第13話 館のあるじなのでメイドに手を出した


 次の日、昼まで起きられなかった。何度か部屋をノックされたが、寝ていると伝えると去っていった。

 精神は元気でも、肉体は旅がおわった休息モードに入っており、朝方に目がさめても、すぐにもういちど眠ってしまった。

 午後に目覚めたあとも、そのまま部屋にいた。


「ふたつの月の時間が95日すぎたから……」


 寝巻のままベッドにすわり、世界の魔力の流れにむけて、瞑想をする。

 まだ旅を終えたばかりで、精神の緊張が残っている。知らない屋敷で不安もある。それを落ちつけて、不必要な敏感さと、気疲れをときほぐした。

 瞑想がおわったときは、夜だった。


 夜中になって部屋を出ると、屋敷のなかは真っ暗だった。みんな寝ているのか、物音ひとつ聞こえず、誰のすがたも見えない。


「コラリア、おいで」


 クラーケンの幼生が肩にのった。視界を共有して闇のなかを見通す。屋敷の探検に出かけた。


 深い絨毯が敷かれた通路を、ぽすぽすと足音を立ててあるく。昨日ひととおり案内されたが、寝て起きると半分以上、忘れていた。2階はゴスの部屋と倉庫、サロンらしき部屋、書斎などがあると言われたが、どのとびらのさきがそうなのか、思い出せない。もういちど自分の目と足で確認したかった。


