6-道中の問題
食事を摂った後、酒の酔いもあってか大いびきを掻きながら寝ている人々をテントの中へと運ぶ作業を終えると、ポスカに服の裾を引かれては先程の話の続きをする為に片されていないテーブルの傍へと向かう。
うつらうつらとしているマオ達も籠の中へと寝かせつつ、ふとアルマに新しい籠の話をするのを忘れた事を思い出し頬を掻く。
先程の大皿を思い出しポスカに籠などは売っていないかと問い掛ければ、持っている籠の中で窮屈そうに寝ているマオ達を見て少し待つよう告げ、荷馬車へ向かっていき品を確認しに行く。
「ライアさん。こちらはいかがですか?今使っている物よりも少し広くて深い物を選びました」
「ああ。それくらいなら丁度良さそうだ。これも、あの大皿の作成者が作った物か?」
「はい。少し気難しいエルフの木工職人なのですが、腕は最高だと私は思っています」
「一度会ってみたいもんだ…。幾らだ?」
「500ゴールドになります」
「良い品と巡り合わせてくれてありがとう」
値段を聞くとインベントリから500ゴールド取り出し、麻の袋を手渡すと笑みを浮かべて受け取るポスカを見てからマオ達を移し替える為に一旦籠から出す。
もぞもぞと動く姿を見て悪戯をしたくなったのかポスカがマオの鼻先をつつくと、擽ったく感じたのか顔を掻きながら丸くなる。
籠の中から裁縫で作ったクッションを取り出すと、ソレを見たポスカが腕を掴んできたので驚いて肩が跳ねる。
「こちらの品は何処で買ったんですか!?」
「ん?あー、俺が作った」
「え?」
「え?」
クッションをまじまじと見ながら作成者を聞くとポカンとした顔をするポスカに倣う訳では無いが、同じような顔をしてしまった気がする。
少し見せてくださいと言われたので手渡しつつ、予備のクッションをインベントリから取り出して新しい籠の中に敷きながら、最初の頃に使っていた籠はしまう。
新しい籠に寝かせたマオ達が窮屈さが無くなったからか、それぞれ寝返りを打ったりしながら気持ちよさそうに寝ている。
「これ、ティフォンの毛皮ですよね?ここらでは手に入らない品ですけど…どこで?」
「服屋で布地の福袋を開けた時に入っていたんだ。さっきポスカが悪戯してたペットのマオがどうやら幸運の持ち主みたいでな」
「なんと…凄いですね。商団にも福を招くように欲しいです」
「うちの子はやらんぞ」
籠をテーブルの端に置きながら告げると、苦笑を浮かべるポスカに今度タマゴをマオに選んでもらうかと冗談交じりに言ってみれば、かなり乗り気になってしまい頬を掻く。
話題を変えようとテーブルの上に地図を広げると真剣な面持ちでラビリアへ向かう道の情報をポスカが話し始める。
「先程少しお話しましたが現在、この辺りの道を黒い牙と名乗る集団が占拠しているんです」
「ほう…この辺りは、確かドラグの生息地じゃなかったか?」
「よくご存知で。この道に出没するドラグは一度討伐すると暫く出てこないのですが、この集団が闊歩するようになってから頻繁に出現するようになったんです」
困り顔で告げるポスカにリスポーン時間が早まるような情報は来ていただろうかと思うも、ログアウトした際に掲示板を確認する事にする。
なにか情報があればポスカ達の悩みを解決する手がかりになるかもしれない。
話の続きを促すと、どうやら行商人にはかなりの値段を吹っ掛けて護衛をすると声を掛けてくるが、状況的に危険だと思えば護衛対象をその場に残して逃げる事もあるらしい。
「かなり悪質な集団だな…」
「私達行商人は無事に品を届けて売る事も大事ですが、その地域でしか取れないものを買い付け、技術を使って加工し、必要な人々に売った後、その利益を村へ還元するという役目があります…」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら告げるポスカに、何度か煮え湯を飲まされるような事があった事を悟る。
黒い牙と言うのは搭乗者が作成したギルドの事だろう。
次のエリアへ行く実力がないからか、NPCから恩を売ることで稼ぐ事を覚えた連中だろう。
万が一、プレイヤーではなくNPCが関連していたらば、何かしらの理由があるのは明白だ。
「ポスカ達はどうやってここまで来たんだ?」
「私達はこちらの森を遠回りするルートを選んでここまで来たんです。獣避けと魔物避けの香を焚きながら」
「ん?ならなんでウォル達に囲まれてたんだ?」
「初めて通るルートという事もあり、警戒しながら進んでいたら思った以上に香を消費してしまいまして…。遭遇しない事を願いながらこの村を目指していたんです」
「ここに向かってたのか。俺も行きたかった村だから一緒に行こう。ここらのウォルやブルルン達なら対処できるからな」
「本当ですか!?ライアさんが一緒に行ってくれるなら心強いです!」
その他にもあまりよくない連中が居るのか、色々と情報を貰いながら表示された護衛のクエストを受ける。
ここでの縁がどう転ぶかは分からないが、食事の風景を見ていたがマオ達も懐いていたので悪い人々ではない事はわかっている。
「そういえば、これから行く村にはよく行くのか?」
「えぇ。この村は質の良い蜂蜜が取れる事で有名な養蜂を営む村なんですよ。良ければ品を売りながら案内します!」
「それじゃあ、頼もうかな」
嬉しそうに笑うポスカを見ながらアニキと言って懐いていたアランを思い出しつつ、明日の出発も早いからと解散すると籠を持って用意してもらったテントでログアウトするのだった。
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