8-現実とArcaで二日酔い

酒を飲んだ日の翌日の朝になり雷亜は現実で目覚めたのだが軽い筋肉痛と二日酔いに見舞われた。

痛む体と頭に暫くベッドの縁に座り眉間を指で抑えながら動けないでいる。


「地味に頭いてぇ…体も痛いし。ログアウトしてベッドまでよく戻れたな、俺…」


ゲームの中で運動をしたと言うのにこうして筋肉痛になったという事は脳が自分の体で動いたと認識したからなのかもしれない。

二日酔いまでトレースしないで欲しかったが仕方が無いと思うことにする。

部屋の時計を見れば正午を過ぎた位の時間に回復する為にそれだけ寝たという事だ。

取り敢えずテレビを付けてニュースを映すとArcaの話題でもちきりだった。

同じようにArcaで調子に乗って走り回った人達が筋肉痛になっているらしく思わず笑ってしまう。


『昨夜のワールドアナウンス見ましたか?もう既に次の街へのフィールドボスが倒されたらしいですよ!』


『攻略勢って凄いですよね…。ユーザーが作成できるギルド機能が出て来たらもっと競争率とかも上がりそうな気がします』


ニュースに出ている女性キャスター達が話をしているのを聴きながらやっと痛みに慣れてきて体を動かせるようになると昼食の支度をする。

24時間を過ぎてしまえば折角昨日稼いだ訓練クエストの回数がリセットしてしまうのもあるが行く前に寄りたい所があるのだ。


「昨日教えてもらったアラクネ、行ってみないとな」


冷蔵庫にある材料を使って簡単な昼食を作ると喉に詰まらないようにある程度噛み砕いてから飲み込む。

健康に悪いと言われるかもしれないがArcaの酒場で食べた料理に比べるとどうしても味気なく感じてしまうのだからしょうがない。

腹を満たしある程度の家事を終わらせてからカプセルを開き中に寝転ぶ。

カプセルが閉じたのを確認してからコマンドを告げる。


「Arca起動」


微かな起動音を耳にすると一瞬意識が遠のいた後、眼前に見知らぬ天井があった。

二度目という事で起動の際の違和感にも少し慣れたなと思うものの次いで開かれたシステムウィンドウに面食らう事になった。


〈自分の許容以上の酒を摂取した事を確認したため、

称号:火酒を初めて口にした者 獲得

効果:酒で意識を飛ばしたり潰れることがなくなります

※ほろ酔い気分は味わえます〉


「嬉しいような嬉しくないような…なんか、複雑な称号だな」


ベッドから体を起こせば途端に目眩を感じ多少納まっていたはずの二日酔いに似た症状に襲われる。

気持ち悪さに口元を抑えながら未だログインしてから開いていなかったステータス画面を開く。


【搭乗者名:ライア 性別:男

※年齢:28 種族:精霊龍と人のハーフ(封印状態)

状態:二日酔い(残効果時間1:30:00)

戦闘パラメータ

HP:500(+400)

MP:10(+?) AP:10(+?) ATK:10(+?)

DEF:8(+?) INT:10(+?) AGI:5 APP:100(+35)/100 CH100(+50)/100

KRM:0 LUK:50

()内は種族によるボーナス値となります

封印状態のステータスは初期値が表示されます

※の内容は非公開設定されている為、NPC以外の他者には見えません】


「HPが高いのはありがたいな。レベル上げする時に多少攻撃を受けられるのはありがた…………APPって言うと容姿でCHはカリスマ、だよな?これカンストしてんのか?」


HPの値が500と高めな事に嬉しく思うがふと目に入ったAPPとCHの値に目が留まる。

NPCから好印象を受けやすいパラメータがカンストしているとは思わずライアは目を瞬かせる。

そうでなくてもAPPの初期値がそこそこある事も驚きである。


「毎回メガネとか髪ボサボサにしろとか言われてたのにこの値はおかしい気もするけど…なんでだ?」


暫く考え込んでいたが他のパラメータの事が気になり容姿に関する事は頭の隅へ追いやられる。

APPとCH以外のパラメータは伸び代に制限が無いため遊び方次第ということだろう。

しかし、チュートリアルの際に種族選択でパラメータボーナスが付くことは確認していたがほぼ封印状態となっているのには眉を顰める。

プレイしていけば封印の理由なども分かるだろうが初期値でのスタートとなるとこの先のことを考えしっかりと鍛えてもらうのもそうだが装備も整えなければならない。


「んー、鍛えてもらいながらラルクに装備屋とかも教えてもらわないとか…?」


後々必要になる物をまとめる事を考えつつ取り敢えずは宿から出る事に決める。

二日酔いが抜けるまでは訓練所に向かっても身にならないので解除されるまで街を散策する事にした。

念の為に訓練クエストのカウントリセット時間を確認し二日酔いが抜けてからでも余裕がある。

ベッドから立ち上がっては軽い目眩と気持悪さに襲われながらも宿を後にするのだった。


宿代もラルクが払っていてくれたようで足を向けて寝れないのもそうだがしっかり手を抜かずに真面目に訓練しようと心に誓ったらしい。

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