第6話 胸に空をつめて 5
嵐の前の静けさか。そう考えて登校中から警戒していたのだが、何も心配していたような騒動は起こらず、学校生活は4限目が終わり、昼休みに突入していた。
休み時間にそれとなく視線を向けて、件の有村蓮香を観察していたが、こちらにちらりとも視線を向けず、グループの女友達と談笑していただけで、こちらには全く関心を示していないで昼休みまで来てしまった。
もしかして、見なかったことにして昨日のハンバーガー屋での出会いを無かったことにして流すことにでもしたのだろうか?
だったら、神対応なんですが。俺の中で、株が少し上がってしまいましたよ。売らずに持っておいてもっと価値が高くなってから売りましょうか?
少し気分が楽になったので、ワイヤレスヘッドフォンを耳につけ、お気に入りのV系バンドの曲をシャカ男にならないギリギリまで音を大きくして、エンジョイすることにした。
そして、朝コンビニで買った惣菜パンと菓子パン3点を通学鞄から取り出し、昼飯を済ませることにする。
そして、パンを取り出して気がついたが、たまたま駅前のコンビニで売り切れていて、ドリンクの無糖缶コーヒーを買っていないを思い出した。
学校内の自販機で買ってこよう。
そう思いながら、クラス内を縦断し、教室から出ようとする。
たまたまに進路に有村がいて、少し緊張気味になるが、友人と談笑していてこちらに全く視線を向けてこないので、安心して脇を通り過ぎようとする。
そして、ゆっくりすれ違った瞬間。その声は耳に飛び込んできた。
放課後、学食に集合ね? V系くん。
はっ? そう思い、思わずすれ違った有村にあわてて振り返る。
そうすると、なぜか満面の笑顔の有村蓮香がいて、手をひらひらと振っていた。
グループ中の女子が俺と有村に訝しげな顔を向けて、意味不明がっている。
「なんか、用事があって教室出るんじゃないの?」
「あ、いや…。あるけど、なんで…」
なんで、学食に俺呼び出されたの?
そう二の句を告げようとする。しかし、有村の仲良しグループの視線に萎縮してしまい、言葉が続かない。
「話すのは放課後話すから。あとでね〜。用事早く済ませないとお昼休み終わっちゃうよ?」
「ああ、じゃあ、りょう…か…い?」
やられた。そう思いながら、俺は足早に自販機に向かって、歩を進めた。
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