第二章 ~『立ち去る映雪』~
朝露が輝く南門の石畳を背景に、
南門の扉は閉ざされており、静かな空気が流れている。門には幾多の風雨に耐えてきた痕跡が残っており、周囲に並び立つ古木も合わさり、歴史を感じさせる佇まいとなっていた。
「これでお別れですね、
「
「他の女官や宮女にはまだ
「
「借金は大丈夫なのですか?」
「退職金で借金を返せるだけの金額を頂いたの。だからもう人を騙して生きる必要もないわ」
「きっと皇后様の計らいでしょうね」
「私、皇后様には感謝しているの。後宮への恨みが綺麗サッパリなくなるほどにね」
「それを聞けば、皇后様もきっと喜んでくれますね」
責任感の強い皇后は、過去の冤罪に罪の意識を感じていた。借金から解放され、幸せになったと知れば、彼女の心も救われるはずだ。
「
「私もよ……
温かさを感じ取り、
「
「
震える声で
その様子を
後宮を去れば会うのは困難になる。だが不可能ではない。外出許可さえ得られれば、再会は可能だ。二人はそれが分かっているからこそ、また出会う日を夢見て微笑んだ。
「
「私はもう十分にやり返しましたから……
「あなたは強いのね」
「よく言われます」
薬を混ぜられた時も、やられて黙っていたわけではない。十分に意趣返しはしていたため、謝罪は求めていなかった。
「
「アテはないわ。当分、無職のままかもね」
「なら一つ提案があります。私が経営している宝石店で、一年間だけ働いてくれませんか?」
「その店は私が後宮で働いている間は休業中となっています。ですが、この一年でお客が店から離れてしまうかもしれません」
「なるほど。だから私に店を任せて、顧客の足が遠のかないようにして欲しいということね」
「仕事の対価として給金はお支払いします。売上次第ではボーナスも支給しましょう。如何でしょうか?」
店の経営には宝石の知識が求められる。誰にでもできる仕事ではないからこそ、両親から技術を叩き込まれてきた
「私にとっては素晴らしい話ね。ただ本当に私でいいの? また裏切るかもしれないわよ」
「
「どうしてそう言い切れるの?」
「私、宝石と同じくらい人を見る目にも自信がありますから」
「分かったわ、
「ふふ、では任せましたよ、店長代理」
「どうかよろしくね」
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