66-忘れていた戦利品

爆発する可能性がある調薬と錬金に魔道具作成、設備が必要となる鍛治、装飾品制作を除き現在行う事が出来るのは裁縫か調理だろう。

裁縫に関しては針と糸、それに布が必要となるのでまた次の機会となる。

教わるからと自分でも購入した食材がインベン

トリにある筈なので昨日の復習も兼ねて調理に決める。

念の為にインベントリを開いて確認していると見慣れない箱のアイテムがある事に気づき、詳細を確認する為に選択すればペット・使い魔用の装備選択BOXと表示され思わず顔を手で隠す。


『どないしはったん、旦那はん?』


『何かあったでござるか?』


『どうしたのー?』


「これの事をすっかり忘れててな…?」


二つ置かれた箱をしげしげと見た後、これは何だとマオが首を傾げるのを見て以前アラクネのお手伝いをした時の報酬と告げれば遠い目をする黒鉄と白銀にライアは苦笑をうかべる。

マオは既にゴーグルを持っている為、今回選ぶ事になるのは白銀と黒鉄のものだ。


『旦那はーん…いくら忙しかったとはいえ、戦利品の確認怠るてどういうことやねん』


『某達も忘れていたので同罪となりまするが…気を付けねば損をしてしまいますぞ…?』


「面目ない…」


『まぁまぁ、パパも悪気があって忘れたわけじゃないんだしさー。取り敢えず見てみようよー』


何かを訴えるような白銀と黒鉄の視線から逃れるように視線を逸らす。

Arcaをプレイし始めてから仕事をしていた頃は何でも直ぐに確認をしていたが、最近は自分のペースでやれるので色々と後回しにしてしまう事の方が多い気がする。

直さなければいけないなと思いつつ、暫くは無理かもしれないと苦笑を浮かべながら箱を開ける。


「うぉ、選択BOXだからかこうやって品物かホログラムとして表示されるのか」


『色んなのがあるんだねー!』


『このものくる?なるものはかっこいいでござるな!』


『こういう雪の結晶の宝石が付いた飾りも綺麗で可愛いわぁ…』


「それぞれの能力も書いてあるみたいだな…。黒鉄と白銀が言ってるのは…コレか」


黒鉄が気になったモノクルは片眼鏡と言われる右目、左目のどちらか一方に掛ける代物である。

羽根ペンのような装飾が縁と同じ素材であしらわれているので知的な雰囲気を醸し出している。

一方、白銀が選んだ耳飾りは、ロングピアスに近い形状のもので細い棒状の金細工が5本分を台座として使い、雪の結晶を模した淡い水色の宝石が散りばめられている。

男のライアが見ても可愛いと思うので白銀はファッションセンスがありそうだ。


〈賢人のモノクル(レア)

装備効果:INT+10

スキル:属性威力up・小(全属性の威力が少し高くなる)〉


〈雪原の耳飾り(レア)

装備効果:VIT+5、AGI+5

スキル:氷属性威力up・中(氷属性の威力が高くなる)〉


能力的にも黒鉄と白銀に合っている気がするので二匹に確認を取っては、受け取る装飾品を確定すると元から何も無かったかのように箱が消え去りモノクルと耳飾りがベッドの上に置かれていた。

早く着けたいと訴えるように見てくるので先ずは黒鉄に賢人のモノクルを装備させる。


『おぉぉぉ!なんだか不思議な感じはしまするが使い心地は良いでござる!』


「違和感とかないなら良かった。似合ってるぞ、黒鉄」


『弟、なんか格好良くなったー!』


『なんかとは…なんでござろうか?』


『んー、なんか…こう、キリッとしてる感じー?結構抜けてるのにねー!』


『なんかこう、心にグサッと来たでござる…』


『旦那はん!はよわてにも付けて!』


「はいはい」


モノクルを付けて小躍りしていた黒鉄だったがマオの言葉にしょぼくれてしまったので優しく頭を撫でてやる。

急かすように白銀が服の裾を引っ張るので雪原の耳飾りを装備させる。

ふと、白銀に耳はあるのだろうかと気になるものの目から少し離れた場所に耳飾りが現れた。

不思議に思い白銀に許可を取ってからちゃんと固定されているか確認させてもらう。


「不思議だな。しっかり固定されてる」


『ちょっ、いたたっ。あんま引っ張らんといて?』


「すまん。着け心地はどうだ?」


『邪魔にもならんし、宝石から冷んやりした何かを感じて逆に気持ちえぇで!』


『妹の耳飾り綺麗だねー!』


『姉上の動きに合わせて揺れるので、そこがまたいいでござるな!』


『せやろせやろー?……ん?わての事は褒めてなくない?』


「新しく生えてきた金の鬣とも色が似てるし、雪の結晶の形の宝石がアクセントになって綺麗だぞ、白銀」


『くっ…小さな兄さんと黒の後にちゃんと褒めてくるやなんて…。旦那はん、やりおるっ』


マオと黒鉄を睨んでいたが、次いだ褒め言葉に照れたように尾で顔を隠しブツブツと何かを言っている白銀をライアは不思議そうに見つめる。

取り敢えず無事に戦利品を選ぶことが出来たので、気を取り直して調理場を借りる為にライアはベッドから降りると付いてこようとする三匹に声を掛ける。


「悪いな。調理場にペットや使い魔を入れないでくれと言われるかもしれないからここで待っててくれるか?」


『むー!パパの料理してる姿見たいのにーっ!』


『残念でござるが待つしかないでござるよなぁ…』


『はぁぁ、旦那はんが家でも買ってくれたらわてらも見れるんにねぇ』


「んー、何時か実装されたらお前達も楽に過ごせる位の土地に住みたいよなぁ」


渋々断念する三匹の頭をそれぞれ撫でてからライアは部屋を後にし、階下の宿屋の主人を探すのだった。

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