第28話 リオの銃はある意味万能!

――リオside――



「どうなったんだ今の……」

「いや、それは俺達が聞きたい。おいリオ、お前どんなイメージしたんだよ」

「ちょっと、ともっちゃんと私まで危なかったじゃない!」

「ごめんごめん。いや……取り敢えずマー君がやった魔法をイメージしてみたんだけどさ……。 マー君の魔法は無数の手がモンスターの身体から出て雁字搦めにしたじゃん? だから、雁字搦めじゃなくて身体からこう……内部から針みたいに突き出さないかなって……」

「つまり、具現化+魔法の組み合わせって所かな」

「へ~……具現化ってそんな事も出来るんだな。 俺の布もそんな風に出来たらなぁ~」

「面白いわね」

「僕もナックルとか他の武器でも魔法をイメージして殴ったら出来るかな」

「ただ、どれだけ強い魔法を入れ込むかが問題だろうね。リオの場合は初めてだったから力加減が出来てなかったようだが」



そう言うマー君は苦笑いしながら俺の頭をポンポンと叩く。



「しかしまだ回復魔法の初期段階しか使えないリオが暗黒魔法とは恐れ入る 暗黒魔法は一般では中々使えない魔法なんだよ」

「だな、俺も余り得意じゃねぇし……何より精神力の削がれ方がパネェしな」

「そうか? 俺的にはそんなに辛い感じはしなかったけど」

「リオはどんな理由があるかは解らないが、地上界の人間の使う魔法よりは地底界の人間が得意とする魔法が得意みたいだね」

「って事は、攻撃魔法もイケル訳か」

「ん―――……いや、そんな感じじゃないんだよな」



そう言うと俺は回復魔法を唱える場合と、さっきの場合を自分の中で比べた。

回復魔法を唱える場合、本当に時間が掛かったのに対し、銃を使った場合の暗黒魔法はそれ程苦労もしなかった。

その事を告げると、皆は「ほうほう」と口にしていたが、マー君は暫く考え込むとこう口にする。



「……もしかしたら、リオの場合普通に魔法を唱えるよりは具現化した銃に魔法を込めた方がやりやすいのかも知れないねぇ」

「銃に?」

「それって……回復魔法を入れ込んだ弾が飛んでくるって事?」

「そうなるね」

「「「コワッ!!!」」」

「リオ、お前絶対回復魔法唱えんなよな!! 銃を向けられるだけでも殺されるかもって怖いのに!!」

「回復の弾だと分かっていてもちょっと……怖いよね」

「てかそんな真似したら殺す、マジ殺す」

「カリン、無表情でしかも眼に殺気出しながら俺に言うなよ」

「はははは」



そう言うとマー君は倒れたレアモンに歩み寄り、モンスターの状態を確認している。



「魔法による傷口も無い……確かに暗黒魔法だな」

「暗黒魔法ってそう言うものなのか?」

「暗黒魔法は相手に傷跡を残さない魔法でもあってね。 黒魔法とはまた違う別の魔法なんだよ」

「黒魔法だと、傷が残ったりするしな」

「取り敢えずレアモン倒したし、取るモノとっちゃおうよ」

「肉食えっかな?」



そんな事を話しながら俺達は皆で手分けして皮を剥いだり牙を取ったり……肉の方はクリームが「これは食えそうだ!」と嬉しそうにとっていた。

―――ある意味グロテスクな映像な為、お見せできませんが。


でも、俺としても魔法を込めた銃を撃てると言う事が分かっただけでも嬉しいし、色々な魔法を見れば、それを頭の中でイメージして出せるかもしれない。

マー君が言うには 魔法はイメージも大事だからね】と言っていたし、頑張って頭の中でイメージを膨らませようと思っていた。

でもその時―――。



「あ――……皆、ちょっと聞きなさい」

「?」



ある程度素材を確保した俺達に、マー君が困った様子で俺達に話しかけてきた。



「君たちの戦い方を見ていたんだが……まぁトモカサとクリームは野外での戦闘慣れしているだけあって動きは良いんだが、もう少し改善が必要だね。それよりも問題はリオとカリンだ」

