28-試着タイム

急いでログアウトして布団の中に潜り込んだものの、緊張からか寝付けず寝不足の状態でArcaにログインする事となる。

目を開ければ身体の上に重みを感じ、視線を向けるとマオ達が俺が作った装飾品を持ってそわそわしている姿が目に留まる。


『あ、パパ起きたー!おはよー!』


『ママ、おはよ』


『おはようさん!』


『若、おはようございまする!』


『とと様おはようですのー!これ!これ!なんですの?なんなんですの!?』


「おはよう…。随分と早起きだな…」


装飾品を持ちながら朝の挨拶をしてくる五匹の頭を撫でては、かなり食い気味に聞いてくるヴィオラに思わず笑ってしまうも、皆に作ってみたと告げれば小躍りし始めるので可愛いなと思う。

身体を起こすから退けるようお願いすれば、全員太腿の上を陣取ろうとプチキャットファイトを始める。

いつも通りの朝だなと思いつつ、身体を起こすと肩の高さまで飛んで来たセラフィに向けて手の平を差し出せばちょこんと降り立つ。

頭を優しく撫でた後に足を差し出すように告げると首を傾げながらも素直に片足が差し出されれば、白い殻を嵌め込んだアンクレットを足に通す。


「少しじっとしてろよ?」


『ん、ママがいいって言うまで動かない』


『あ!セラが抜け駆けしてるー!』


『あぁ!!いつの間にっ!』


『セラちゃんに負けましたのー!』


『わてらが争ってる時を狙うとは…卑怯やで!』


『先に来た者勝ち』


ふふんと胸を張るセラフィに周りからブーイングの嵐が巻き起こるものの、アンクレットに魔力を通して足のサイズに合わせると、重くないか確認すれば普段通りに飛行できる姿を見せてくれた。

邪魔にならない事が分かり安心しつつ、首に俺が作った薄桃色の小さなスカーフを付けてやる。

嬉しそうに手に擦り寄ると仕方がないから順番を回してあげようと思ったのか、肩に移動するセラフィの頭を撫でてから次は誰がいいと声を掛ける。


『次は某が!』


「よし、おいで黒鉄」


『くっ…お兄ちゃんだから、我慢っ…』


『その次はわたしですの!』


『なんで、わてっていちばんさいごになりやすいんやろか…』


『日頃の行いでしょー?』


『ですの…』


『そんなにお天道様に顔向けできんことしとらんわい!』


騒ぐ三匹を横目に黒鉄と白銀は対となるように首輪の形にしてある。

幅も狭めのシンプルなデザインにしてあるので黒鉄が着けていても多少なりともオシャレに見えると思う。

黒鉄の頭に装飾品を通してから少し緩めがいいか問い掛け、要望通りのフィット感になるよう最終調整をする。


「少し緩めにしておいたが大丈夫か?」


『問題ないでござる!なんだか体が軽いような…?』


「少しばかりステータスが上がるみたいでな。それが関係してるんじゃないか?」


装飾品の調整が終わると軽く頭を下げてから腕を伝ってセラフィが居る右肩の方へ上がっていき、首元を見せながら黒鉄か似合っているか確認してもらっている。

微笑ましく思っていると目を輝かせたヴィオラが傍へと来たので、許可を得てから耳に触れるとループイヤリングタイプにした装飾品を付けてやる。

中々外すことは無いと思うので蝶番の部分を少し固めに調整し、多少の衝撃では外れないようにする。

耳を動かし外れない事を確認すれば、ヴィオラが嬉しそうに尾を揺らしながら擦り寄ってくるので久々に毛の柔らかさを堪能するように撫でていると、刺すような視線を感じそちらへ視線を向けると腕を組んだマオが地団駄を踏んでいる。


『そ、そろそろ脇に避けますの!とと様ありがとですの!』


『マオ兄ちゃん…大人気ない…』


『しーっでござるよ!』


『聞こえてるからねー!そこの二匹!』


「お前らって意外と地獄耳だったりするよな…。ほら、マオおいで」


いそいそと傍を離れるヴィオラを見送りつつ、地団駄を踏んでいたマオに手を伸ばすとツンツンしながら手の平に乗る姿に笑ってしまう。

昔はよくこうして遊んでいたなと思い、頭を撫でた後に腹を擽るように撫でれば機嫌が直ったのか尾を揺らしながらじゃれついてくる。

思えば、お兄ちゃんだからと我慢させてばかりだなと思う。

暫くそうして遊んだ後に装飾品を取り出し、マオの小さな手を前へ出させるとブレスレットを通す。

魔力を通しながら外れない大きさに調節をすると手を激しく振り回したりしても取れないことを確認しては、嬉しそうに目を細めてブレスレットを見ている。


『 えへへー。嬉しいなー!パパが作った物なら尚更嬉しー!』


『旦那はん!次はわて!早く早く!』


「また違うのも素材が手に入ったら作ってやるからな?」


マオがブレスレットに頬擦りをしながら喜んでいるのを見て笑みを浮かべつつ、白銀も早く付けて欲しいと騒ぐ。

背を優しく撫でてから腕を伝い左肩の方へと上がっていくのを見てから、最後は自分の番だと膝の上に乗り身体を伸ばしてアピールする白銀の頭を撫でてやる。

黒鉄が着けているシンプルな首輪を少し幅広に作り、金具を引っ掛けられるような細工を施してある。

取り敢えず白銀の顎にあたる位置で軽く固定してから体を動かしてもらう。


「取り敢えず、軽く動いてみてくれるか?」


『動くのにはなんの支障もないで!』


「なら良かった。それじゃ、仕上げにこれを付けるぞ」


『旦那はんの手作りやし、この装飾品は絶対外さんからな!』


金具の部分に殻をはめ込んだペンダントトップを付けてから魔力を通して銀同士を結合させる。

動きに合わせて揺れる耳飾りとペンダントトップを見て満足気に俺は頷くも、白銀は変な違和感があるのか首を傾げる。


『なんやろ、なんか腹が減っとるのにそこまで入らなそうな変な感じがするんやけど…』


「ん?あれ?白銀用に作ったヤツだけ何故かの効果になったみたいだな」


『は??』


「太り気味な事を考えて神様がそんな効果にしたのかもな。絶対外さないって言ってたしダイエットにも丁度いいだろ」


『え、ちょい待ち。ものっそい前言撤回をさせて頂きたいんやけど』


「さ、朝ご飯にしようか」


『『『『はーい』』』』


『わての話を聞けぇい!』


何やら騒いでいる白銀とヴィオラを腕に抱いて朝食を作るべく庭へと向かうのだった。

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