あの露店みたいな所にある小さいハンマーみたいなの!』
『ボクも少し見たい、かも…』
何か買う物を問い掛ければ、嬉々として目を輝かせながら服を引っ張り店を指差すマオの視線を追う。
小さな小物を取り扱う露店のような物が開かれており、子供が持つにしては小さすぎるその品々はもしかしたらペット用なのかもしれない。
セラフィも興味があるのかじっと見ているので、傍に近寄って品を確認してみる。
「おや、いらっしゃい。ウチの店に気付くなんて、お兄さん…幸運の持ち主だねぇ?」
「俺のペットが売ってる物が気になるらしくてな…。コレは手作りの品か?」
「そうだよ。魔女印のペット用の装備品さ。自由に見て行っておくれ」
嗄れた声の老婆は笑いながら広げている品を自由に見ていくように告げると、俺の肩に乗っているマオとセラフィをまるで子を見るかのような目で眺めている。
肩から飛び降りマオが先程言っていたハンマーを手に取ると、軽く振り回した後にコレ欲しいとおねだりしてきた。
セラフィも欲しい物が見つかったのか、緑色の宝石のあしらわれた小さなティアラの傍から離れない。
「分かった分かった。買うから少し待て。白銀達のも買って帰らないとならないんだから」
「お前さん…ペット達に愛されとるんだねぇ…」
「だと良いんですが…」
「見ていれば分かるわい…。それで、どれを買っていくんだい?」
マオが持っていたハンマーとセラフィの見ていたティアラ、その他にヴィオラが付けられそうな犬や猫の前足に装備させる手袋のような物を老婆に手渡す。
その他で白銀と黒鉄用に、マオがこれがいいと思うと言いながら見繕った黒と白の宝玉を更に追加した。
老婆は俺達が決めた品々を見て目を見張った後に、面白い物を見付けたかのようにひとしきり笑った後に会計を済ます。
その際に、一本の巻物をオマケだと言って渡されて俺は首を傾げる。
「アンタとその子達は良い目を持っているみたいだからね。いつか買った物を更に良い物へ変えたいならそれを見るといい」
「え、でも…」
「どうせ老い先短い婆が持ってても意味が無いもんだ。有効活用してくれそうな若者が持ってて意味があるってもんだよ」
そう言うと次の客が見に来たからか早く退けと言わんばかりに手で払われてしまえば、問い詰める事も出来ずにその場を離れることになる。
もう少し話がしたかったように思うが、商売の邪魔をするのも気が引けるのでまた明日にでも訪ねようと思う。
ハンマーを持ったマオが嬉しそうに振り回しているが、危ないからしまっておくように言えば渋々自分のポーチの中へとしまう。
『ふふん!これで白と黒がおかしくなっても僕のハンマーで大人しくさせられるね!』
「お前…それが目的だったのか、マオ」
『だって、白と黒が僕より大きくなっちゃったんだもん!こういう道具を使わないと僕の足蹴りとかじゃ効かなくなっちゃうもん!』
「いや…今でも充分効いてると思うが…」
確かに白銀と黒鉄がやり過ぎた時にはマオが色々と仲裁に入っていたのだが、普通のペットよりも体力と力があるのか飛び蹴りなどにもかなりの威力がある。
よくそれで目を回していた双子を知っているので無用な心配に思うが、あまり言わない方がいいだろう。
『ママ、ボク似合う?』
「似合ってるよ、セラフィ。お姫様みたいだ」
『えへへ…ママ、買ってくれてありがと…』
『セラフィ可愛いよー!さすが僕の妹ー!』
『マオ兄ちゃん…苦しい…』
重い話の後だったが、いつものようにじゃれ合うマオとセラフィを微笑ましげに見ながら宿への道を歩くのだった。
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