「……戦闘慣れしてないって言いたいんでしょ」

「まぁ、早い話がそうだね。それとこれは具現化出来る君たちに言える事だが、武器の強化をもう少し考えた方が良い」

「武器の強化?」

「そう。折角具現化の力が使えるのに勿体ないぞ? 確かに具現化には何か力を削ぎ落として使っているのは分かるんだが、同じ削ぐなら強い武器を考えた方が良くないかい? カリンとリオは今回の戦闘で思い知っただろう?」



そうマー君に言われると、俺とカリンは顔を見合わせた後小さく頷いた。

俺は銃を発砲しても殆どが硬い体に弾かれてたし、カリンだって致命傷を与えるだけのダメージを与えられなかった………。



「より強い武器や弾のイメージが必要だね。まぁコレは街や武器屋で見ていくしかないのもあるんだが……」

「そうだね……確かに私は今までこの武器だけで過ごしてきたから……」

「俺もだ。モンスターと戦うとか余り考えずに過ごしてきたし……」

「うんうん、これから先はもっと強い敵とも戦う事になるだろうし、天上界の者はかなり硬い装備をしてたりするからね……カリンの場合は、その具現化の剣が折れるかも知れない」

「…………」

「具現化も魔法もそうだけど、強い気持ちと強いイメージが大事なんだよ。お前達の場合は両方を鍛えて行かないとダメだな」

「家政夫が偉そうに」

「その家政夫に実質負けてるんだぜ?」

「…………」



そう言われると、確かにクリームもトモカサも強いと思う。

さっきのレアモンに対してもトモカサは攻撃をちゃんと防御してたし、敵の動きをしっかりと把握してたのは分かる。

俺もカリンも、生き残る為にはもっと修行が必要だと思った。



「カリン」

「?」

「俺も今から頑張るからさ……戦闘慣れしてない者同士頑張って行こうぜ」

「………そうね、リオと一緒に頑張る」

「うんうん、一人じゃないって事は良い事だ」



そう言うとマー君は俺とカリンの頭を優しい笑顔で撫でてくれた。

―――ただ、レアモンの血が付いた手で撫でられるのは少し困るが………。

その後、俺達は一端テントのある場所まで戻り、集めた素材を広げるとクリームが鞄からそろばんを取り出しカチカチと計算していく。

「何故計算機じゃないんだ?」と問い掛けると、クリームは「これが一番俺に合うんだよ」と言って真剣に計算していた。



「う――ん……結構良い所まで行ったんだけど、まだ大きなテントを買うまでには届かないかなぁ」

「暫くお金稼ぎに集中しないとだね」

「でもそろそろ街か村に行って必要なモノを買い揃えたいとこなんだよな。 ああ、ちゃんとその分差し引いてのテント代だから」

「流石主夫、財布の紐と家計管理はシッカリしたものだね」

「取り敢えず、ゲットした素材を飯時間前まで魔法で綺麗にすっから。お前等適当にお金稼ぎ頼むぜ」

「分かった、また素材溜まったら持ってくるよ。それとリオ」

「ん?」

「僕卵が食べたいんだけど、鳥系のモンスターガンガン倒せる?」

「ん、やってみる」

「それなら私とリオでやってみるわ」

「お願いね! ああ、でも気を付けてね。鳥系のモンスターってリンクしやすいから」

「「リンク?」」

「戦ってると、一羽の筈が近くに居る鳥系のモンスターが反応してエンドレスに戦わないといけなくなるし、リンクするモンスターは結構種類豊富だから気を付けてね」

「だとすると眠らせて行くしかなさそうね」

「カリン出来るのか?」

「私も出来るけど、リオもヤレ」



そうバラの咲くような笑顔で俺に命令したカリンに、俺は顔が引き攣った……。

その後はトモカサとマー君は二人でお金稼ぎに向かい、俺もカリンと一緒に鳥系モンスターを中心に狩りはじめたけれど―――するわするわリンクの嵐。



「なぁカリン」

「何?」

「今卵幾つ目?」

「そうね、ざっと見ても53個かしら」

「………俺、帰ったらクリームにホットケーキ作って貰うんだ」

「そんなフラグ立てなくていいから戦って」

「はい」