「ここも鍵がかかっている……」


 2階の部屋はほとんどが施錠されていた。シトロンが屋敷内を管理しているといったので、彼女が夜な夜な施錠しているのかもしれない。

 それを魔法で開錠しては、悪い気がした。


 バルコニーにつづく窓だけは、窓の左右にわたす留め金だけで、内側からあけられた。

 そとに出ると、冷たい風が吹いていた。遠くに砂漠が見える。寝巻では寒く、すぐに引きかえした。


「夜の静寂、魔物の沈黙」


 夜中に騒ぐと魔物がくるという、善神の教訓をおもいだして、ひとりつぶやく。

 屋敷のまわりでは魔物の叫びも、動物の声も聞こえなかった。


 テラノヴァは1階におりた。一階には風呂や食堂、客間、メイドたちの部屋などがある。

 廊下の向こうから光が見えた。ほとんど聞こえない足音とともに、ランプを持ったメイドがひとり歩いてきた。

 メイドはテラノヴァのすがたを認めると、会釈してそのまま歩いてゆく。


「見回りですか?」


 メイドはこくりとうなずく。

 通りすぎるとき、風が起こってほほに当たり、テラノヴァは寒くて腕を抱えた。

 メイドがとまってふり返った。

 どうしてか、不満そうに眼を細めてテラノヴァをにらむ。


「どうかしましたか?」


 なぜ怒りを買ったのかわからないが、メイドは近づいてきて、両手を広げた。


「……?」


 通せんぼするようなジェスチャーだった。仕事の邪魔になるので、廊下のさきにはいくなと言う意味だろうか。


「ごめんなさい。お仕事の邪魔をしました」


 部屋に戻ろうと考えたとき、メイドは軽く地団太を踏んだ。そのあと抱き着いてきた。


「えっ」


 柔らかくてふわふわとした布の感触。

 捕まえられてうごけなくなった。どう対処するのが正解かわからない。されるがままにした。


 メイドから伝わる体温が暖かい。

 湯たんぽのかわりになる暖かさだった。

 そのまま考えこんで、数分が過ぎた。メイドは上目づかいに見つめ、抱きついている。


「部屋に戻ります」


 結局わからなかったので、そう言って両肩をおしてメイドをはなした。今度はうんうんとうなずいて、見回りに戻っていった。

 疑問だけが残ったが、体温が去ってゆくものさびしさがあった。



 つぎの日は爽快な目覚めだった。気をはらずに思うがままうごける。


「あら。新しいご主人様がお目覚めね」


 着替えて部屋を出ると、シトロンに出会った。あかるい金髪をなびかせ、嬉しそうに笑って近寄ってくる。


「お食事にする? それともべつの用事を手伝いましょうか?」

「食事をお願いします」

「わかったわ」


 シトロンはベルを取りだして鳴らした。

 スカートから羊皮紙の束をとり出すと、指先から炎を起こして、ペンのかわりに文字を書いてゆく。ほどなくしてメイドがひとりやってきた。


「ココティエにこれを渡しなさい」


 メイドは会釈して去っていった。


「昨日の夜、廊下を歩いているとメイドに会いました。なぜか抱きつかれましたが、すこし怒っていました。どういう意味だったのでしょうか?」

「さあ? あの子たちが何を考えているかなんて、わからないわ」

「そうですか……喋れないと不便ではないですか?」

「そうはいっても、力のよわい精霊は、複雑な会話ができないの。もっと上位になれば、私たちみたいにあたまがよくなるわ」


「成長させると便利そうです」

「言葉を教えるのは大変よ。私たちは古いご主人様から、長い時間をかけておしえてもらったの。ある程度おぼえたら、オペラの本を読んで自分で言葉をマスターしたのよ」

「あなたたちが、外見に似合わない喋りかたをする理由がわかりました」


「私は貴族の女主人メントルイロアスの言葉を真似したの。ココティエはそのライバルで、庶民からの成りあがりミニモプロコス。『嫉妬のるつぼ』はひとりの男をめぐって、ふたりの女性が織りなす愛憎の話なの。最後はみんな死んじゃうわ」

「恐ろしいお話です」

「おもしろいのよ」


 上位の精霊でも、主人から手ほどきを受けなければ、流ちょうに話せない。

 教育の手間を考えると、メイドの情緒を伸ばしても扱いきれない予感がした。


「でも変ね。あの子たちは主人をとがめたりしないわ。新しいご主人様は、いつでも館を自由に使う権利があるもの。鍵だってお部屋に置いてあるし」

「それは知りませんでした」


 あのときは寒かった。

 もしかしてメイドは、からだを使って温めようとしていたのではないかと、今になって思い当たった。


「私は勘違いしていました。私が寒がっていたから、抱いてくれたのです」

「ふーん、そうなの」

「緑色の目をしたメイドは何という名前ですか?」

「エコニね。褒めるならあの子たちを、もっと使ってあげると喜ばれるわ。新しいご主人様は魔力がたくさんだもの」

「使う?」

「古いご主人様は、私たちにお口で奉仕させたけど、新しいご主人様は陽根が存在しない性別だものね。あの子たちにマッサージをしてもらったらどうかしら? 魔力があふれるからだに奉仕できるなんて、とても喜ぶと思うわ」


 テラノヴァはメイドがしたあからさまなジェスチャーを思い出した。


「あまり興味がないです」

「そう。だったらこうして、魔力を浴びるしかないわ」


 腕にシトロンが抱き着いてくる。いちばんお姉さんぶっているのに、子猫のようにあまえてくる。


 もっと濃密に魔力を渡せば、メイドは進化するのだろうか。

 館の主人とは、そこに務める住人の責任を背負っている。不満を減らし、長く働いてもらうためには、労働環境を改善する必要がある。

 それは個人個人で求めているものは違うが、十分な報酬の支払いは、大多数にあてはまる無難な選択だった。工房で働いているとき、テラノヴァはそういった機微も学んだ。


「その……私は両性具有になる薬も作れますが、そちらのほうがメイドを満足させられますか?」

「まあ、そんなお薬があるなんて、すごいわね……ねえ! 私、私に一番に使ってほしいの。いいでしょ?」

「あなたも生やしたいのですか?」

「そっちじゃないわよ! 新しいご主人様に生やして、私に使ってほしいって意味よ。私が一番最初に、濃厚な魔力を味わってみたいの。いいでしょ? 私が一番ね! 約束よ!」

「はあ」


 腕をがくがくと揺さぶられた。ふたなり薬は残りすくない。長時間使うのなら、一度工房に戻る必要があった。

 すでにイドリーブ市から出て4か月以上がたっている。そろそろほとぼりが冷めているだろう。


「約束しましたからね! 忘れないでちょうだい。絶対よ」

「考えておきます。忘れてしまったらすみません」

「もう! 新しいご主人様はいじわるね」


 怒りながらも腕から離れないのは、魔力の放射が心地よいから。テラノヴァが歩きはじめてもくっついてくる姿は、リードに似ていると思った。


 食事を終えたあとは書庫にこもって、一日中本を読んですごす。もともとの性格が引きこもりなので、内なる世界に閉じこもれる読書は好きだった。そのうえ興味深いタイトルの本がたくさんある。


