第三章 ~『明軒の栄光と絶望』~
《
整った顔立ちの彼は幼いころから周囲の注目を一身に集め、いつでもコミュニティの中心にいた。
大人になり、社会に出てからも順調で、店の重要な役割を任された彼は、顧客からの信頼を築き上げてきた。
私生活においても、婚約した
順調満帆な人生がこれからも続いていくはず。そう信じていた彼を狂わせたのは
彼は
計画が頓挫し、結果として
生活が一変し、絶望の淵に立たされた
それが
看守から通報者は若い女だと聞かされ、
(俺は優秀だ……計画をやり遂げてみせる……)
(そろそろ店に入って、一時間は経つ頃か……)
物陰で息を潜めていた
骨董品店から
近づいてくる脅威に最初に気付いたのは天翔だった。だが動き出しの差のおかげで、
「
復讐を果たしたと確信した瞬間、突然、
石畳に背中を強打した彼は、痛みと衝撃で息ができなくなる。肺が苦しげに酸素を求める中、手から零れ落ちたナイフを探すと、離れた位置に落ちているのが目に入る。
(いったい俺の身に何が……)
不可解な現象を理解するために顔を上げると、
「
一方、天翔は心配で声に緊張が混じっていた。
「君が無事で良かったよ……でも凄いね。達人のように見事な投げ技だったよ」
「宝石店を経営する以上、護身術も必須のスキルですから。刃物を持った素人に遅れを取ったりはしません」
その言葉で
(まさか
婚約していたにも関わらず、
彼は必死に身体を動かすが、筋肉が痛みで痙攣し、全身が悲鳴をあげていた。だがここで退くわけにはいかないと、立ち上がった
痛みと怒りが
地面に押し付けられた
「もう終わりだよ。観念するんだね」
天翔が厳しい声で言い放つ。無駄な抵抗だと理解したのか、
「では、私を殺そうとした理由を聞かせてもらいましょうか」
「身に覚えがあるだろう……」
「連帯保証の件なら、あなたの自業自得です」
「なら俺を警吏に売った件はどうだ!」
「私は通報しただけです。あなたが暴力を振るわなければ捕まることもありませんでした……なので強いて恨むべき対象を挙げるとするなら、私に行動を予想される単純さと粗暴な性格でしょうね」
「ぐっ……」
正論に言い負かされた
「そういえば、君は捕まっていたはずだよね。どうして釈放されているんだい?」
「俺が教えるとでも?」
「秘密というわけだね」
「きっと
「俺が口を割るとでも」
「話しますよ。あなたは恩義よりも自分を優先しますから」
義理堅い人間なら、婚約破棄をした上に、その借金を元婚約者に押し付けようとするはずがない。
「私の交渉材料は、あなたの減刑です。被害者の私が酌量の余地があると訴えれば、罪は軽くなるはずですから」
「……断ればどうなる?」
「あなたが逆恨みで人を殺そうとする人だと正直に伝えます。証拠の刃物も天翔様の証言もありますからね。殺人未遂の罪で、最低でも十年、下手をすると無期もありえます……その上であなたは義理を優先しますか?」
「それは……」
「……約束は守るんだろうな?」
「当然です。あなたとは違いますから……それで、どうしますか?」
「減刑のためだ。話してやる……」
「
観念した
「有力な証拠が手に入りましたね」
この証言があれば、
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