そんな事を言いつつ戦っていると、遠くでトモカサとマー君が先程沸いたレアモンがまた沸いたらしく戦っているのが見える。



「なぁカリン」

「次は何?」

「俺達の所にさっきのレアモン沸いたらどうする?」

「リオを囮に全力で逃げるに決まってるじゃない」

「いや、そこは二人で一気に逃げようぜ」

「良いから戦って」

「はい」



そんな事を言いつつ戦っていると、いつの間にか日暮れ時。

鞄いっぱいに卵を入れるとテントへと戻り、クリームにお願いしてホットケーキを焼いて貰った。

食後のデザート……甘い物が身体に染み渡るのが凄く分かる。



「リオ達の所凄い数の鳥がリンクしてたけど、良く精神力持ったね」

「まぁ、俺達でもそう苦労することなく倒せる敵だったしな」

「結局最後はイライラしちゃって攻撃魔法で一掃しちゃったけど」

「でもいい感じに焼き鳥持って帰ってくれたからな~」

「ホコホコで美味しかったよね~」

「取り敢えず、トモカサとマー君がレアモンをまた倒してくれたおかげで結構お金溜まったから、そろそろ次の村にでも出発するかね」



そう言うとクリームは俺達の前に地図を出し、近くに村か町は無いかと探している。

テント暮らしにも随分慣れてきたが、一番慣れないのは村や町で寝泊まりする事だ……。

まだ一度しか村に滞在した事はないけれど、どうしても生まれ育った街の印象が強くて苦手だ。



「ん―――……歩いて一週間くらいの所に一応街があるな」

「どんな街だろうね」

「どの名前の街?」

「ヘンドリムだって」



そう言うとカリンは地図を見ながらヘンドリムと呼ばれる街の近くを見て、眉を寄せる。



「あんまりいい噂は聞かない地域よ。闇市場も多いって聞いたことがある」

「闇市場か」

「それと旅人に扮した盗賊も多いみたい。ヘンドリムは貿易で発展した街だけど、治安の悪さは中々有名ね」

「う――ん……スリとか多そうだねぇ。私はそう言う所は嫌いだなぁ」

「一度お父様の元にヘンドリムを束ねる男が来たことあるけど、お世辞にも良い人とは言えなかった」

「気を付けた方が良いって事か。 まぁ取り敢えず行かない事には大きなテントは買えないし、食材やら何やら買い足さないとだからなぁ」

「まぁ良いじゃない、刺激があるかも!」



そう言ってにこやかな笑顔を見せるトモカサに俺とクリームは肩を落として溜息を吐いた。

トモカサのこの楽観的な部分は……ムードメーカーとしては最適なんだが、治安が悪い所がどれだけ危ないかを知っているのかと頭を抱えたくなる。



「なぁに、心配はいらないさ。君たちの保護者は私と言う事にしよう。明日から出発でいいのかな?」

「ああ、そうだな」

「では、色々精神力も使ってるから疲れも出てるだろう。 水浴びして寝ようじゃないか」

「賛成―――!!」

「ともっちゃん一緒に水浴びしよう」

「ともっちゃん、俺が背中流そうか!」



そうクリームがノリで言ったんだろうが、カリンからハリセンで顔面を殴られ転倒していた。

ある意味カリンが仲間になってから面白い風景が見れる毎日で楽しい。



「んじゃ、さくっと水浴びして寝ようぜ」

「明日が楽しみだな~」

「マー君悪いな、暫くの間俺達の保護者って事で色々苦労するだろうけどさ」

「いやいや、とても楽しいよ」



そう言って笑うマー君の後ろを皆で歩き、全員で水浴びしてその日は早々に眠りについたとある日の出来事―――。



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【★完結★】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

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モグリでバグ持ちお人よし人形師は、古代人形の陰に隠れる

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