49-突発クエスト

アラクネの前の人集りを見たライアは出てくる人々がタマゴを抱き抱えて出てくるのが見えた。

一つ思い当たることと言えば昨日のペット・使い魔掲示板が関係しているであろう事が容易に想像出来てしまいライアは思わず額を抑える。


『凄い行列やなー。何時もはもうちょい空いとるのに』


『また並んでいる人々も物凄い形相で怖いでござるな…』


『ペロ大丈夫かなー?心配だー!』


「あらあらぁ、これじゃあ周りのお店にも迷惑が掛かっちゃうわぁ…」


「うわっ!アルマさん!?」


「こんにちは、ライアくん。今、ペロちゃんのお散歩から帰ってきたのよ。そしたら、お店の前にこんなに人が居て驚いちゃったわぁ」



いきなり背後から声を掛けられ驚きつつアルマを見ればいつもと変わらぬ様子で話をする姿に苦笑を浮かべていると目の前にメッセージウィンドウが表示される。


〈突発クエスト

アルマの店を手伝え

目標:周りの店に迷惑が掛からないようにアルマを手伝う

報酬:500ゴールド、ペットor使い魔の装備選択BOX(N~R)×2

拘束期間:受注後 約2時間〉


「どうしたの、ライアくん?」


「あー、いや…手伝いますよ、アルマさん。これから裏口から入るんですよね?」


「いいの?ライアくんも何か買いに来たんじゃない?」


「取り敢えずこのままだと買うよりも前に店がパンクしちゃいますから…お店の人間だってわかるような何か貸してもらえたりしますか?後、マオ達も預かってもらえると助かります」


「助かるわぁ…お礼も考えておくわね!」


アルマと共に裏口に回れば扉を開けるとペロを下ろし何かを取りに行くのを見つつ、マオ達を床に降ろすと久々の仕事のような活動に身体を伸ばす。

今回アルマの件はクエストとなったがヨハネの件はクエストとはならなかったのを思い出し何か法則があるのだろうかと暫し考える。

違いと言えばヨハネの件に関しては自分から率先して提案をしたという所だ。

もしや、NPCから頼まれる前に解決してしまうとクエストとして生成されない可能性が出てくる。


「今後は少し待ってから首を突っ込んだ方が良いという事か…?」


「ライアくん、良かったらコレ使ってちょうだい?屋号も入ってるから問題ないと思うわ!」


「ありがとうございま…すっ…随分と桃色が派手、ですね?」


「うふふ、可愛いでしょ?ライアくんなら似合うと思うわ」


裏口から出てきたアルマの手にあるエプロンと頭巾を見て目を見張りながらライアは受け取ると少しだけ困り顔をする。

エプロンの方はかぶるタイプの物で犬が一匹入っても問題がなさそうな大きなポケットがひとつ付いている。

早速とエプロンを着用しては付属している紐でズレないように結ぶとピンク色の頭巾を頭に付ける。

長い前髪が目に掛かり前が少し見づらくなるが別に問題は無いかと思っていると横から手が伸びてきてアルマに軽く髪を弄られる。


「ライアくんは綺麗さんだから髪はちゃんと整えた方がいいわよぉ?それに、目に入ると痛いでしょう?」


「あんまり気にした事がないので…ちゃんと仕事が出来れば問題ないと思ってましたし」


「そうだけど…隠しておくのは勿体ないと思うし今日はこれで頑張ってね?」


「うっ…分かりました」


視界が開けると頬を掻きながら頷いては中の対応は頑張るから外の対応はよろしくねとアルマが店に入っていくのを見てからライアも前に出ようと動くとズボンの裾を何かに引かれる。

ふと下を見てみれば連れて行けと言わんばかりにつぶらな瞳を輝かせるペロとその頭の上にマオが居る。

思わずスクショを撮りつつしゃがみ込んでは困ったようにライアは眉を寄せる。


「連れて行ってやりたいが沢山の人が居るから危ないんだ。今日はここで待っててくれ」


『やだー!ボクもお手伝いするのー!ペロも一緒だから大丈夫だもん!』


「いや、それでもなぁ…」


『旦那はん、わて等は一緒に行かへんしそんな目立たんとちゃうかな?』


『心配であればアルマ殿の知り合いからのゲストと説明するのはどうであろう?』


「んー、変な輩が居ないとも限らんだろう?」


『逆にそんな人が居たら報告するのー!ペロも協力してくれるもん!』


マオの言葉に同意するように鳴くペロにライアは暫し悩むものの白銀と黒鉄の援護射撃もありライアは渋々同意する事になる。

ペロとマオをポケットへと入れてやれば少し重く感じるものの日頃鍛えているからか負担はそれ程でも無いことを確認してから店の前へと回る。


「絶対ポケットから出ないこと。マオはゴーグルは絶対しないこと、その額の宝石が見えないようにな」


『はーい!』


「それと…お客さんへのサービスはほどほどにな…?」


『分かったー!』


本当に分かっているのだろうかと思いつつマオに関して何か言われたらペット用の装備の宣伝と言おうと思いつつ、店舗前から少し離れた辺りで手を挙げて並んでいる人々にライアは声を掛ける。


「アラクネに御用のお客様ー!周りの店舗へのご迷惑となりますので整列にご協力ください!」


「うわぁ!あの人ピンクの頭巾にエプロンだけどかっこいー!」


「見て見て!エプロンのポケット!可愛い子達がこっち見てる!」


「こちらのお客様の後ろにお並びの方はここから折り返しとさせて頂きます!くれぐれも列を崩さないようにご協力をお願いいたします!」


「至近距離にイケメンとワンコとちっちゃい子は反則だってー!」


「待ってる間、写真撮ってもいいですかー?」


「この子達がおびえないように気を使ってくれるなら構いませんよ?」


「お、お兄さんは撮ったら…」


「ダメです。その代わりこの子達を可愛く撮ってやってくださいね」


「は、はひ…」


営業スマイルを絶やす事なく列を整備しながら2匹の写真を求める方々が撮りやすいように工夫をしながら対応をしていると、興奮した様子で出てくる男性客が叫んだ。


「おい!カウンターの方には蛇と蜥蜴がゲストとして出てきてお釣りくれるぞ!もう一回戻って写真を撮りたいっ!」


『妹と弟もお手伝いしてるー?』


「アルマさん、結構のんびりしてるから見かねたのか…?」


店の中でも白銀と黒鉄が手伝っている事が分かり驚くも、なんとなく中の光景が浮かび上がれば苦笑を浮かべる。

ライア一行が手伝った事により本日のアラクネの売上はかなりの額になったらしい。

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