第三章 ~『取り調べと優しい人達』~
宝物殿からオパールのネックレスが消え、その容疑者として
人目につかない場所に設けられた取り調べ室は、厳かな雰囲気を醸し出しており、天窓から差し込むぼんやりとした光が、
彼女の向かいの机に座るのは二人。
一人は記録官であり、取り調べの発言や反応を文書化する役目を任されている。背筋をピンと伸ばし、厳格な顔付きをしていた。。
もう一人は取り調べを担当する尋問官で、
「
切り出された本題に戸惑っていると、
「心配するな。儂はお主が犯人でないと信じている」
「
「もちろん儂も犯人ではないぞ」
「ふふ、分かってますよ」
いつもの自然体を取り戻した
だが誰もが納得するだけの証拠を示さなければ、隣に座る記録官のように、疑いの眼差しを向ける者が大多数なはずだ。密室の謎を解き、嵌められたのだと証明する必要があった。
「
「
「そうですか……状況証拠からも、このままでは私が犯人で決まりなのでしょうね」
「他の尋問官なら、弁解の余地なく牢に送られていただろうな」
その言葉で
「私のためにありがとうございます」
「気にするな。優秀な人材を失うのは後宮にとっても不利益になる。
「
「それよりも大切なのは疑いを晴らすことだ。そのためには最も厄介な密室の謎を解かなくてはならない」
「私も同意見です」
「真っ先に思いついたのは合鍵の存在です。ただ特殊な形状ですし、簡単には複製できないと思います」
「さすが、
「偽造防止の技術のおかげですか?」
「それもある。だが最大の理由は、あの形状の鍵が後宮のものだと、街の鍵屋に知られている点だ」
「なるほど」
腕のある鍵屋なら技術的に複製できるかもしれない。だが優秀ならば仕事に困ることもないため、後宮を敵に回す危険を犯すはずがなかった。
「他の可能性としては隠し通路でしょうか……」
「儂の知る限り、宝物殿にそのようなものはない。採光用の窓も人が登れる高さではないからな。出入りしたとするなら、正面の扉からだろう」
「そうですよね……」
二人は他にも密室の謎を解くためのアイデアを挙げていくが、そのどれもが現実味に欠けていた。議論が出尽くしたところで、
「謎を解くには、材料が足りませんね」
これだけ思考を巡らせても真実に辿り着けないのだ。推理するには、新たな手がかりの発見が必要だった。
ただそのためには、
「……私はこれから勾留されるのでしょうか?」
状況証拠から
だが
「安心しろ。
「もしかして
「残念ながら儂は尋問官だ。身元保証をするわけにはいかない」
「では誰が?」
「天翔と
「あの二人が……」
「身元保証の責任は重い。もし容疑者が逃げ出せば、連帯で罰を負う。
「取り調べはこれで終わりだ。
「任せてください。期待に応えてみせます」
待合室の隅には小さな茶処も設けられており、緑茶が用意されている。来訪者や取り調べを受けた容疑者が少しでも安らげるように、細やかな配慮が施されていた。
「
天翔が声を弾ませながら呼びかけると、座椅子に腰掛けていた
「
「ご心配ありがとうございます。取り調べは
「
真っ直ぐな謝意を受け、大きな反応を示したのは
「
天翔は小さく頷くと、穏やかな声で続ける。
「僕も君が犯人でないと信じていたからね。身元保証人を引き受けることに躊躇いはないさ」
「天翔様、それに
感動で胸の内が熱くなるのを感じながら、
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