73-師匠からの一言

アルマの店を後にするとその足でライアは訓練所の方へと向かう。

道中でヴィオラ用のチョーカーを装着させるとアルマの見立てが良いのか良く似合っていた。

先程の祭りを思い出しあまり目立たないようにと前に言われていたが、マオ達が進んで参加しに行ったりする所もあるのでそこら辺は若干諦め始めている。

それに、マオ達の可愛さを見てもらいたいと思う所もあるのでどんな手を使ってでも守れるように自分が頑張ればいい話でもあるのだ。


『パパー!今度はパパが出店出してみたらー?』


『それはいい案でござるな!きっと楽しいでござるぞ!』


『何の店を出すかによってわてのやる気が…』


『姉様、ダメですのー!ちゃんとやらないとお客さんの笑顔は見れないですの!』


「ヴィオラに叱られるなんてダメなお姉ちゃんだなぁ、白銀?」


『ぐっ、ぐぬぬぬ…』


何も言い返せず唸る白銀の頭を撫でれば訓練所の前に辿り着くと軽くノックをしてから門を開ける。

訓練所に通う人々と組手をしている最中なのか、ラルクが楽しそうに向かってくる訓練生を投げ飛ばしている姿を見て思わず苦笑を浮かべる。


『はわわわわ!怖い人ですの!』


「ヴィオラ、怖くないぞ。訓練となると人が変わる酒好きな俺の師匠だ」


『相変わらずだよねー…あのヒゲゴリラー』


『なんと言うか、この訓練所を任されるには実力が釣り合ってないような気がするでござる…』


『最後に立ちはだかる壁みたいな雰囲気やもんなぁ』


「何だかんだ言いながら懐いてる癖に、なんでお前たちはラルクに対しては素直になれないんだ?」


『ネズミって言われたんだもーん』


『某は踏まれそうになったでござる』


『わては……わてはぁ………なんかあったっけかなぁ?』


理由が曖昧な白銀に苦笑を浮かべつつ投げ飛ばす光景を見て毛が逆立っているヴィオラを宥めるように撫でる。

マオもヴィオラの傍に寄ってくると気遣うように声を掛けているのを見て精神的にも成長したんだなと改めて実感させられる。

昔だったらヴィオラばかり構ったら嫌だと騒いでいたに違いない。


「おぉ、ライア。来てたのか。ん?新しい顔が居るな」


『はっはわわわわわっ!………?優しい手ですのー!』


「ヴィオラって言うんだ。あんまり虐めるなよ、ラルク?」


「なーんか、チビ達見てると虐めたくなるんだからしゃあねぇよ。コイツは懐っこいな?」


無遠慮に頭を撫でられているヴィオラが喜んでいるので好きにさせていると、羨ましくなったのか自分も撫でろと言うようにマオが尻尾でラルクの手を叩くのを見て思わず笑ってしまう。

出会いは最悪だがなんやかんや甘えに行くのが可愛くて仕方ない。

ヴィオラの頭から手を離すと指先でマオを撫でるラルクも満更ではなさそうである。


「ライアが旅に出ちまったら寂しくなるなぁ」


「ラルクに頼まれている事もあるし済んだら帰ってくるつもりでいるからそれまで待っててくれ」


「ガッハッハッ!一丁前に気ぃ使いやがって!なら、まだまだ教えてねぇ事もあるしさっさと済ませて帰って来いよ?」


話をしながら教官室の方へと向かうラルクの後をついて行く。

暫くここに入ることもないと思うと少しばかり寂しいが、そんな事を言っていたら旅になど出れないので考えを振り払うように頭を振る。

座ってろと言われれば近くの椅子に腰かけ机の引き出しの中を探るラルクの後ろ姿を眺める。


「あったあった。コイツだ」


金の装飾があしらわれた便箋を取り出すとそれを持ってこちらへと歩いてくると、差し出された便箋を受け取る。

表面に文字が書いてあるのだが生憎と読めず眉尻を下げつつ、裏面を見れば獅子が剣を抱くような紋章の入った封蝋がされていた。


「コイツを持って行けば王城に入れるはずだ。貴重なもんだから無くすなよ?」


「え…王城の中に、ラルクの友人が居るのか?」


「昔馴染みでな、よく喧嘩したもんだ。後、コイツは忠告だが…アイツにお前さんの使い魔達を見せるのはやめておいた方が良い…」


「もしかして…寄越せとか言うのか?」


「いや、そんな事はしねぇんだが…。アイツが触ろうとしても逃げねぇ動物達がそうそう居ねぇと言うか…。まぁ、とにかく…疲れさせたくないなら一旦留守番させた方が良いとだけな…」


歯切れの悪い言い方をするラルクに首を傾げるものの、ふと思い出したようにもう一度机の引き出しを探りラルクは巻物を取り出す。

周辺の補給向きな村などがチェックしてあると説明しながら手渡される地図を受け取り便箋と共にインベントリにしまう。


「最近は訓練生も少し増えてきたからな!見送りには行けねぇが他の訓練所でもしっかり体を鍛えてこい!」


「……そういえば、神殿でアクティブスキルを封印されたんだが?」


「男ならスキルに頼らず打ち勝ってこい!」


「変な所だけスパルタだな!!」


『漢と漢の熱き師弟関係でござるなぁ…』


『なーんか、ちょっとちゃう気もせん?』


『パパが楽しそうだからいいんじゃないかなー?』


『とと様は暑苦しい方が好みですの?』


『それやと、変な意味に取られてまうからどんな人とも仲良くなれるでえぇかな?』


大声で笑う姿を見ながら睨むもラルクらしいかと思えば、今日は早じまいだと訓練生達を追い出して酒場へと連行されればソアラやミュラ、ヨハネにミランダと勢揃いしており、送別会というなの酒盛りが開かれるのであった。

アランも後から参戦し卒業出来たら後を追うからな!と宣言していたが、暫くはテラベルタから離れないんだろうなとミュラ以外の全員が思った。

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