第25話 カリンの過去と、今と、今後と――。

――カリンside――



何時もなら自分のテントに戻るけれど、何となく今日は一人の夜が嫌でともっちゃんのテントに入った。

無論許可なんて貰ってないけど、ともっちゃんなら直ぐにOKしてくれると思ったし、案の定ともっちゃんは気にする風でも無く、テントに明かりを灯して 「どうしたの?」 と聞いてくる。

―――何とも言えないこの親しみやすさが、私にはとても心地よかった。



「ん……ちょっと一人でいるのがイヤでさ……ごめんね?」

「気にしなくていいよ~」



そう言って笑顔を向けて私の頭を撫でてくれるこの感じが、随分と昔の様に感じられる。

そうだ……お父様もお母様も……私にこんな事をしてくれなかった。



「どうしたのカリン?」

「ん?」

「今凄く悲しそうな顔をしたけど? 僕で良ければ話を聞くよ」



そう言って私の前で胡坐をかいたともっちゃんに、私は甘える様に隣に座りと彼の腕に抱き着いた。



「あの……さ」

「うん」

「…………あのさ」



そう言うと、私は胸の内に閉じ込めていた言葉や想いを彼に話し始めた―――。





****

ラルアガース王国の歴史は古く、千二百年前の英雄 「ナサ=ラルアガース」 王は初代ラルアガース王国の王だったと聞く。

ナサ=ラルアガース王の人柄等は伝わっていないけれど、代々王の血筋は英雄の血を汚さぬよう、そして地上界の平和の象徴として奢り昂る事なく、そして民の為に生きるのが伝統だった。


代々の王は剣術に優れ、魔法にも優れ……そして私はそんな王の息子として産まれた。

幼少の頃から剣術に励み、魔法を幾つも習得し……毎日が地獄の様な日々だった。

お父様に褒められる事も無ければ、お母様に甘える事も許されない……そんな生活。

私の世話係も皆厳しく、甘える事なんて許されなかった……。

毎日勉強して、毎日修行して、毎日魔法の練習を……寝る時間以外、全てを注ぎ込んで頑張った。

けれど―――。



『何だその戦い方は!! そんな事では次期王にはなれん!!』

『その様な魔法で……ナサ=ラルアガース王を侮辱するにも程がある!!』



そう………罵られる日々。

期待の大きい余り、城の者にも民にもこの事は広まり、私はクスクスと陰で笑われるばかりだった……。

貴族の者達も、私を讃える陰で嘲笑った。

信頼できる友達も……一人も居なかった。


―――正直、気が狂いそうだった。

私の唯一の心の支えは……王の血筋で無ければ入れない封印された部屋だけだった。

そこに飾られているのは―――……初代の王、ナサ=ラルアガースの持ち物と絵師に頼み描かせた六人の英雄の姿。

私にもいつか、こんな仲間が出来たら……こんな友達が出来たらと夢をみた。

特に私は中央に描かれた男性の優しい微笑みが、私を救ってくれているように思えた。


―――赤い長い髪に赤い瞳……ともっちゃんと同じ雰囲気の人だった。

名前すら残ってないけれど、ただその赤い髪の人が私を守ってくれる気がした。

国が襲われる時も、私は何時も通り修行に励み勉学に励み、そして王の資格ある者しか入れないその部屋に居た。


最初に感じた異変は……城が揺れる感覚だった。

元々その部屋は伝説の英雄、ナサ=ラルアガースが施しただけあって強力な魔法で作られていて、振動は然程伝わらなかったけれど。

そして大きな悲鳴や雄叫びが聞こえ、扉の中に入ってきたのは血だらけのお父様。

お父様は無言で私の手を握ると、隣の部屋にある王の資格ある者と妻だけが入れる転移魔方陣がある場所に連れて行かされた。

何を問いただしてもお父様は答えなかった。

乱暴に魔方陣の中に突き飛ばされると、お父様はこう私に言い放った。



『お前は役にはたたんが、ラルアガース王の血筋を絶やすわけにはいかない』



そう言って………魔法を発動させると僕は外の世界へと放たれた。

暫く気を失っていたけれど、一体今自分がどこにいるかも分からなかったけれど、ただ……何かに呼ばれてる気がして只管走った。


―――自由だ!!

―――私は自由になったんだ!!

―――城になんて戻るものか、誰も私を必要となんてしていない!


そう思って走ったけれど……天上界の者達が現れて攻撃を受けた。

回復魔法を必死に自分にかけながら只管走った時、強烈な魔法が前から飛んできて天上界の者達は吹き飛ばされた。

今思えばあの魔法はマー君が放ったのは分かる……とても強い魔法だった。

でも、精神力も尽きかけた私は村の入り口に辿り着いた所で意識を失ってしまった。

そして目を覚ました時に私の目に最初に飛び込んできたのは――赤い髪と赤い瞳の………ともっちゃんだった。




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