第19話 トモカサの成長に心から喜ぶ。
――???side――
その頃、村から大分離れた場所では沢山の死体が倒れ、私だけが両手鎌を手に佇んでいた。
いや……一人だけを生かして。
「やめろ!! くっ来るな!!」
そう喚く者の背中には本来なら白いであろう翼が生えている。
まぁ今は返り血や自分の血で赤く染まっているがそんな事私には興味のない事だった。
「大丈夫大丈夫、話をしようじゃないか」
「うぅ……」
そう言うと私は影を操り、殺した天使の亡骸を闇の中へと沈めていく……。
「ラルアガース王国を襲ったのにはビックリしたよ。しかも執拗に手負いの王子を狙うとは…全く畏れ入る。それで……誰の命令かな?」
「ぁ……う……っ」
そう言うと私は震える彼の肩に手を乗せた。
「……左目の……傷……っ」
「うーん、その様子だと地上界では左目を隠した方が動きやすそうだな」
そうにこやかに微笑みつつ震える天使を見つめる私に、今にも気を失いそうになる彼に、肩に置いた手から電気を発した。
「ぐぁああ!!」
「気絶して貰っては困るのだよ。ああ、伝達の者も殺しておいたから……今ここで生き残ってるのはお前だけだ」
「たっ! 助けてくれ!! 頼む!!!」
「ん―――……それは無理かな」
「お願いだ!!!」
「だって、不公平じゃないか? ラルアガースでは沢山の人々を殺しておいて、自分だけは助かりたいなんて………都合が良すぎるだろう?」
そう言うと、触れている肩に徐々に強い電気を送り始めた。
「誰だい? 命令したのは……」
「私は知らない!! ただ上の命令に従っただけで……俺はこんな事したくなかったんだ!」
「おやおや? その割には君たちはあの王子を血眼で探して、下手な鉄砲数うちゃ当たるって感じで森に魔法を放っていたじゃないか」
「アレはっ!」
「私はそう言うのは嫌いだなぁ……関心しないなぁ」
「うぁぁぁああああ!!!」
「さぁ、もう時間が無い。 率直に聞こう。命令したのは――――……ロエルムかな?」
そう微笑みながら問い掛けると、男は口から泡を噴いて鼻血を出しながら直ぐに死んでしまった。
「………ふむ、ちょっと強すぎたかな?」
そう言うと私は立ち上がり、自在に操れる影でたった今死んだ天使をも闇に沈めた。
だが、あの王子を見つけ助けた時……思わぬ収穫もあった。
赤い髪に赤い瞳……あどけない顔………あの顔は妻にそっくりだ。
―――そうだな、もう歳も十四だ。
だが、全然その年齢相応には見えない。
成長が普通の子と比べても遅いだろう。
「うーん……ちゃんとご飯を食べているのかな? 好き嫌いが多かったら許さないぞ?」
そんな事を呟きながら焼け焦げた場所から離れ、遠くに見える小さな村を見つめる。
でもやはり気になってしまい、手をクルリと動かすとボンヤリと光が現れる。
その中から徐々に映し出されたのは―――トモカサ。
こうして生き別れた息子の顔を見れるのも、自分が地上界に居るからだ。
地底界では、どう頑張ってみても息子の姿を見る事が出来ずもどかしい日々を過ごした。
心配げな表情で先程助けたラルアガース王の一人息子である【カリン】を見つめている。
映像を少し動かすと――映し出されたのは精霊族の少年と………褐色の肌をした少年。
だが、褐色の肌の少年からは自分と同じ空気を感じるにも関わらず、不安定なナニカを感じ取れた。
「ふむ……どうやらこの少年二人と旅をしているのか」
十数年振りに見る息子の姿が嬉しくてついつい笑みが零れてしまうが、まさか精霊族と地底界の者と思えし少年達と一緒に旅をしているのには驚いた。
「本当に……フィーナにそっくりだ」
今は父親である王に幽閉され会う事も適わない妻。
そして妻の面影をそのままに地上界で生きていた息子。
「うん、だが眉の太さは私似だな」
そう言って一人笑うと、自分の影を大きく浮き上がらせ闇の中へと消えて行った。
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