48-例の足の使い道

街を歩きながら見慣れない人々が多くなったと思いつつライアは行き交う人にぶつからないように気をつけて歩いていると目的の道具屋の前まで来れば開店している事を確認してから扉を開けて中へと入る。

以前来た時よりも展示されている商品が多くなっており買取を希望される品が多くなったのだろうと見て取れる。


「おはようございます、ライアさん!いらっしゃいませ!」


「おはよう、ヨハネ。少しは買取を依頼される品が増えたか?」


「はい!今日なんてサリソンや貴重なモグルンの素材を持って来てくれる方が居たんですよ!」


「それは良かった。俺の狩ってきた素材も買取して欲しいんだが、可能か?」


「勿論です!そうだ。例の貼り紙もしようと思うのですが…期間とか必要事項は他にあったりしますかね?」


「そうだな…買取価格UPの内容はこのままにして期間を週単位にし、不足している素材の部分を変えられるようにするのはどうだ?ヨハネ自身が薬剤を調合するならその方が臨機応変に素材が集まってくると思うが」


「なるほど…!じゃあ、黒板系の書き換え可能な物を使用した方が書くのも楽になりますかね?」


「そうだな。今まではスロムだけの事を考えてたから紙で考えてたがその方が楽だろう」


「じゃあ、今回はこの紙を利用して次回から黒板を出せるようにします!」


買取査定をしてもらいながら貼り紙の文体や内容をしっかりと伝わりやすいように書き込みつつ、今後も欲しい素材を切り替える事も考えヨハネと話し合う。

ある程度まとまりが付いたところで買い取って貰えた素材の金額を聞いて驚きに目を見開く。

前回の買取価格が3000ゴールドだったがその倍より少し多い価格が表示されているのだ。


「今回は6500ゴールドご用意させて頂きました!ライアさんのお陰でこの先の運営の仕方も色々と幅が出来ましたし作れる薬も多くなりますから!その収益を考えるともっとお渡ししても問題ないのですが…ライアさん怒りそうですし…」


「当たり前だ…。収益が見込めるにしてもそれが実際に発生しているわけでもないんだから払い過ぎだと怒りたいくらいだぞ…」


「怒られてもこれは受けとってもらいます!後、コレも良かったらお持ちください!僕が調剤を覚え始めた頃に使っていた道具ですけど…」


「よく使い込まれてる形跡がある…愛着もありそうなのに、いいのか?」


「はい!新しい物を渡す方が良いかと思ったんですけど…壊れた場合に損はしないかなと思いまして」


「本を読んだが組み合わせによっては、結構爆発するらしいな…」


「そうなんですよ…。部屋の中もそうですし眼鏡や髪の毛が何度大変な事になったか…」


遠い目をしながら言うヨハネを見ながらそんなに酷いのかと思いつつ買取金と道具セットを受け取ればインベントリにしまう。

ふと売った中のもので説明欄を見て気になったものを思い出しヨハネに問いかける。


「ピレゲアの足だが…」


「あ!今回売ってくださいましたよね!アレも中々手に入らないので困ってたんです!」


「もしかしたら足も大量に入荷するかもしれないぞ?」


「それは願ったり叶ったりです!見た目と凶暴性からあんまり狩れる人がここら辺には居ないので…人気のある精力剤の材料なので仕入れたくても値が高騰しちゃってましたから困ってたんです」


「…………そうか」


意気揚々と告げるヨハネを見つつピレゲアの容姿を思い出して嫌な記憶しか浮かばず遠い目をする。

もしも欲しいのだったら集中的に買取するの文言で別途貼り紙をしておけば率先して売ってくれる筈だとアドバイスをする。

礼を言いながら追加の貼り紙を作成しようとする姿を見て帰ると声を掛けてから後ろ手に手を振り店を出る。

解決すべき道具屋の問題が上手くいったので安堵する。

評判が良くなれば気になっているユーザーが続々と接続する事になるだろうし初心者の金策の為の手段にもなるだろう。

後はラルクの訓練所に関しても何か出来ないかと思いつつ取り敢えずは先に白銀や黒鉄、マオ達が今と同じように外に出ていられるようにする為にアラクネへと足を向ける。


『あのお兄ちゃんも最初の頃と比べて顔色良くなったよねー』


『そんだけ切羽詰ってたんやろなぁ…。商い人が品を欠品させる訳にも行かんやろし』


『そうでござるな…。』


『でも、あの足が材料の薬はボク飲みたくないなー』


『『激しく同意(や/でござる)』』


ライアにしか聞こえないからとそんな会話をしているマオ達のせいで途中笑いそうになったのを堪えた自分を褒めつつ、一応残しておいたピレゲアの足で調薬を試した際の効果確認がしづらくなったなと思う。

自身で試すには不能などの病気は患っていないので流石に難しい。

となると、この街を出る前に誰かそういった面で困っている人間に渡すのが1番だろう。


「ふむ…なら、ラルクに試してもらうよう頼むか…?」


『え、何を試させる気なん?』


『まさかとは思いまするが先程聞いていた例の材料を使った薬を…?』


『ヒゲゴリラには必要なさそうな気がするよ、パパー』


「ヒゲゴリラって言うんじゃない…。いや、俺は普段関わってるラルク達なら分かるがそういった事情がある人達は知らないから顔が広そうな人間に渡して試してもらう方がいいだろう?」


ライアはラルクやソアラ等とは親しくしているがその他の住民達とはそこまで話せていない。

そういった裏事情にも疎いので話を聞き出しやすい人間に渡した方が試薬品と言えど試していみたいという人間は少なからず居るだろう。


「スキル無しでどこまで作れるのか見当がつかないんだけどな」


『まぁ、失敗しても大惨事にはならへんやろ!』


「どうだろうな?」


『え…なんかなったりするん?』


『その時は姉上を盾にしましょうぞ、小さな兄殿…』


『そうだねー』


そんな会話をしながらアラクネの傍まで辿り着くと異常なまでの人集りが出来ていたのだった。

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