第16話 昔はよかったなんて言わないで 6

 「文化祭とか学校では無理だから、ライブハウスでコスプレしてライブしましょう!」

 

 楽器店で楽器を物色した後、お高い買い物なので、即決せずまた後日ということになった後、交流を深めるためという宮古の提案で、某有名アメリカ発コーヒーチェーン店で、お茶を二人とすることになった。

 

 めいめい好きな飲み物をゲットし、たまたま運よく空いていたテーブル席に座り、コーヒーを口に含んだ瞬間、有村がにこやかな笑顔でそう宣った。

 

 にぱー、とか漫画だったら効果音ついてそうな朗らかな笑顔で、輝いていた。しかし、そんな魅力的な笑顔だが俺はその光に灰にされて風に舞い、消え去っていく気分になった。

 

 ええ…と、こいつまじか?

 

 「藤原くん」

 

 そんな感じで引いていたら、有村に隣に座っていた宮古が佇まいを話しかけてきた。


 その顔にも、有村と同じようににこやかな笑顔が浮かんでいて、なんというか女に免疫ないモブなら、ころっと恋に落ちそうな大変魅力的な笑顔だった。

 

 だが、しかし…。何故か嫌な予感しかしないんだが…。

 

 「初めは監視のためだったが、SNSの投稿を見て私たちは考えを改めたのだよ」

 

 「改めるって…。どんな…?」

 

 「逸材やコイツ…。我らの沼に溺れさせて同志にしようぜ、てね!」

 

 「もう俺の中でお前のカースト順位大暴落だよ!」

 

 こいつら、自分らのコスプレ沼に俺引きづりこむ気かよ! 二人とも、リア充装った非リア充以外のなんでもない。

 

 地味にルックスで、憧れてる非リア充の男子いっぱいいるのに、本性色々残念すぎるんですけど!

 

 「ぐへへへへ、拒否権はないぜ、お嬢ちゃん…。沼に足を突っ込まないと、リア充の人脈を使って学校中に藤原くんのファッションショーをご開帳させてもらう。存分にコスプレ沼に溺れるがいいぜ」

 

 「そうですよ。というか、趣味にしてる格好、コスプレみたいなもんじゃないですか。ちょっと、服の趣味の幅広げるだけですよ」

 

 「俺、多分高校生活中、ずっとあの日ハンバーガーチェーン行ったの後悔するわ…」

 

 椅子にもたれて、俺はそう言って深いため息をついた。

 

 そんな感じで、俺の非リア充だが、モブとして送れていた平穏無事な学校生活は、終わりを告げた…。

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