第二章 ~『夕食と薬』~
夕陽が窓から差し込み、室内を柔らかな光が満たしている。空腹を感じ始めた
「お腹が空いたわね」
「少し早いですが夕飯にしましょうか」
「いいわね」
「綺麗ですね……」
「この景色が見られたのも
「私のですか?」
「休暇なのに、私の仕事を手伝ってくれたでしょ。おかげでいつもより早く業務を終えられたわ。だから私が庭園の景色に感動できるのも
ありがとうと、
「気にしないでください。ただ予定がなくて暇だっただけですから」
「でも……」
「それに私が困ったら、
人生とは助け合いだ。
「私、本当に良い部下に恵まれたわね」
感慨深げな賞賛が、夕陽に照らされた庭園に柔らかく響き渡る。その声は空間全体を温かな雰囲気で包みこんだ。
(やはり
素直に部下に感謝できる人間性は地味だが優れた能力の一つだ。立場が下の者に対して横柄な態度を取る者が多い中で、
「食堂が混む前に急ぎましょうか。
「ですね」
壁面には細かい彫刻が施され、床には美しい模様が描かれた石畳が敷き詰められている。その上には長い木製のテーブルが整然と配置され、天窓から差し込んだ夕陽によって朱色に照らされていた。
普段は宮女や女官たちの話し声で賑やかなこの場所も、今はほとんど人がおらず、静かな雰囲気が漂っている。
「早めに来た甲斐がありましたね」
「こんなに静かな大食堂は久しぶりだわ。食事も並ばないで済みそうだし、取ってくるわね」
「なら私も……」
「
それだけ言い残して、
遠目で眺めていると、
彩り豊かな野菜の炒め物に、蒸し鶏、そして
(食べるのが楽しみですね)
料理が届くのを心待ちにしていると、
「ここの席に座ってもよいでしょうか?」
「どうぞ」
笑顔で答えると、若い宮女は
「私が選別した料理たちよ。美味しそうでしょ」
「素晴らしいチョイスですね」
先ほど選んでいた料理以外にも、蒸し上がりの点心やお茶も追加されている。早速、蒸し鶏を口に運ぶと、柔らかな感触と肉汁が舌の上で溢れた。
「大食堂はお茶の種類も豊富なのよ。私のオススメはこの白茶ね」
「初めて飲む品種ですね」
「なら期待していいわよ」
優しい香りがほのかに広がる。口をつけると、甘みが残る繊細な味わいが心を落ち着かせてくれた。
穏やかな時間を楽しむ
「こんなところで会うなんて奇遇ね」
「
「ここの点心は絶品だもの。おかげさまで常連よ」
「私のひもじい食事が気になる?」
「いえ、そういうわけでは……ただ少食だなと」
「食べられるならもっと食べたいわよ。でもね、私たち下級女官の給金だと毎日の食費も馬鹿にならないのよ」
中級女官であれば無料の食事も、下級女官は支払いが求められる。節約のために、彼女は空腹を我慢していたのだ。
「ふん、あなたの顔を見ていると、気分が悪いわ」
「
「施しのつもり?」
「そうでないことは
そう指摘された
「謝罪するつもりはありますか?」
「ないわ」
なら容赦する理由もないと、
「
「ある意味では反抗ですね。
「嫌がらせ?」
「この白茶に毒……いえ、そこまでするとは思えませんから、下剤でしょうか。混ぜてありますよね?」
「だんまりですか……では説明を続けましょう。先程まで私の隣に座っていた宮女が消えていますが、あの人は
そこまで話せば、
「でも
「私も最初は警戒するだけでした。ですが、
すべてを見抜いた
(これで懲りてくれると良いのですが……)
再び静寂が訪れた食堂で
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