弐 広き世界、美しい

第9話 騎士団の日常

 騎士たちの宿舎は、城の敷地内の端の方、訓練所の隣に併設されている。

 一部屋三、四人のルームシェア制で、部屋割りは基本階級ごとである。


 平騎士のレイの部屋は、四人部屋だ。

 推薦で入団し平に昇格したばかりの三つ年下のスパと、一般試験で入団した同い年同期のカイ。

 そして貴重な女騎士仲間、ベル――ただしこちらはまだ下働き中の従騎士で、この団の中では現在、女子がレイとベルの二人しかいないため、同じ部屋に入れられた。


 レイの朝は、白湯を飲むところから始まる。

 胃の調子は騎士の命。健康的な肉体は内側から。

 そう思って騎士団に入る前から続けている習慣。


 朝起きて顔を洗って着替えて、寝坊がちなベルを起こす。

 訓練所に行って、準備運動と、朝の素振り。相手がいればたまに軽い手合わせをする。

 いい感じに温まった身体で朝食を食べ、そこから城内の警備や雑務などの仕事に取り掛かる。


 警備はシフト制で、時間や場所は決まっている。

 レイは、朝早くから昼下がりまで続けて担当があり、昼食を食べて午後の訓練に参加、あとは使用人たちが行っている雑用の手伝いをして時間を過ごす。


 初回――ルート訪問の護衛では、ヨアが日付と時間を連絡してくれた。

 城に戻った別れ際も、また連絡する、と確かに言ったはずだ。


 加えて彼は引き篭もりと称されている。

 だから、あれから数週間連絡がなかったことに疑問はひとつも抱いていなかった。


「あれ、レイ?なんでいるの?ヨア様は出掛けてるはずだけど…」


 ――ある午後の訓練中、団長にそう声をかけられるまで。

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