(幸せ……)


 テラノヴァは夢中で読んだ。

 新しい発見があると書きとめる。そうして新しい知識と魔道具のアイデアを増やしてゆく。

 書庫に納められていた、魔導士ゼーフントが遺した資料もおもしろかった。


 死霊術に属する肉のつぎはぎに関する書物、人体や魔物、動物の解剖図はカラーイラストつきで、さらに苦痛の表情や、デスマスクまで載っていた。

 ほかの実験を記した書物には、人体のどの部分に魔導針を埋めこむと、どのような作用が得られるか、失敗した場合はどうなるか。

 

 精霊を封じるまえの人体の耐寒、耐暑の実験。おとなの舌を子供の口に移植した場合の言葉のちがい、眼球取りかえ実験──。


 かなりの数が失敗を確認するために行われ、死屍累々の様相をかいまみると、どれだけの犠牲があったのか──死体だけではなく、生きた生物も消費していた──知識の探究における倫理観の問題について、思いをめぐらせた。


(まあいいか……)


 淡々とつづられた実験結果に圧倒され、倫理観は横にどけた。魔導士ゼーフントの人間性と、実験結果は別だからだ。

 とくに興味をひかれた結果があった。


 水蛇の胴体を途中から切断して、ひとつの胴体に3つのあたまをつける。それに精霊を入れて制御させ、水質を3倍浄化させる。

 これは成功して、養殖プールに多頭水蛇がいるらしい。


 16日ぶりにそとに出る気になったテラノヴァは、管理者のココティエに見物を頼むと、すぐに案内してくれた。


 屋敷の裏庭には100m×100mのプールが2つある。片方の深さは50cm、もう片方は2mあった。

 浅いほうには低泥がしかれ、エビが養殖されている。


「このエビたちは何を食べているのですか?」

「こっちにきて」


 庭の西がわに小さな森があった。


「ミールシードの葉っぱが餌ね。この落葉をあつめてプールにいれれば、エビたちが食べて成長するわ。オコニ、こっちにいらっしゃい」


 外作業のメイドがやってきた。


「新しいご主人様に餌やりをみせてあげて」

「……」


 水色の目をしたメイドは、こくりとうなずいた。身長の半分ほどもある籠を背負い、そこに赤緑色の葉っぱをあつめる。

 ほどなくしていっぱいになると、養殖槽に持っていった。


 プールの中央に桟橋がのびている。メイドはそこにゆくと、籠を抱えて一回転した。

 ぶちまけられた葉っぱが水面に雪崩落ちてゆく。

 しばらくは静かに浮かんでいた。やがて水面にぽつぽつと泡が浮かび、葉っぱが一枚一枚、水底に引き込まれていった。


「エビは水底にひきずりこんでから食べるの。毎日ミールシードの葉を与えるだけで、エビはかってに育つから簡単よね──ある程度育ったら捕まえて、オコニ、エビをひとすくいして、となりのいけすにいれなさい」


 メイドが網でひとすくい、葉っぱに噛みついた真っ赤なエビが、20匹ほど入っていた。びちびちとはねて、水滴が周囲にとび散る。


 オコニが網を、となりのいけすのうえでひっくり返す。エビがじゃばじゃばと落ちていった。

 大きな魚影がよってきて、水面が賑やかに泡だった。エビが魚の口に吸いこまれていった。

 賑やかな饗宴である。砂漠の海を思い出した。


「油雷魚はエビを食べて育つの。ここにいる油雷魚は、もともとオアシスに住んでいる魚だったんだけど、古いご主人様が捕まえてきて増やしたの」

「もしかして、ここから南西にあるオアシスですか? ワーレディバグが住んでいました」

「さあ? 場所はわからないわ。私はついていかなかったもの」

「そうですか。油雷魚ははじめて食べましたが、とても脂がのっていて、おいしかったです」

「うふふ。そうでしょ。ほめられると恥ずかしいわ」


 ココティエはにやにや笑いながら、ほほに両手をあてて首を振った。わざとらしい態度に、まったくそう思っていないのが伝わってきた。


「ほんとうにおいしかったですけど……まあいいです。多頭の水蛇はこのおおきな養殖槽のなかですか?」

「ええ。呼ぶ?」

「お願いします」


 ココティエはふちでしゃがんだ。


「普段は底に沈んでいるからほとんど出てこないの。こうやって水面を叩いて、魔力を伝えてあげると……」


 大きな波紋がプールの水面に起こった。騒いでいた魚たちが静かになる。波紋が近づいてくる。

 

