18-見送り

満腹になったマオ達の口周りを一匹ずつ綺麗にしてやると、庭で遊び始めるのを見つつ満足そうな顔をしている神威とポスカに視線を向ける。

細い体なのにペペロンチーノを2回おかわりし、コンソメスープを二杯平らげた二人を見て思わず苦笑を浮かべる。


「普段そんなにこっちの世界で食べないのに…腹出るくらい食っちゃった…」


「私も食べ過ぎました…」


「ホントよく食べてたな…。見てて気持ちいいくらいに」


「マジで美味かった…一家に一人欲しいくらいに」


「うちの商団に所属してくれませんか?お給料はちゃんと満足するくらい払いますから」


「嬉しい誘いだけどまだ行ったことがない場所とかにも行きたいし、たまに時間がある時に料理を作りに行くくらいなら構わないぞ?」


「言いましたね?約束ですよ?嘘付いたらライアさんが欲しい品が手に入らないように手を回しますからね?」


食い気味に言うポスカに苦笑を浮かべながら告げれば、神威も食べたいと目が訴えている。

構わんのだが神威は本来ここらに居るプレイヤーじゃないだろとツッコミたい気持ちをグッと堪える。

遊び疲れたセラフィをマオが持ち上げており、その後ろから黒鉄が小石などがある事を告げながら戻ってきたので手を差し出す。

マオがよろけつつも手のひらの上にちゃんと乗ったのを確認してからテーブルの上へ降ろす。

黒鉄は足を伝って登ってきたので膝の上まで来ると手を貸してテーブルの上に乗せつつ、セラフィが楽しかったと言うようにパタパタと羽を動かすので頭を撫でてやると、お兄ちゃんだから我慢だっと言いながらマオが目を瞑っているので思わず笑ってしまう。


「オレはこの後、一旦テラベルタに行ってきます。ライアから貰った素材で作りたかった装備を依頼してくるつもりです」


「そうか、俺は暫くこの村で黒い牙の様子を見ながら滞在するよ」


「ライアさんの事は私がしっかりとお世話しますから大丈夫ですよ!美味しいご飯は私の物です!」


「おい、目的がダダ漏れになってるが?というか、それじゃ俺がお世話してるだろ」


ポスカをじっと見れば口笛を吹きながら顔を背けるので呆れるものの、商団の皆も食いっぷりが良かったなと思い出せばしっかりと仕込みをした方がいいなと思う。

恨めしげにポスカを見る神威の肩をポンポンと叩けば、また俺にもご飯作ってくださいとボソリと言うので了承しつつ、服を引っ張られたので下を見ればマオが眠そうにしているセラフィの事を教えてくれる。


『パパー、セラが眠そうだからカゴ出してあげてー?』


『む、まだ…起きて、る…』


「今、籠を出すからな」


『小さな兄殿、今度は某が小さな妹を見ているでござるよ』


『ありがと、黒ー』


『兄ちゃん達…過保護』


眠いけれども寝たくないというセラフィの葛藤が見えれば、起きたらまた遊べばいいと告げると渋々頷く。

眠い時には寝るのが一番なので、マオや白銀達が卒業した少し小さい方の籠を取り出すとクッションを敷いてセラフィを優しく持ち上げる。

マオが籠の中を覗き込むように縁に手を添え様子を見ながら、黒鉄が籠の中に入りクッションの中央に乗せられたセラフィの邪魔にならないように寝転がって眠りにつく姿を見守っている。

お兄ちゃんになったなぁと思い、マオと黒鉄の頭を優しく撫でてやると指に擦り寄り我慢した分を補うように甘えてくる。

白銀とヴィオラも食べた分、走ってきたのかヘトヘトになりながら草むらに横になっているので、いつも寝る時に使用する籠を地面に置いてやるとすかさず入りまったりしている。

そんな様子を三人で暫く眺めていたのだが、時間を確認すると神威が立ち上がる。


「そろそろ出ないと。結構テラベルタまで距離があるし」


「ワープ機能とかが無いのが辛いよな」


「まぁ、腹ごなしには丁度いい運動になりますけど」


「ふむ、どこかの国で転移陣を研究していると言う話は耳にしましたよ。情報、仕入れておきますね」


マオを肩に乗せると見送りをする為にテーブルや椅子を片付けながら、食洗機に使った皿や調理道具を入れて起動させる。

誰かに取られることは無いと思うが念の為に、セラフィを見ている黒鉄に見張りをお願いしてから村の出入り口を目指して歩き始める。

その間も、街ごとで変わる特産品や得意な事を商団長として真面目に働いているポスカに聞いていく。

転移陣を研究している国に行けば転移陣解放のクエストが出そうだなと思いつつ、なんだかんだ争うように飯を食べていたポスカと神威は親しくなっており楽しそうに話をしている。


『パパの料理は人を繋ぐのかなー?みんな仲良くなるねー!』


「そうだな。まぁ、仲が良いのはいい事だし変なことで喧嘩しなきゃいいよ」


「ふふふ、私は商団長ですからね…。ライアさんをシェフとして雇えるまであの手この手を使ってみせますよ」


「なっ!ライアは絶対に渡さないからな?いざとなればパーティーを組めばいつだって飛んで来れるんだから」


『………パパ、モテ期ー?』


「男にモテても嬉しくないわっ。と言うか、どこでそんな言葉覚えてきた?」


『なんか、宿屋で楽器持った変なお兄さんがクルクル回りながら言ってたー』


「……俺が寝てる間に何を見てきてるのか凄く気になるんだが?」


言い争う二人を連れながらマオと話をしつつ村の出入り口まで来れば、装備が出来たら様子を見に来ますからと告げてテラベルタに渋々向かう神威を見送るのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る