39-初の遠出・後
暫く出現するウォルやグルゴンと戦っているとリストバンドから通知音がしたので行っている戦闘を終わらせると地図を確認してから見晴らしのいい場所で休憩する事にする。
岩の上に降ろしていたマオと黒鉄を見に行くとアルマがくれた収集ポーチの中身を確認している所に遭遇する。
「何を拾ってきたんだ、マオ?」
『えっとねー!綺麗な羽根にー、ピカピカしてる石とか色んなの拾ったのー!』
『若…あまり驚かずに確認してくだされ…』
「そんなに驚くものなのか?どれどれ………は?」
マオよりも大きな物も入れる事が出来るのか小さな手を突っ込み羽根の付け根を取り出すとライアに向けて差し出してくる。
意図を察して羽根の付け根をつまみ引き抜くと燃えるような鮮やかな緋色に孔雀のような柄の入った羽根が出てきた。
思わずライアは目を瞬かせると貰ってもいいかと確認してから自分のインベントリへと移す。
そして、表示されたアイテム詳細を見て目を見開いた。
「はぐれ焔尾鳥の落とし羽根…?」
『綺麗でしょー?マオもこの羽根好きー!』
「綺麗だが…レア度もヤバいな?」
『某もこんな場所に落ちている物ではないと見ただけで分かり申した…』
『小さい兄さんは幸運の持ち主なんやねぇ?』
収集ポーチからこの場所では入手できないような珍しい品々が出てくる光景にライアは目を瞬かせながらマオを見るとどうだとばかりに胸を張る姿が愛らしい。
あらゆる素材になりそうな物達にどうしたものかと思うものの今は大事にしまっておく事にする。
マオに断りを入れてから収集ポーチの中の物を一旦インベントリへと移動させるとまた拾えると喜ぶマオの姿にライアは笑みを浮かべる。
『小さな兄さんに負けへんようにわて等も頑張らなアカンねぇ』
『姉上は若の肉の盾という役目がござろう』
『あぁん?それやったら黒、アンタもできるやろが!』
『某は小さいゆえ難しいでござる。姉上の方が頑丈に誕生出来たのですから頑張るべきでござろう』
『くっ!否定できへん!』
マオとライアが話している横でコソコソと会話をする白銀と黒鉄であったが何かの気配に気付いた様にある一点を見つめる。
黒い霞のような物が視界に入った気がするが目を凝らして見るものの何も無い。
確かに感じた嫌な気配に白銀と黒鉄は顔を見合わせるもマオと話をしていたライアを見るも気付いた様子が無いのを見て僅かに目を細める。
『姉上…』
『今…何かいやぁな感じ…したなぁ?』
『…この先、何も無いといいのでござるが』
『まっ、わて等が対処できるように警戒しとこや…』
マオを襟元に納め黒鉄と白銀の傍に来たライアが手を伸ばしてくれば2匹とも定位置に収まるように動く。
黒鉄が肩に乗り、白銀が腕にしっかりと巻き付いたのを確認してからライアはリストバンドに触れ先程の通知音を確認しながら歩き出す。
どうやらラルクが渡してくれた訓練クエストのひとつを達成したらしい。
〈訓練クエスト 達成
報酬:ATK+5、DEF+2、AGI+2
最短達成を確認いたしましたので、
追加報酬:ゴーグル(ペット用)
を獲得しました〉
「ん?ゴーグル?ペット用か…マオ、付けてみるか?」
『付けてみたーい!』
『えぇなぁ…小さな兄さん』
『某も何か欲しいでござるなぁ…』
「白銀と黒鉄のは街に戻ったらアラクネで買おうな?」
『楽しみでござる!』
『約束やでぇ!破ったら旦那はんの尻に噛み付いたるからな!』
追加報酬で手に入ったゴーグルをインベントリから取り出すと意外と柔らかい素材で出来ておりお洒落として付けておくにもいい感じのデザインである。
マオの額の宝石も隠しておける位の幅がありまるでオーダーメイドの様だなと思えば、クエストの報酬になるくらいなのでラルクが用意していたものかもしれないとふと思うものの流石に無いなと雑念を払うように頭を振る。
ソワソワとしているマオに顎の下を通すようにしてゴーグルを付けてやると嬉しそうに触っている。
「大丈夫か?キツかったりしないか?」
『大丈夫ー!似合うー?』
「似合ってる、カッコ良くなったな」
『わーい!』
自分で付けては外しを繰り返すマオを微笑ましげに見ていると空が大分暗くなってきている事に気付く。
地図とマップを比べるようにして見れば砂地と平原の境目辺りまで来たようなので新しい場所に入る前に野営をする事に決める。
敵を発見しやすいように視界を確保できる場所を探しては1本の大きな木とその横にある大岩を発見しては目印にもなるのでその近くで夜を過ごす事に決める。
「黒鉄、白銀はマオを見ててやってくれ。俺はテントや敵避けの魔道具とかを設置するから…もし、敵が来た場合には言ってくれ」
『はいな』
『任せてくだされ』
『パパ、頑張ってー!』
大岩の傍にマオと白銀と黒鉄を降ろしてやると軽く頭を撫でてから指示をしてからインベントリからテントを出す。
1人用だが自分の背が大きい事もあるので少し大きめのサイズの物を購入しておいてちょうど良かったかもしれない。
テントの張り方の説明を見ながら組み立てればすっかり陽も落ちて当たりは暗くなっていた。
「焚き火をする前にこの呪具を四方に設置して、と…よし、出来たな」
『なんか透明な膜が出来てるのー』
『これは結界の一種でござろうか?』
杭の先に丸い宝珠が付いている道具を対角線上になるように置けば呼応するように発光すると点と点を結ぶようにして立方体の膜が展開される。
隠蔽と遮断の効果があるようなのでここから出ない限りは敵に見つかる事も無いだろう。
「さて、火を起こすか…。すまないな、枝を少し貰うぞ」
『旦那はん、枝から水分抜いたるで』
『火は某が付けましょう』
「頼む、黒鉄、白銀」
近くから拳位の岩を拾い集め円状に置くと、大きな木から枝を拝借する。
ライアが円の中に手折った枝を敷き詰めると白銀が這ってきて魔法で水分を飛ばしてくれた。
そこに黒鉄が魔法で火を付けてくれたのでスムーズに焚き火を起こす事も出来た。
二匹に礼を述べつつ走り寄って来たマオを膝の上に乗せてやり各自に購入した食料を配り、ゆっくりと食べながら今後の調査の計画を話し合ってから就寝し一日目を終えるのだった。
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