34.やはり狐顔は信用できない
「ってぇ〜……」
急に後ろに引っ張られたかと思えば兵舎の一室に押し込められた。犯人はもちろん……
「まったく、無防備過ぎて拍子抜けしましたよ。本当に素人なんですね」
暗室に蝋燭を持って現れたのは狐顔の青年……ウェイドだった。
両腕を前で縛られているのは単に舐められているからか。足は自由で、普通に動く。
「交流戦、ボクは負けましたが……まぁそれは構いません。あの姉妹は個人的に好きではないですけど」
「お前の好みはどうでもいいからさっさと縄解いてくんない?」
「それはできませんね、副団長の強さの秘密をようやく知ったんですから」
奪われた銀製のケース。
魔眼レンズの容器である。いつの間にか俺からくすねていたらしい。
「お前……それ!」
「噂には聞いてましたが、まさか魔眼が人工的に作ることができるとは思いませんでしたよ……帝国で幅を利かせている魔眼持ちも、これがあれば少しはおとなしくしてくれるでしょうからね」
「…………なぁんでそこに帝国?」
「あはは、これは失礼。ボク、元帝国騎士団ですが、現在は帝国諜報部隊の一人……つまり、スパイなんですよ」
「それ言っちゃダメじゃん……」
「構いませんよ。副団長の秘密……このレンズを奪ったら騎士団からは消える予定だったので。あぁ、ご心配なく……カンペーさんは殺しませんから」
最初からされるつもりもない。
とはいえ、色々忠告することはあるんだが……
「本当は3連勝を食い止めるために病気を蔓延させて副団長を失脚させるつもりでしたけど、貴方のせいで台無しですよ」
「やっぱお前だったんだな犯人」
「おや、疑ってたんですか?」
「狐顔ってのは基本的に企んでる奴なんだよ」
「……よく意味がわかりませんが、まぁいいでしょう」
「おーおいおいおい、なにしてんだ⁈」
ウェイドは容器からオレンジ色の魔眼レンズを取り出し人差し指に載せた。熱はないのか、熱い素振りは見せない。
「強くなれる物が目の前にあれば取るのが道理でしょう?」
「イヴのアホがつけてたんだぞ⁉︎」
「尚更ですよ、副団長の
「いやそうじゃなくてぇっ……!」
止めようと、立ちあがろうとした瞬間、首元に剣の切先が向けられた。
「あなたにはわからないでしょう! 望んで騎士団に入ったにも関わらず、特殊な力がないことで移動させられこんなことをするボクの気持ちなんて」
「……」
どうでもいいぃ〜……!
それがただのコンタクトレンズなら勝手につけてろとも言える。しかしそれは魔眼レンズ、手入れをしたおかげで熱が消えてるのかもしれないが……
『それが魔眼の副作用。炎猩々の魔眼レンズは試作品でね、発火能力の代償として常時その熱を受け続けるのさ』
もし副作用が起きればウェイドの目に何があるか分かったもんじゃない。
「なんならあなたを人質にしてあのアイナって医者に新しい魔眼を作らせるのもいいですねぇ! これさえつければ、騎士団内でボクに勝てる人間なんていないんですから!」
その時、
ウェイドの手に載った『
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