 音もなく、水面から、つぶらな瞳をした蛇がにゅっと出た。2つ、3つ、魔導士が移植したあたまが順番に浮かびあがる。

 頭はそれぞれテラノヴァと、ココティエと、オコニをとらえている。アクアマリンのように澄んだ目だった。


「水の魔力を感じます。触れても平気ですか?」

「うん。新しいご主人様は魔力にあふれているから、向こうから来るかも」


 そのとおりだった。水蛇は鎌首をもたげたまま、水中をすべるように移動してきた。

 テラノヴァのまえで首をのばし、差しだした手に巻きついてきた。なかなかの圧迫感だった。


 鱗に触れてみると、絹のようになめらかな表面だった。体温は感じない。水の魔力が流れていた。

 コラリアの魔力は深い海の静けさを感じさせたが、この水蛇は夜の静かな湖を思わせる。


「浄化のお仕事、ごくろうさまです」


 しばらくそのままでいると、ココティエが水面を叩いて戻らせた。蛇は静かに消えていった。


「あれがいるからプールを掃除しなくても、水を足すだけでいいの。古いご主人様は便利な生き物を作ってくれたわ」


 テラノヴァの濡れた指を、メイドが拭いている。オコニからは、水滴が落ちるような、ちいさい魔力を感じた。


「参考になりました。ありがとうございました」

「どういたしまして、新しいご主人様」


 自給自足のシステムを作りあげた、魔導士ゼーフントの管理能力に舌をまいた。

 あとをうけついだからには、何か有効に使いたい。

 オアシスにいるラーたちに、魚をおくれば喜んでくれるだろうか。


 #


 テラノヴァは色々計画しつつ、怠惰にすごした。本を読み、食事をし、湯船でふやけ、少女たちと話をする。

 どうしても試したい知識をえると、本を参考に術式を組みたて、スクロールに焼きつけた。とくに有効な発見があった。

 死霊術と人間の陰陽について書かれた本を読には、呪文と魔力で男性器をはやす効果を、スクロールに記す方法があった。


 陰核を変容させ、疑似的な精巣をつくる術式は、ふたなりポーションより効果がちいさい。

 しかも作成期間がポーションよりも長くかかる。


 テラノヴァは物は試しと、白紙のスクロールに呪文を書きつけた。

 触媒がいらないかわりに、膨大な魔力と長文が必要になった。解呪や変装は1日から2日で完成するが、肉体の変容には10日間もかかった。


 そして8日目、徹夜つづきでテンションがおかしくなったテラノヴァは、2日早く完成したスクロールをさっそく使った。12メートルちかくになった巻物が燃えつき、どっさりのチリとなった。

