第7話 胸に空をつめて 6
別に悪いことしたわけじゃないのに、放課後までは死刑執行囚の気分だった。
おっかなびっくり缶コーヒーを買い終わり、教室に戻ってきたが、仲良しグループ内中から有村が質問攻めを受けており、時折視線がこちらに飛んでくるので、生きた心地がしなかった。
何やら、愛想笑いではぐらかしてくれているようなので、俺がV系オタクで、休日にカッコつけて街中で一人ファッションショーをして、着飾ったカッコで出歩いているのはクラスメイトたちにはまだバレていないようだ。
だが、スクールカースト下位のいけてないダサ男のモブ1号の俺が、スクールカースト最上位集団のトップ階層から呼び出しを受けたってことで色々な階層の住人の間で注目を浴びてしまったで、学校では目立ちたくないのに話題の中心とかしてしまい、ストレスが半端ない。
とりあえず、表向きは平然とした表情で、教室の片隅で音楽を聴きながら休み時間をやり過ごしているのだが、内心は心の大海は大時化状態で、理性の船が転覆寸前である。
まず、置かれている状態も問題だが、最大の問題は何故放課後に学食に呼び出しを食らったか、である。
どう考えても昨日の休日の出会いが原因だろうが、学食に呼び出して、俺をどうしたいんだ有村、ってことである。
原因は思い当たるが、俺を有村が呼び出し何を話したいか、皆目検討がつかない。
もしかして、普段のクラス内での様子は演技で、クソな本性を晒して金をたかる気だろうか?
いや、それだったら人目がある学食で話そうとしないはずである。
だから、脅迫目的ではないはずだ。
でも、いや、マジでスクールカースト最上位階層の住人が冴えないモブを装っている下位階層住人の俺に用事があるとか意味不明なんだが。
V系ファッションが、V系オタクなのが原因で、なんで呼び出し喰らうのか。
意味不明である。
そんな感じで悶々としながら、時は進んでいき、終礼で放課後。
知り合いに挨拶そこそこに有村がこちらには目もくれず、一目散に教室を飛び出して行った。
俺に学食で会うのに急ぐ必要があるの? Why?
そんな感じで、飛び出していく有村に唖然として立ち尽くしていると、有村の知り合いが訝しげにこちらを眺めてきていた。
いや、昼休みの会話聞いてた知り合いだから、この後俺と有村が学食で会うの知ってるから、知り合いも意味不明なんだろう。
なんでこんな冴えないモブと会うために急いで教室出るの、って…。
原因の俺も意味不明です。はい。
とりあえず、有村の知り合いの視線が苦痛なのでため息を吐いて、俺も有村と会うために教室を後にした。
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