42-川辺の調査

何度かサリソンとも遭遇し実戦経験を積む為にも戦闘をしたが無傷で勝つのは中々難しくその度に反省をする事となった。

だが砂地を進む中で分かったことは、真の強者はモグルンのようでプレイヤーを狙わないのは食料にするにも食べる所が少ないからかもしれないと思うような光景に何度も遭遇する事となった。

いつかは戦ってみたいとは思うものの土の中に隠れられてしまう事も考えればスキルがないと厳しいと思う。

暫く歩き続け川辺に辿り着くとラルクの教えてくれた狩場に居るスロムよりも少し淀んだ色をした個体がチラホラと生息しているのが見える。


「やっと着いたな…。ここまですごく長く感じたよ」


『せやねぇ…結構遭遇する敵さんも多いし大変やったわぁ…』


『でも、某達もれべるあっぷした故、少しずつ戦闘は楽になったと思うでござる!』


「ああ、黒鉄と白銀のお陰で戦闘はかなり楽だった。本当にありがとな」


『ボクは探索頑張ったー!珍しいものいっぱーい!』


「本当に珍しい物沢山拾ってきたよな…収集ポーチからタマゴが出てきた時は流石に唖然としたが…」


3匹をそれぞれ褒めるように優しく撫でつつマオの見付けてきたタマゴを巣に返してやるのに時間が掛かったのが痛かった。

リストバンドに触れ時間を確認すれば正午もとっくに過ぎてしまっており、辺りを警戒しながら歩いてばかりいたので緊張が解けたからか空腹が襲ってくる。

少し休憩を挟もうと提案し徘徊している敵がおらずゆっくりできそうな場所を探しいい感じに見渡せそうな大樹の傍に行けば敵避けの呪具を設置し発動させた。


「よし、これで大丈夫だろう…。さっきと同じ物だと嫌だろうからな…」


『ご飯なにかなー?』


『うぅ、あの酒場の飯が恋しなるわぁ…』


『姉上…まだ一日しか経っておりませぬぞ…』


「あそこの飯は美味すぎるからな…。恋しくなるのはわかるぞ」


会話をしながらライアはインベントリから魚の燻製と芋類を乾燥させたスティック状の食べ物を取り出す。

魚の燻製の方も食べやすく骨が取られている物を購入したので喉に刺さったりは無いだろうと黒鉄と白銀に渡しつつ、芋から甘い香りがしているのかはやくはやくと急かすように手を広げて見ているマオに持たせる。

ライアも魚の燻製を齧り意外としょっぱいなと思いつつ食事を摂る。

時間も時間なので一時的なログアウト機能を利用し現実でもちゃんと食事をとってからArcaに戻ると、インベントリから地図を取り出し砂地に出てくる敵の分布と現在見えている川辺の敵の分布を描いていく。


『旦那はん、意外と絵が上手いんやなぁ』


『若は多才でござるな』


「学生の頃、興味のあるものは片っ端から手を出してたからな。やりたいと思うものを覚えられるのは楽しいぞ?」


『パパー、ボクも描いてー!』


『あ、ズルい!わても描いてや!』


『そ、某も描いて頂きとう、ござるっ…』


敵の容姿も描き記していると自分達も描いて欲しいと頼んでくる三匹にしばし悩んだ後に地図の端っこに仲睦まじく遊んでいる姿を描く。

嬉しそうに描かれた絵を見る三匹に笑みを浮かべながら川辺に見える敵であるスロムと魚に人間の足が生え長いヒレが鋭利な刃物となっている敵を描く。

地図にその他の簡単な情報の書き込みが終わると掲示板に添付する為のスクショを撮り、スマホにデータを送信してからインベントリに使った物をしまい再び遠目から川辺の敵を眺める。

魚の姿の敵は見た目が醜悪であるし名前も分からないのであまり気は進まないが戦ってみないといけない。

だが、何故かスロムと行動を共にしているようで近付くのは容易ではない事が伺える。


「さて、どうやってあの二匹を引き離すかだな…」


『わてが凍らせるんはどうや?スロムは液体やから手早く処理して魚の方を解凍する感じとか』


『解凍作業は某にやらせるつもりでござるな…姉上』


『あったり前やん!わて、使えへんもん』


『威張って言うことでは無いのでござるよ…』


「だが、スロムとあの魚みたいなのを引き離すのには良い手かもしれないな…試してみるか」


ペットが非戦闘員であり攻撃対象にならない事はここに来るまでに何度か試したのであまり遠くへは行かない事を約束し別行動にする。

白銀が魔法の準備をしている間にライアと黒鉄は氷を溶かすタイミングを話し合う。


「いやしかし、あの魚…見た目気持ち悪いんだよな…」


『歩き方も何処と無く内股気味でござるしな…』


「やっぱりそう見えるか?」


『うむ…若は気を付けた方が良さそうな…気がするでござる』


『魔法用意できたでー!何時でもばっちこいや!』


白銀の準備完了の声に頷くとライアもインベントリから片手剣を取り出し構える。

標的として自分達からそれほど遠くない距離にいる群れを狙う事にしては、スロムと魚の距離が近くなったのを見計らい白銀が魔法を発動させる。


『来たれ、凍結の華…氷牢華ひょうろうか


「寒っ…周りの空気まで一気に冷やすのか」


『風邪を召されぬよう気をつけるでござるよ、若』


スロムの真下に濃紺色の魔法陣が拡がると冷たい空気が渦巻くようにして吹き荒れる。

液体の身体を持つスロムは即座に凍てつき傍に居た魚のような敵も巻き込まれるようにして凍り付くとその周りを花弁のような形をした氷が形成された。

高い所から見る事が出来たら綺麗なのだろうがそんな魔法は覚えていないので残念に思いながら凍ったスロムへと近付く。

片手剣を両手で持ち核を狙って突き刺すと氷の割れる音と共に破片が舞い上がり光の粒子となって消える。

幻想的な光景だなと思いつつ魚の方を見れば凍っているのにも関わらず眼球が動いておりバッチリと目が合ってしまいライアは嫌な予感に背筋に冷汗が伝うのだった。

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