第8話 胸に空をつめて 7

昼間は昼食を食べる学生でごった返して席を選ぶ自由などないだが、放課後直後の学食は人はまばらで、席は自由放題だった。

 とりあえず、併設されている販売所の自販機で缶コーヒーを買い、窓際の席に陣取ることにした。

 先ほどまでは、気が気でなかったのだが、ある種学食についたら開き直る気になり、意を決して有村に対応しようと決めた。

 だって、俺が何を好きで、どんな感じで休日過ごそうが俺の自由なわけで。

 何も後ろ暗いわけじゃ本来はないのだから、毅然と対応しよう。

 「少し待たせたかな? お待たせ〜」

 「ヒュイっ!?」

 そんなことを考えていたのに、いきなり後ろから有村から話しかけられて、変な声を出してしまった。

 仕方ないじゃん! 正直、俺、友達少なくて学校でぼっち気味なんです!

 一部のV系の歌詞みたいにメンヘラではないが、リア充は慣れてないんです…。

 そう内心言い訳をしまくりながら、後ろを振り返る。そして、俺、藤原京は固まった。

 「こいつが例のやつ? へえ、意外なんだけど」

 「私の最初見た時意外だからびっくりしたよ。でも、本当の話!」

 そこには、クラス内の勝ち組のリア充、有村蓮香以外にもう一人、一人の女子生徒が立っていた。

 「まあ、クラスメイトになったことないからはじめましてかな? 私、宮古桐子(ミヤコキリコ)。ナイスチューミーチュー」

 そういって、にこやかに手を差し出してきたのは、バイトで読者モデルをやったことがあり、学校内スクールカーストで女王扱いされている学校一の美人で有名な同級生でした。

 脳内で、緊急地震速報みたいに緊急アラームが鳴り響く。

 先刻の毅然とした対応をしようという決意は一瞬で倒壊した。

 

 どうしてこうなった?


 そう俺、藤原京は心の中で絶叫した。

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