第9話 胸に空をつめて 8

 目が点になった。それは対面に座ったスクールカースト最上位階層の住人、有村蓮香と宮古桐子に取り出したタブレットの画面を見せられたからだ。

 

 放課後にリア中に呼び出されて、おっかなびっくり学食を訪れると、お相手のリア充(ラスボス)はもう一人のリア充(隠しボス)連れてきた。

 

 こちらは裏ボスのことを学校内の有名人なので知っていたが、向こうはモブ学生でしかない自分のことを知らなかったようで挨拶されて、握手を要求してきた。

 

 予想外の置かれた状況に完璧に頭が真っ白になりながら、裏ボスとシェイクハンズ。

 

 そのまま流れるように、二人のリア充が学食の対面の席に座り、いきなりにこやかに有村が通学カバンからタブレットを取り出し、ある画像を見せてきた。

 

 そこに写った画像に目が点になる。


 そこは様々な人が集まった広場のような室内のイベント会場ようだ。

 

 様々な人が写っている。

 

 そして、写真の中心にいるのは、読者モデルをしていることから分かるように、生まれつき神様にエコひいきされたルックスとスタイルの美人ーこの学校のスクールカーストの最上位階層の女王様、宮古桐子が写っている。

 

 ただ、ただ単に宮古が写っている写真なだけなら、俺の目は点にならなかった。

 

 その写真は、画像は変だった。

 

 それは写っている人たちが変だから。

 

 その変な人たちの中心で、カメラに満面の笑みを浮かべた宮古が写っている。

 

 その笑顔は大変魅力的で、人によったらそれだけで恋愛感情を抱きそうなくらいいい笑顔。

 

 今、目の前に本人がいるが、どちらかというと無愛想なので、なんというか変な感じがする。

 

 だが、画像が変なのはそれが理由ではない。

 

 写真が変な理由、それは…。


 「どうよ、私が作ったコスはっ! そして、それを着た桐子ちゃん、再現度高くない!?」

 

 タブレットの画面−画像を俺に見せながら、有村蓮香は鼻息荒く力説する。

 

 このコスプレのキャラはどうたら、可愛くてまじ天使どうたら。衣装を作成するのに一ヶ月以上かかった力作どうたら。

 

 うん、早い話…。


 「二人はコスプレイヤーなの…?」

 

 無愛想に、宮古が頷く。

 

 見せられた画像が変な理由−それは写っている人がマンガやアニメのキャラのような現実にはあり得ない格好。

 

 そう、画像が変な理由はコスプレしている人だらけの画像だったからだ。

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