第33話 行き着く先は
ヨアが雑務の合間を縫って時間を見つけてきたため、急遽例の教会まで出向くことになった。
最後に会ったのは、ルートの話を報告する時だった。そこまで長い間は空いていないはずだが、見ない間に随分
レイとしてはせっかく暇を見つけたのだから休んで欲しかったが、本人に休んでも休まらないと言われてしまったのでそれ以上は何も言わないでおいた。
「レイは、ソルアラは王国としてあるべきだと思う?」
道中、ヨアがそう尋ねた。
先日のルートの言葉を思い出す。やはり行き着くのはそこなのか。
「あるべき以前に、永遠であることはできないと思います。」
どちらかといえば、あるべきだと思うが。それは王家が繰り返し蘇る魔王を討つのに最適な形として、だ。
国が閉じられていた頃ならまだしも、外部からの影響を受けるようになって、繰り返されてきた歴史が変化した。魔族戦争で足踏みをしているだけの時代は終わった。
「じゃあ質問を変えよう。この国に、愛国心はどれだけあると思う?」
愛国心。自分の国家や共同体に対して抱く忠誠心や愛着を抱く心。
「少なくとも一般の民にはあるのでは?」
例えばこの国は今まで、五百年毎に復活する魔王と戦ってきた。それは、愛国心から王政を守ろうとする動きではないのか。
もしヨアの話が“ソルアラ王国”と“他”を比較してのことなら、山の民が少し前までマグナ国と紛争していたのも愛国心故と言えそうなものだ。
ヨアはしばし考えた後、ポツリと呟いた。
「…風評って本当に大事なのかもしれない」
急に。とりあえず自覚してくれただけ嬉しいが。
「今の俺とウェヌムが対立したら、ウェヌムが勝つ。」
「なぜ?」
知識の差はレイには計り知れないが、相手の手の内を秘密裏に知った分こちらが有利に思えるが…
――あ。風評って。
「俺は、ただひたすら王子の職を手放して国を出ることを優先してきたから、得られたはずの名誉功績を捨ててきた。今の俺についてくる人はいない。国を動かすには民もつきものだよ」
いなくはない。レイはヨアを慕っているし、ハンクやダウンもヨアを信頼している。あまりじっくり見たわけではないが、サンズ王子もヨアによく懐いているようだった。
口を挟もうか迷ったがそこはあまり重要ではないから端折る。
「つまり、国を動かす必要ができたということですか?」
「マグナの協定会談にサンズも参加するんだと。ウェヌムの助言でね。意味がわかる?」
マグナの会談にサンズをわざわざ参加させる意味。
単なる顔合わせではないだろう。
表向きなら、政治勉強のため、というところか。
その真意は。考えたくもない。でもそれ以外ウェヌムに利のある答えがない。
「…暗殺、ですか?」
「俺もそう思って陛下に声をかけたんだけど、全く無意味だった。俺の発言一つじゃ何も変わらない。」
――ヨアが、疲れた顔して頭を抱えている。
本当に過労で倒れてしまわないか不安になってくる。でもレイは何もしてあげられない。出来るのはお使いくらいで、考えることに関しては誰も彼の右に出ない。
無力だ。地に落ちたため息が、酷く重たかった。
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