第3話 「八幡神」の正体とは?

「八幡(やはた)」の由来について、公式なものから説明しましょう。


応神天皇の母である神功皇后(じんぐうこうごう)は、熊襲(くまそ)征討のために筑紫(九州)にいましたが、「新羅を攻めるべし」という神託(神様のお告げ)を受けて、三韓征伐(新羅出兵)を行います。


このとき神功皇后は、お腹に応神天皇を宿していました。新羅への往復路、対馬で祭壇に八つの幡(旗)を祀ったことが「八幡」の由来とされます。八つの幡は「八方位」に祀られたと考えられます。


なぜ八本の幡(旗)を祀ったのかについては、「八」が末広がりで縁起が良いとされるのは、漢字の形が由来となっていますので、古代にその意味はありません。


古代の「ヤ(八)」には、二つの意味があります。「ヤタカガミ(八咫鏡)」や「ヤモ(八方)」の「ヤ(八)」は、そのまま数字の8の意味です。もう一つの意味は「ヤヲヨロズ(八百万)」や「ヤヱカキ(八重垣)」の「ヤ(八)」で「たくさん」の意味です。


八つの幡が「八方位」に祀られたのは、四方の東西南北に加えて、北東、北西、南東、南西を加えた四方八方のことです。現代では「しほうはっぽう」と読みますが、古代では「よもやも」といいました。


古代の数の数え方は「ひ、ふ、み、よ、ゐ、む、な、や、こ、と」です。

ちなみに、「よも山(やま)話」といいますが、これは「よもやも」が転訛(てんか/発音が訛って変化する)して「よも山」になったようです。


八つの幡を「八方位」に祀るのは、八方の幡が中央の天皇を護っているからです。

現代でも神事の際には「五色幡(青、黄、赤、白、黒)」や「四神旗(東は青龍(せいりゅう)、西は白虎(びゃっこ)、南は朱雀(すざく)、北は玄武(げんぶ))」が使われます。


「四神旗」は四方向を神獣によって護る意味合いがありますが、「五色幡」の場合には東は青、西は白、南は赤、北は黒、中央が黄で、四方+中央で五色となります。


「八幡(やはた)」の場合も、八方の幡に中央の天皇を加えて「九」として、一桁の最大数を表すと考えられます。九月九日を「重陽の節句」というように、最大の陽数「九」は昔から重要とされてきました。


「八幡神(やはたのかみ)」を応神天皇とする説には、それなりの説得力があるように思えます。


しかし、「日本書紀」には、神代(神様の時代)に比売大神が「宇佐嶋」にご降臨されたとありますが、「八幡神」については古事記、日本書紀に記述はなく、「続日本紀」には「広幡乃八幡大神」の記述はあるものの、それが応神天皇であるとは明記されていないのです。


そればかりか、「八幡神」は御託宣(神様のお告げ)で、出自について「昔は『震旦国(中国)の霊神』だったが、今は日本国鎮守の大神なり」と自ら説明しているのです。


中国から日本に来た神「八幡神」の正体は何なのか?

ここで、「八幡神」が「神」ではなく「ゴッド(GOD)」であるという説があります。「ヤハタ」とは、「ヤハウェ」もしくは「ヤーウェ」で、ユダヤ教の神とする説です。


宇佐八幡宮(宇佐神宮)の初代宮司は大神比義(おおがのひぎ)ですが、渡来系の豊前秦氏と「つながり」があったようです。この「つながり」とは、現代風にいえば「スポンサー」といえます。


そのため、「ヤハタ」とは「ヤハウェ」を略した「ヤー」と「ハタ」を組み合わせたもので、「秦氏の神」もしくは「ヤハウェ」と秦氏の先祖を一緒に祀ったと考えることができます。


正式に「八幡神(やはたのかみ)」を応神天皇とするのは、宇佐八幡宮(宇佐神宮)のみです。東大寺要録や住吉大社神代記にも記述はありますが、宇佐八幡宮の由緒をそのまま記載したようです。


また、秦氏は百済から日本に帰化した弓月君を祖としますが、そのときの天皇が応神天皇であったので、秦氏は応神天皇と深い縁を感じていたか、先祖と同じように敬い、信仰していたのかもしれません。


「八幡神」が、実はユダヤ教の神「ヤハウェ」というのは、都市伝説的な確度の低い説のように感じますが、うまく隠された根拠のある説なのかもしれません。

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