20-ファンビナ商団の裏の顔・後

取り敢えずは俺の人柄を見る為に色々としようと思っていたが、何か仕掛けるまでもなく助けて貰ったりしたので関係を築いて問題がないとみたようだ。

マオが少し呆れたような顔をしていたが、先程からマンダから送られる熱い視線に痺れを切らしたように肩から膝の上へと飛び降りる。


「試すような事をして申し訳ないと思っています。ですが、情報のような機密に近い物を取り扱うとなると相手をちゃんと知らなければ足をすくわれてしまいますから…」


「別に怒ってない。多少なりとも信用した事を後悔しかけたけどな」


「ご理解頂きありがとうございます。お詫びと言ってはなんですがこちらを用意いたしました」


「…これは?」


お詫びの言葉に軽く首を横に振りながら返すと、ジェスがポスカに巻物を手渡せば目の前のテーブルの上へと広げる。

見た事がある地形だなと思えば、支度が出来たら向かおうと思っているドラグの生息地の地図である。

俺が持っているのと明らかに違うのは、拠点を表すのであろうテントの印の下に数字が書き込まれている事だろう。


「これは、ジェスに見に行かせた黒い牙の拠点がある場所とその人数を書き記した地図となります。わざわざ遠回りをしていたのはこれを調べる目的もあったので」


「8~10人位の人数で六の拠点を作ってる感じか…ん?この時計回りに書き込まれてる矢印は?」


「1時間おきに周囲の警戒と連絡事項の伝令役として二人組となって拠点同士を行き来してるんです。一度奇襲を仕掛けて一人離脱させた事があるのですが、なんらかの確認方法があるようで直ぐに両脇の拠点から応援が駆けつけました」


「ふむ…なるほどな」


黒い牙はギルドなのでメンバーが離脱すれば何らかの通知が行くようになっているのだろう。

等間隔で拠点が設置されている事を考えると、これくらいの距離ならば直ぐに駆けつける事が出来る事も確認済みかもしれない。

何時から活動していたのか分からないが、最前線を妬みながら離脱した人々が集まっているというだけはあるようだ。

マオが地図に興味があるのか再度肩の上に登ると、テーブルの上に飛び移っては拠点の位置を見ながら声を掛けてくる。


『パパー、白と黒に言えば多分対角線上の拠点を同時に奇襲する事は出来ると思うよー?』


「そうだな…。だが、相手がどれ位の力量か分からない状態で奇襲を仕掛けたとしよう。仮に何人か倒す事が出来たとして両脇から応援が来たら流石に黒鉄と白銀でも対処しきれないぞ?」


『そっかー。黒なら多分、確殺は出来るかもしれないけど問題は白だよねー。奇襲を仕掛けて逃げるにも足遅いし』


「マオ。確殺と言うが、魔法抵抗の高い奴が居れば黒鉄の魔法の威力でも倒しきれない可能性がある。設置式の罠のような魔法があって追い打ちを掛けられるくらいの余力があればいいが魔力の消費も激しいだろうしいい手とは言えないな」


『むー!難しいねー!』


腕を組みながら地図を眺めて頭を捻るマオの意見も考えなくはなかったが、その後のリスクを考えれば執るべき作戦ではない。

だが、ドラグを囲むようなこの布陣に何かしらの意図がない訳では無いだろうし、早めに対処しなければいけないような気がする。

マオと話をしていると惚けたような顔をしているマンダとジェスに視線を向けつつ、どうしたのかとポスカを見れば困ったように肩を竦めながら説明してくれる。


「ライアさんがマオくんと話しているのが私には分かりますが、彼らは知りませんから…」


「あぁ、なるほど…。悪かったな、二人とも」


「いえ!俺はあの時のライアさん所の蛇と蜥蜴のコンビの使ってる魔法を見てたんで腑に落ちたというかなんというか」


「小動物と話せるなんて…羨ましい!」


マンダの本心から来る言葉に頬を掻きつつ、これだけの情報をくれたならばと自分が考えている潜入方法を三人に話す。

話を聞きながら数度頷くのを見て目を閉じるポスカの返答を待つ。

ひと口お茶を飲んでから目を開ければ、バレた時にはどうするのかと問われるのでマオが拾ってきた龍酔爆弾を取り出す。


「俺の身分がバレそうになったらマオに頼んでコレを投げてもらうつもりだ」


「なっ!こんな物を何処で!」


「マオがたまたま拾ってくれてな。野盗を倒した時に使ってたのはコレだ。まぁ、廃棄寸前だから発動する確率は20%だが…」


『パパが危ない時には僕が助けるんだもん!』


「いやはや、ホント…ライアさんには驚かされますよ。コレを使うなら他の仲間が駆けつけた際に酒盛りをした様に見せかける必要があると思うので中身の少量入った酒瓶などはこちらで用意いたしましょう」


作戦に必要となる細かい部分の話も必要となるので、明日また詳しい話をする事にする。

リストバンドから通知音が響いたので確認すれば、緊急クエストと記載されたメッセージウィンドウが開かれる。


〈緊急クエスト

???の目的を突き止めろ

目標:ドラグの生息地を独占する組織の真の目的を突き止める

報酬:ファンビナ商団の友好の証、??のタマゴ、R以上ランダム防具BOX

失敗:ファンビナ商団との絶縁、???の目的進行度5%上昇〉


クエストの内容を見て思わず目を細める。

黒い牙というギルドが今回の目的になると思っていたが、???と伏せられているのだ。

彼らからしたら謎の組織だからなのか、その裏に何かしらの他の組織が居るのか。

取り敢えずはこの事を白銀や黒鉄達とも話さなければならないので、テーブルの上に居たマオを肩の上へと乗せれば宿へと戻るのだった。


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