8-情報収集・後
珈琲を飲んだ事で少しばかり眠気が引くと、軽く身体を伸ばしてから再度PCに向き直る。
聞くべき事をよく考えながらキーボードを叩き、次の質問を神威に向けて投げかける。
〈名前:匿名
実は、もう1つ聞きたいことがありまして…。
ファンビナ商団の方々の情報で、ドラグの出現頻度が早いらしいんです〉
〈名前:神威
うーん、一応フィールドボスのリスポーン期間は討伐されてから6時間後に決まってるけど…。
具体的にどれぐらい早いかとかは分かる?〉
〈名前:匿名
そこまでは分からないんですけど…。
頻繁と言ってたくらいなので、もしかしたら2時間に1回とかの可能性もありますし…うーん〉
〈名前:tricky
おー!?こんな掲示板あんの!?
え、なになに?初心者と話してる感じ?ボクちゃんも混ぜてー!〉
〈名前:神威
trickyさんお久です。
珍しいっすね。この時間に居るの〉
〈名前:Pretty
アタシも居るのよさ!
ログ掘ったけど、ドラグ関連でお困りなのよさ?〉
〈名前:神威
Prettyさんもお久です。
あー…トリプリ揃うと大変なんだよな…〉
〈名前:匿名
トリプリ…?〉
いきなり書き込みに乱入したtrickyとPrettyの二人に驚くものの、神威がなんとなく困ったような雰囲気の返信に現実で首を傾げる。
掲示版なのだから多種多様な人々はいると思うのだが、何か癖のある人々なのだろうかと思って書き込まれる内容を確認する。
〈名前:tricky
ログ掘ったけど黒い牙がまさか初心者が居るエリアで悪さしてるなんてねー?だから、最近新人ぽい子達がラビリアに来なかったわけねー!なるへそー!〉
〈名前:Pretty
ふーむ、ちょっと見た限りぃ…黒い牙のヤツらァ…。フィールドボスのリスポ加速アイテム使ってる気がするのよさ〉
〈名前:tricky
え、そんなんあるの?プリプリっち?〉
〈名前:Pretty
あるのよさー!最近、攻略組が先のエリアでそういうアイテム開発する都市を見つけたらしいのよさートリトリっちー!〉
〈名前:tricky
そうなんそうなんー?俺ら素材集め楽になんじゃんガチうれぴー!…でもさー、攻略組が見つけたアイテムを黒い牙が持ってるってなんか変じゃね?〉
〈名前:Pretty
多分、裏取引してる可能性はあるのよさー。攻略組でもタチの悪いのはいっぱいだし、黒い牙と繋がっててもおかしくは無いのよさ。装備を良くするにはマネーも要るしっ!〉
〈名前:tricky
となるとー…黒い牙には資金源がある訳っしょー?気になるねぇ気になるねぇ!〉
会話の速さに付いていけず書き込みが出来ない状態になってしまい、困惑する事になるが大きな収穫もあるにはあった。
先のエリアでリスポーンの周期を早めるアイテムが手に入るという事は、今回のファンビナ商団や他の行商人を食いものにしているのはプレイヤーで間違いない。
ならば、多少のいざこざを起こしてもNPCではなく、プレイヤーにしか被害が及ばないのであれば多少荒事となっても問題は無い。
「何があっても使わずにしまっておこうと思っていたアレを使うか…。あの能力を使えば有耶無耶にもできるよな…」
行動を起こすなら体格を誤魔化せる服や、印象を強く持たせる為に特徴的となる何かを用意しなければならない。
髪型を弄るという手もあるが果たして村で弄れる場所があるかが問題となるだろう。
話の流れを読みながらもマシンガンのように会話を続けていたtrickyとPrettyが、自分達の方でも関わっていそうな攻略組を調べてみるという事で落ち着いたようで、離れようとしているのが分かれば感謝の言葉を述べる為にキーボードを叩く。
〈名前:tricky
まぁ、初心者くん達が辞めていくのは悲しいしー、ボクちゃん達の方でも被害が抑えられるようにしてみるよーん!〉
〈名前:Pretty
大舟に乗ったつもりで任せておくのよさ!
流石に初心者達に被害が行くのは問題なのよさ!それに…悪質ギルドの振る舞いは目に余ると思ってたところだし、ね…〉
〈名前:神威
あんまり、無茶しないでくださいよ?〉
〈名前:tricky
ボクちゃんは大丈夫だけどPrettyは分かんないかも?まぁ、探りを入れたりなんなりしないとだからここらで撤収ー!〉
〈名前:Pretty
初心者くんの話しづらい流れにしちゃってごめんなのよさ!早めに解決できるようにこっちでも動いてみるから待ってて欲しいのよさ!〉
〈名前:匿名
すみません!僕が入ったら話の腰折っちゃいそうなので黙ってました!
相談に乗って頂きありがとうございました、トリプリさん!〉
〈名前:神威
嵐のような人達でごめんね。
アレでも攻略、検証どっちにも幅を効かせられる人達だから〉
〈名前:匿名
いえいえ!僕としても知らない事が沢山あったので有難かったです!気さくな感じのする方々で読んでても楽しかったですし〉
突っ走り気味の会話だったが得られる情報はかなり多かったので本心を告げつつ、彼等が行動する前にファンビナ商団の恨みを晴らすならば早めに行動するしかない。
ふと、マオがくれた龍酔爆弾の事を思い出しては良い作戦を思い付き笑みが浮かぶ。
〈名前:神威
そうだ。俺も聞きたい事があったんだ〉
〈名前:匿名
なんですか?僕に答えられる事であれば答えますよ〉
〈名前:神威
前にテラベルタの露店通りで騒ぎになったと思うんだけど。
小さなリス…か、チンチラみたいな子と小狐、蛇と蜥蜴を連れてる人なんて見た事ない?〉
〈名前:匿名
うーん、記憶にないですね。僕は道具屋とか本屋とかばかり行ってたので……その人、何かしたんですか?〉
〈名前:神威
いや、何もしてないよ。
個人的に知り合いになりたかったのと、テラベルタ周辺をどうして散策したのか聞きたかっただけ〉
〈名前:匿名
そうですか……。
僕はこれからファンビナ商団の皆さんと養蜂の盛んな村に行くつもりなんです。滞在期間はそんなに長くはないと思いますが…いつか直接お礼が言えたら嬉しいです!
質問に答えていただきありがとうございました。僕はそろそろ寝ますね〉
〈名前:神威
質問に答えられてよかったよ。
俺も、黒い牙の様子は軽く見に行こうと思ってるからもしかしたら会えるかもね〉
少しばかり嘘を答えてしまった事に申し訳なさが募るものの、多少の自分が滞在する場所の情報を残して掲示板でのやり取りを切り上げては体を伸ばすように背もたれに体重を預ける。
神威と名乗った掲示板の人物が、一介の初心者に会う為に来る可能性は限りなく低いと思い書いたが、本当に会いに来たらどうしようかと悩みながら珈琲を飲み干す。
PCの電源を落とすと、取り敢えず眠る為にベッドへと移動するのだった。
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