第三章 ~『偽物を贈ったかの確認』~
数日後の朝、
窓の外に広がる風景は、行き交う人たちの躍動感に溢れていた。各種の店が軒を連ねている市場では、鮮やかな果物や野菜が売られ、商人たちの呼び声が響いている。
視線を通りから外すと、少年たちが路地で遊ぶ姿も目に入り、その笑い声が清々しい空気をさらに和やかにしていた。
そんな賑やかな喧騒が届く中、
「外出申請ありがとうございました」
「僕がしたくてしたことさ。それに許可が降りるまでに時間を掛けてしまった。もう少し日程を早められれば良かったのだけど……」
「天翔様の責任ではありませんよ。なにせ私は容疑者ですから。申請が簡単に下りるとは思っていませんでしたから」
そんな
「ご恩は必ず返しますね……」
「君と友人になれたからこそ、僕は充実した毎日を過ごせている。それだけで十分に報われているよ」
互いの関係性を大切にしようとする意思を天翔の発言から感じ取る。彼の友情に感謝していると、車窓の景色に変化が生じ始める。
馬車が活気のあるエリアを抜けたことで、聞こえていた喧騒が静まっていく。落ち着いた雰囲気の店が並ぶ区画は、高級店や老舗の店舗が密集していた。
「目的の人物とは初対面なのかい?」
「はい。ですが、慶命様から事前に紹介状を送ってもらっていますから。滞りなく、会えるはずですよ」
「その人が今回の謎を解く鍵になるんだよね?」
「はい。意見が聞ければ、私の仮説が正しいかどうかを検証できますから」
話し込んでいると、目的地に到着したのか馬が足を止める。古風で趣のある外観の店の前で、
古書や骨董品を扱っている店なのか、店先にはさまざまな時代の品々が展示されていた。木製の看板が風に揺れ、温かみのある歓迎の雰囲気を放っている。
二人は扉を開けて、期待と緊張を胸に秘めながら店内へと足を踏み入れる。まるで時間が止まったかのように静かな空間には、人の姿が見えなかった。
「慶命様の紹介で参りました!」
「事前に話は伺っております。私の店にようこそ!」
店主の声には親しみやすさがあり、接客が板についていた。嫌味にならない程度に胸を張る姿から、この店を誇りに感じているのだと伝わってくる。
「素敵な店だね」
天翔は飾られた古地図や武具、精巧な腕時計に視線を巡らせる。物の善し悪しが分かるのか、彼は感心するように何度も頷いていた。
「この国での歴史は浅いですが、隣国では三代続いた老舗ですから」
「移住したのは最近かい?」
「数年ほど前です……移住した当初は苦労しましたが、慶命様からの支援のおかげで、順調に経営できております」
店主の表情には、慶命に対する深い感謝が溢れていた。彼は一瞬、後宮の方角に向かって敬意を示すように頭を下げると、その後、商談用のテーブルへと
「それで私に聞きたいことがあるとか?」
店主は探るような視線を送る。
「移住された際に、慶命様にダイヤモンドを贈られたことを覚えていますか?」
「もちろんですとも」
「そのダイヤ……本物でしたか?」
「当然です。私が贈ったのは間違いなく本物のダイヤモンドです。偽物のはずがありません」
店主の声には、自らの誠実さに対する誇りが滲み出ていた。
「それに後宮を騙して敵対するリスクを背負うほど愚かではありませんし、そもそも偽物を渡すくらいなら最初から何も贈りませんよ」
真っ当な意見に
「では質問を変えます。ダイヤモンドはどこから手に入れましたか?」
この質問の意図は購入時に店主が騙されていたケースを想定していた。それを察したのか、店主は正直に答える。
「街にある唯一の宝石店で購入したものです。そこの鑑定士は腕が良いと評判ですから。騙すような真似もしないはずです」
「なるほど……私の父のお客様でしたか……」
数年前なら父親が生存しており、
「これですべてが繋がりましたね」
これで
なぜ
「宝石の謎は解けました」
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