13-掲示板の人・後
暫く食事処で過ごした後、あまり長いするのもどうかと思い支払いを済ませてから店の外へと出ると日が暮れ始めていた。
マオ達がそれぞれポケットの中にちゃんと入った事を確認し、ふと神威に抱かれたままのヴィオラを見つつ自分達は宿へと戻るが神威はどうするのか問い掛ける。
暫し悩んだ後に、今日は神威もこの村で一晩過ごす事にしたようなので宿へ向かう道を歩く。
「この子と遊んでてライアさんに会いに来た目的をすっかり忘れてました」
「あー、そういえば聞いてなかったね 」
「黒い牙の件ですけど…討伐用に組まれたギルドがまだ動けないらしいので暫くドラグの生息地周辺には近付かないようにした方がいいそうです」
「……それって、他の初心者達は知ってる?」
「掲示板を見ている初心者なら知る事ができるとは思いますが…流石に全員には告知できてないですね」
「そうだよねぇ…。巻き込まれてる初心者が居ないといいけど」
『パパー。僕、偵察してこようか?』
「ダメ、いくら敵から見えなくても危ない」
パーカーのポケットから顔を出して肩の上へと移動し、耳打ちするように問い掛けてくるマオの頭を撫でてやりながら小声で返す。
プレイヤーでも悪意を持っている人間からは見えないと説明されたが、悪意を抱いていなければ見えるという事だ。
最初から悪意を持って周りを見る者は少ないだろう。
ましてや、小動物ともあれば見つけた際は危険性がないとして見過ごされるかもしれないが、故意に悪意を向ける事で見えなくなれば他のプレイヤーのペットとして把握され、逆に警戒されて介入が難しくなるだろう。
ならば、NPCの振りをしたプレイヤーが無害と見せ掛けて情報を売りながら接触する方が上手くいく可能性が高い。
「ライアさん、何か危ないこと考えてません?」
「返り討ちに遭うの分かってて危ないこと考えたりしないよ。そこまで無謀じゃないって」
「ならいいですけど…。何となく信用出来ないというか…」
『なんや、観察力高い兄ちゃんやなぁ…。旦那はんと今日初めて会ったんよな?』
『若と同じように一人で行動する事が多いでござろうからそれ故に観察力が磨かれたのやも知れませぬぞ?』
『わたしは撫でられて満足ですのー』
『ヴィオはそのままその人の子になっちゃうのー?』
『そんなこと致しませんの!わたしのとと様は一人だけですの!』
マオの言葉に怒るも撫でる手は気に入っているのかヴィオラがウトウトしているのを見て苦笑を浮かべつつ、神威に視線を向ければどこか腑に落ちない様な顔をしている。
マオやヴィオラを見てから白銀と黒鉄に視線を向けた後、神威が首を傾げながら問い掛けてくる。
「喫茶店の時から少し気になってたんですけど…。もしかしてこの子達、レアペットやレア使い魔だったりします?」
「レアペット?レア使い魔?何それ」
「レアペットというのは、普通のペットとは違って知能が高い子達でスキルも類稀な物を持っている子達の事です。レア使い魔は成長に時間が掛かるもののステータスが高く意思疎通が可能な子達を言います…と言っても、まだ連れている人が少ないので情報が少ないんですが…」
「……どうしてそう思った?」
「ライアさんがこの子達と会話ができるかのように振舞っている事と、彼らの表情が豊かでオレの言葉も理解してるように見受けられたので」
「……これは俺とお前達、どっちが悪いんだ?」
神威の言葉に思い当たる節が多過ぎて顔を手で覆うと、取り敢えず四匹に誰が悪いか聞いてみる。
『んー、難しい所でござるが全員が妥当だと思うでござる』
『わてら、普通のペットっちゅうとペロくらいしか分からんからなぁ?あの子懐っこすぎてお手本にならんっちゅうか』
『タウとメルは上級使い魔になるから判断基準に入らないよねー』
『これはもう、全員悪いですの!』
「だよなぁ…。神威くん、この事は黙っててもらえるかな?コイツらの為にもあんまり目立ちたくなくてな」
「それはもちろん。ライアさんの事は誰にも言いませんよ。オレだけ知ってる方が色々と面白い事がありそうですし」
バレたと分かればついでだからと口調も砕きながら言えば、笑みを浮かべて頷く神威にやっぱりいい子なんだなぁと思う。
普通ならばそれなりに狡いなどの言葉が出てもおかしくないのに、一切そんな事は言わずにヴィオラを撫でている。
「その代わりというのはなんですが、オレとフレンドになってください。何か有益な情報が入れば教えるので」
「え、それは有難いけど…いいのか?」
「掲示板とかの利用はオレの方が多分得意ですし。お礼にまたこの子達と遊ばせてくれたら嬉しいです」
「んー、それだけだとなんだし、マオに神威くんに合いそうなタマゴ選ばせようか?この子、幸運半端ないから」
『僕が貴方の大事なパートナーを射止めてあげましょーう!』
「マオ、それはちょっと意味が違うな?」
『誰からそんなん教わったん?』
『え?宿に泊まってた変なお兄さんが言ってたー』
変な言葉を覚えてきたなと苦笑を浮かべつつ、神威とフレンド登録すると使い方などを宿への道すがら教えてもらうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます