第11話 メイト
「チェックメイト。」
結果はヨアの勝ち。
まあ、そうなるだろうな。レイの方はもう何年、下手すると八年近くやっていなかったものだから、当然腕も鈍っているだろう。
とはいえ頭さえ使えればビハインドなんて関係ない。
実際、コイントスで先攻を勝ち取ってからの前半の展開の仕方は我ながら悪くなかったし、ヨアの圧勝は抑えられた。
後半になるともう結果がわかりきっていたけれど。これでもよく粘ったものだ。
だからこそ負けたのが悔しいし、なぜだろう、負けたのに奇妙な満足感を覚えている。
きっと、楽しかったのだと思う。
「――友達って、何をすれば良いんですか?」
次々と箱に帰っていく駒たちを眺めながら、ポツリと呟いた。
レイの心境の変化には向こうも驚いたのか、パチクリと瞬きをした。
その後、不意に無邪気に笑った。無垢に見えるその顔が意外で、思わず目を奪われる。
「とりあえず形だけ友達って言ってただけなんだけど。仲良くしてくれればどんな形でも構わないよ。」
「仲良く、の定義が難しいです」
「確かにね。ひとまず、騎士としての雇用は続行するから、その途中でいろんな話ができたら良いなって思ってる。」
いろんな話、か。
その中で国の裏側に触れさせられることもあるのだろうな。
実際もう既に、普通の騎士では知り得なかった事実がいくつも判明している。
ルートのことも、森の民のことも、そしてヨアのことも。
それを思えば自ずと肩が重くなる。レイには少しばかり荷が重い気がする。
しかし同時に、少しだけ――砂浜の中に混じったガラスの破片くらいほんの少しだけだったけれど、好奇心が湧いてきたことも確かだった。
そしてレイは、光に反射して光るそれに気付かぬフリが出来るほど野暮でも器用でもなかった。
何を考えているのかはさっぱりわからない。
賢いくせに変人を演じて、合理的なくせに回りくどい。
だけど、不思議と目を離せない。魔法のように相手をペースに巻き込む。
ヨア・セブンスは、思っているよりは悪くなさそうだ。
「――レイ」
駒たちが元あった箱に収まり蓋が閉められると同時に、名を呼ばれた。
「山に登ろう。」
全く予想外の展開に、レイは思わず眉を顰めてしまった。
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