8 光と闇の狭間で

第51話 戦史

 かつてこの国には、反国家勢力が存在していた。裏社会を牛耳り、国家を脅かす組織。

 彼らは魔族側に所属し、王族の命を狙い、魔王復活の際は魔獣を統率して襲いかかるなど、国にとって最もわかりやすい「敵」であった。


 一時は国家騎士団に匹敵するほど勢力を拡大したが、時代とともに次第に衰退していき。

 そしておおよそ五百年前、前回の魔王復活から間もなく、掃討に赴いた騎士団の手によって、組織は解体された。



 内乱が収まったかと思えば、次に現れたのは森の民。

 四民の中で唯一、国に服従していなかった種族だ。

 通常とは異なる特殊な魔術を扱う彼らは、国を支配せんと立ち上がった。


 再び内乱が勃発する。

 そしてそれが、国史上初の、魔獣の関わらない人類戦争を引き起こした。 

 なにせ、相手は不老の種族だ、一筋縄ではいかなかった。多くの犠牲者が出た。騎士団のみならず山の民砂漠の民、海の民までもが出動した。


 結果的に、国が勝利した。

 優秀な騎士複数名が森奥に特攻し、族長の首を取り、戦争は幕を閉じた。

 王は森の民に魔術の使用を禁じ、国に従属させた。


 それが、百年ほど前のことだ。



 この年、およそ百年ぶりに平原に戦士たちが集合し、金属のぶつかる音、砲撃音が、悲鳴のように響き渡った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る