第2話 お人形さん
常日頃、無感動で無表情。何しろ怪我をしていても、気付かないのだ。端的に言ってしまえば、セルフネグレクトを厭わない。
昔、すぐ上の姉から言われた。あなたはとても美しい。だから、人から性的な目で見られるでしょうねと。
坂木君は、違った。
まるで物を見るように僕を見る。新鮮だった。
お
そして、
お
坂木君は、呉碧によって命を吹き込まれたのだ。
枯渇していた色気が俄かに匂い立つ。色とは、生そのものなのだ。それを初めて知った。
実際、坂木君は顔の造作はごく普通であるし、エリちゃんは生まれながらの栗毛と珍しいグリーンの瞳である。本来、与えるはずのイメージは真逆である。
ところが、坂木君の表情筋はよく動くし、エリちゃんのそれはほとんど動かない。
「学校の廊下で、暗い顔して歩いていたら先生に『大丈夫?』って聞かれるし、ニコニコしてたらしてたで『何か楽しいことでもあったのか』って聞かれますよね」
坂木君は、同意していた。
要するに、二人とも「私に話しかけるな」オーラの使い手なのである。
きっと色香は、上手にしまいこんでいるのだろう。
エリちゃんは、へにゃへにゃしている。
あまり仲の良くない人に与える清楚なお嬢さまというイメージからかけ離れているのだ。
エリちゃんの人格というのは、どこかインスタントのように思える。
心の奥底に何かを隠している。それを必死になって、土をかけて外に出さないようにしている。表出するのは、嘘っぱちの殻だ。
結局のところ、彼女の師匠、
「
ある日、坂木君に尋ねた。
「ん~?」
考える素振りの坂木君。
「まあさ。いくら自分のこと見て欲しいと思ってもさ。さすがに、毎回、親の仇みたいな女の相手させるのは気の毒だと考えたんじゃないの」
「それもそうだね」
相手しなきゃいいのにと思わなくもない。まあ、難しいのだろう。
「だから、美古都にとって、エリちゃんの相手するのはバカンスなんだよ」
そこで、ふと思い至る。
「と言うことはさ。
「そうなるね」
しばし、無言。
「となると、次に取る手はエリちゃんの篭絡か」
「ろうらく…」
生々しい言葉に、唾を飲む。エリちゃん、気を付けて! ちびっこと遊んでる場合じゃないよ。
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