第10話 胸に空をつめて 9
まずは、頭の中を冷静に整理しよう。俺は置かれた状況とそれに至った経緯を考える。
まず、最初に。休日にV系ファッションで街中を闊歩しているのを、スクールカースト最上位階層住人のリア充同級生、有村蓮香に見られる。
そして、次。次の日登校すると、そのリア充から放課後学食に呼び出しを受ける。
最後に。放課後学食にいると相手にするリア充が二人、読者モデルをしていることにより、この学校のリア充の女王的存在、宮古桐子が追加でポップし、何故かその二人にコスプレイヤーなことをコスプレ写真を見せられて、オタク趣味を告白された。
そして、今である。
…いや、俺なんでこの二人のオタク趣味教わったの?
有村蓮香と宮古桐子は、我が校でボッチ気味で噂話に疎いぼっちなモブな自分でも知っているような超有名なリア充だ。
その二人が、コスプレとか非リア充丸出しの趣味があったとか、全然知らない。
多分、俺のように周りに隠しているんだろう。
ジャンルは違うが、同じオタクとして隠すのもわからないこともない。
うん、だから隠してたんだよね?
なんで俺にバラすねん…?
とりあえず、何やらオタクな情熱を機関銃のように捲し立てている有村から視線を、隣に座る宮古に向ける。
ペットボトルのミルクティーを飲んでいた宮古が、無愛想に飲むのをやめて首を傾げた。
「…なんか戸惑ってるんだけど。君もコスプレイヤーだよね? 隠れの」
「…はい?」
なんかとんでもないこと言われたんですが…?
「だって、君、蓮香から聞いたけど、コスプレ姿で街中闊歩してた勇者でしょ? 同志みたいだから、友達になろうと思ったんだけど?」
違うの? そう言って、訝しげな視線を宮古が有村に向けている。
「違いませんよ? バイト先で目撃して、思わずテンション上がりすぎてほうけっちゃったんですから! 見事でしたよ、バンドもの漫画のキャラのコスプレ姿!」
テンション高めに、有村がそう捲し立てた。
もしかして。いや、もしかしなくても。
「コスプレじゃない」
「え…?」
「V系ファッションなだけで、コスプレじゃない」
「…へ?」
一瞬で、有村がさっきまでの熱意はどこえやら、呆けてしまった。
「そういや、あのバンドもののキャラがやってるの⚪︎idみたいなバンドだっけ。アニソンの」
「別にアニメのタイアップが多いってだけで、アニソンバンドじゃないんだけどね?」
V系、アニメタイアップが代表曲のバンドが多いジャンルだけど、アニソンバンドではないんですよ?
「まあ、それは置いといて。君は⚪︎idみたいな音楽が好きで、そのファッションをしていただけの、非コスプレイヤー? それでOK?」
「それであってます。 OK…」
「うん、私たちの趣味バラしたら殺すからね?」
一瞬の間も置かず、笑顔でリア充の女王様に殺害予告されました。
え、ちょっと待って…?
「勘違いで、俺、とんでもないことになってない?」
そんな感じで、勘違いで俺はスクールカースト最上位階層のリア充の秘密を知ってしまい、地味なモブだけど平和に遅れていた学校生活が、とんでもないことになってしまいました…
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