 腰にむずがゆいじれったさが走る。ローブをめくってみると、下着のしたで陰核が変容し、膨らんでゆく様子が見えた。


「せ、成功……」


 疲れ切ったテラノヴァは、書庫のテーブルに倒れこんだ。

 つい夢中になって3日間徹夜してしまったが、気力がきれると、どっと疲れがやってきた。テーブルで横になっているだけで眠りそうになる。

 しかし腰からわきあがってくる、炎のような欲望が、行動しろとうながしてくる。ふたなりにはこのような副作用があったと思い出していた。


 誰かを壊したいという破壊衝動に似ている。組みふせて、性交したい。無責任膣内射精がしたい。獣性がふつふつとわきあがる。

 腰から脳に直結回路が作りあげられ、とめどなく信号が送られてくる。


 シトロンかココティエが通りかかったら、いやメイドでさえ襲ってしまいそうだった。

 テーブルに何度かあたまをぶつけて、よこしまな考えをおいはらう。

 ひとまず風呂にはいって気分を落ち着けようと書庫を出た。


「……」


 運悪く、廊下ではメイドが掃除をしていた。茶色い目をしたメイド、イコニだ。

 その幼いからだをみたとき、腰にズキリと快感の予兆がはしった。幼いが……使える。

 自然の摂理に反する鬼畜生おにちくしょうな衝動にとらわれたテラノヴァは、背伸びして窓をふいているイコニの背後をとった。

 肩をつかんで振り向かせる。


「……?」


 不思議そうに見上げたイコニの肩をだいてかがみこみ、強引に唇を奪った。欲望のままなめまわす。

 ぱさりと布巾が落ちた。


 ちゅっちゅっちゅっれっろぉれろれろれろ


 舌を突き出してなめまわしていると、唾液にのった魔力にあてられ、イコニはとろんとした目になった。

 下着からはみ出したふたなりペニスがローブを持ち上げ、そそり立っている。

 メイドの手をにぎって股間に誘導する。


「わかりますか?」


 イコニがおどろき、口をあけたまま、こくりとうなずく。

 しばらく胞子が続いた。


「いったんやめてください。つづきはお風呂でしましょう。あなたも漏らしてしまっているので、きれいにしなければいけません」

「うん」

「……言葉を話せないのではなかったですか?」

「うん……うえに、あがった」

「うえに?」

「うん」

「ランキングがあるのですか? では行きましょう」


 風呂場に向かおうとしたテラノヴァだったが、一歩踏み出したとき、メイドは腰砕けになって座りこんだ。

 この状況はなんども経験した。強い快楽が残っていてうごけないのだ。


(月の人たちも喜ばせてあげましょう)


 配信球を浮かせ、メイドを抱っこすると、階段をおりた。

 途中でメイドをふたり見つけた。イコニひとりでは、欲望を受けとめきれないかもしれない。


(3人いっしょに消費・・すれば、もっと喜ばれるかも)


 倫理観を逸脱した思いつきに興奮して、メイドたちをつれて風呂にむかった。

 すきに触らせているあいだに、配信球を起動した。


「今日はお風呂場からの配信です。スクロールで作ったふたなりペニスの実験を──いえ、ほんとうは使ったら興奮したので、それを静めるためにメイドたちとえっちします」


『通知が来たから見に来たものの……』

『視聴者は児ポと実際無関係。よくないと思いますね』

『相手いくつだよ』


「ちいさく見えますが、この子たちの肉体が動いている時間は、20年をこえています」


『なんだよ、びっくりさせやがって』

『外見で差別するのはよくないよな。皆も価値観をアップデートしていこう』

『そういうちっこい種族なの?』


「種族というよりアンデッドに近いです。精霊が死体をうごかしています」


『うえ……特殊性癖すぎるだろ』

『ネクロハーレムはじまったな』

『メイドが群がってる』


「ここだと汚れてしまいます。あなたたち、服をぬいでお風呂場に進んでください」


 ペニスにまとわりついていたメイドを順番にもちあげて、風呂にむかわせる。 

 湯をためているあいだ、3人に奉仕をうける。


「満足感のある光景です。なめるのはもういいですから、すこし離れてください」

「……」


『たまんねえ』


「……あなたたちは、どこまで人間とおなじなのでしょうか? 確認させてください」


 死体をつなぎ合わせて再活性化させているなら、膣の機能もあるはずだ。

 メイドたちをさがらせ、一番ほぐれているであろうイコニを、あおむけにする。


 からだのサイズは、かつて犯したリードよりもちいさい。手術の痕が胸から腹にかけて走っている。痕にそって指をはわせてみると、メイドはくすぐったそうに笑って、身をよじった。


 抵抗はしない。


 風呂に入ってから3時間が経過した。

 メイドたちは各々4発ずつ膣に精液をそそぎこまれた。まだ口がのこっていたので、身勝手なフェラをしようとしたとき、スクロールの効果がきれた。

 ペニスが消滅し、同時に欲望の炎もおさまる。


 風呂場は惨憺たるありさまだった。

 メイドたちは汚れをながす風呂場のなかで、全身を汚されていた。


 テラノヴァはひとり、ちいさく鼻歌を歌いながら、メイドを綺麗にしてゆく。

 情欲は燃やし尽くされ、すっきりとした爽快感があった。


「今日は、からだのサイズがちがっても、何とかなると学べました。いい経験でした」


『うんうん』

『ダメだろ。流れている血の量をみろ。人間相手におなじことすんな』

『ロリでも抜けた自分にびっくりした。よかった』


 テラノヴァが月の人とたのしく雑談しているとき、すがたの見えなくなったメイドを探していたシトロンが、脱衣所で服を見つけていた。

 彼女を一番最初にするという約束を、テラノヴァはすっかり忘れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る