36-酒盛りの夜
道具屋に行くとミュラが随分と上機嫌で迎えてくれたのでどうしたのかと思えば村では作れなかった薬が作れたらしい。
アランを見つけると更に嬉しそうにするミュラを見て顎に手を添えるとライアは何かを考えついたような顔をする。
その顔を見た3匹は何かを諦めているかのような目で見てきた。
『なんや、旦那はん悪い顔しとるんやけど』
『若が何を思い付いたのかは某には見当もつきませぬ』
『パパ、悪いことはダメだよー?』
「お前ら、なんでそんな目で見てくる」
『だってー、パパだしー』
『なんや、信用できんっちゅうかー』
『何かやらかしそうでござるからなー』
「解せぬ」
この言葉を吐くのは二度目となるライアだが、ちょっと発破を掛けてみようかと思っただけなのにこの言われ様は流石に傷付く。
小さな溜息を吐きつつ道具屋を閉めようと出て来たヨハネに気付き、ライアは肩を叩くとこの後の予定を問い掛ける。
「ヨハネさん、今日はミュラを預かってくれてありがとう」
「あ、ライアさん!いえいえ!こちらこそ薬草の配合比率など色々と為に成る話が聞けて有難かったです!」
「なら良かった。所で、もう店は閉めるのか?」
「はい、もう閉店の時間ですし家に帰って寝ようかと」
「ヨハネさん、年齢は?」
「え?今年、25になりますが…」
ヨハネの年齢を聞き笑みを浮かべれば道具屋を閉めるように促しながらアランの方へと顔を向ける。
若干頬を赤く染めながらミュラと話す姿に目を細めるとライアはアランへ声を掛けた。
「よし…アラン!悪いがヨハネとこれから飲む約束があってな。ミュラを宿屋まで送ってやってくれるか?」
「ん?別にいいけど」
「ありがとな!…二人きりにしてやるから宿屋までのデートを楽しめよ?」
「なっ、ななっ!何言ってんだ、アニキ!」
「ミュラ、明日も同じようにヨハネの所に行くのか?」
「そうしようと思ってます、お兄ちゃん!」
「じゃあ、明日も同じように送っていこう。宿屋まで送って行けなくて悪いな」
「いえ!アランくんが居ますから!」
コソリと耳打ちすると顔を真っ赤にして吃るアランをミュラが不思議そうに見るものの、明日も同じように送ると言えば嬉しそうに頷く姿を見てライアは頭を撫でてやる。
恥ずかしさから荒々しくミュラの手を握ると足早に去ろうとするアランに手を引かれながら後ろ手に振ってくれる手をライアは軽く手を振り見送る。
二人が一緒に帰るダシに使われたと悟ったヨハネは苦笑を浮かべながらも有言実行と言うようにライアに連れられ猫の遊び場へと向かう事になる。
「スロムの素材に関してラルクと話し合ったんだが、狩場の情報は公開できない事になった」
「あ…そ、そうですよね。ラルクさんも秘密にする理由があるでしょうし…」
「話は最後まで聞け。だから、ラルクと話をして俺が地図を元に周辺を散策してスロムの生息地を調査してくるつもりだ」
「え、そんな…!ライアさんが危険ですよ!」
「大丈夫だ。俺には頼れるコイツらが居るからな」
動揺するヨハネに腕に居る白銀と肩に居る黒鉄を見せながら告げる。
マオも戦うぞと言うような様子にライアは困ったような笑みを浮かべる。
話を聞いて感極まったのか泣きそうになるヨハネを何とか泣かせないようにしつつ、道具屋を閉めた事を確認してからライアと共に猫の遊び場へ向かい歩き始める。
「調査に行くなら色々と物資も必要になると思いますので言ってくださいね!僕も微力ながら協力しますので!」
「じゃあ、俺に調薬の技術と錬金の基礎を教えてもらってもいいか?本は読んでおくから理解出来なかった部分の説明をして欲しい」
「お任せ下さい!あの店を継ぐ前は旅をしていた事もあるので現地での薬剤の調達の仕方とかも教えられます!」
胸を張って告げるヨハネを意外そうに見つつその時は頼むと肩を叩きながらライアが告げると拳を握り元気な返事が帰ってきた。
暫く話をしながら歩いているとテラス席を確保したラルクが見えればライアは手を振るとこちらに気付いたようで既に飲んでいるのであろうジョッキを掲げる。
ヨハネの姿にも気付いたのか早く来いと声を張り上げ急かしてきた。
「よぅ、ヨハネの坊主!久しぶりだなぁ!」
「ご無沙汰してます。ラルクさん!って、酒臭っ!どんだけ飲んだんですか?」
「んん?エールを3杯とドワーフの火酒を2杯、それに今年が上手いと言われてる店のオススメの酒を2杯、か?」
「結構飲んでらっしゃる!?」
「これくらい序の口だろ?まだ飲むよな、ラルク?」
「おぅよ!ヨハネの坊主がどれだけ飲めるかも気になるしなぁ?」
「ひっ、ひぇ…お手柔らかに…っ!」
席にライアとヨハネが合流すると気分が上がってきたのか酒のペースが速くなるラルクにセーブするように声を掛けながら酒を酌み交わす。
マオに白銀と黒鉄もテーブルの上に降りると頼んである食事を食べたそうにライアを見てくるので取り分けてやる。
ヨハネもそこそこいける口なのかラルクと話をしながらエールを飲んでいる。
ライアも少しづつ呑んだり食べたりしながらツマミが少なくなっているのに気付き一品追加しようと通り掛かったミーナに料理の追加を頼もうと声を掛ければ白銀に服の裾を引かれた。
『旦那はん、わては米で出来た酒があったら1杯頂きたいわぁ』
「白銀…飲めるのか?酔うなよ?」
『某は蒸溜酒が…』
「お前もか、黒鉄。蒸溜酒って…ウィスキーとかで大丈夫か?」
『大丈夫でござる!』
『ボクもー!』
「マオはダメ」
『パパのケチー!』
ミーナに小さなおちょこのような皿に用意してもらえるか聞くと親指を立てながら快く了承してもらえたので白銀と黒鉄が飲む物も用意してもらいつつ便乗しようとしたマオの言葉は華麗に一蹴するライアであった。
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