第18話 初めて見る大人の地底族と、美しい女の子と。
――トモカサside――
その頃、僕は宿の外へと向かい……何所かに向かって歩いていた。
最初は夢でも見ているのかな……と思っていた。
ただ、何かが呼んでる気がしたんだ。
――この感じは何だろう?
――何故か懐かしい感じがする。
フラフラと村を彷徨い、村の入り口付近に着くと……遠くに白いマントで身を隠した男の人が見えた。
「……あ……」
小さく声を上げると、男の人は僕に気づき振り返る。
込み上げてくる懐かしさ。
理由は分からない、けどその男の人が僕にはとても懐かしく感じられた。
「……トモカサ?」
そう問い掛けられ、僕が頷くと男性は目を見開いた瞬間―――優しく微笑んだ。
「トモカサ、こちらに来なさい」
「……うん」
言われるがままに男性の元へと向かうと、男性は地面を見つめて指を指した。
――そこには……金髪の少女が血まみれで倒れていて……僕は一気に現実へと引き戻される。
「――大丈夫!?」
慌てて抱き上げると、少女は小さなうめき声を上げた。
「応急処置だけはしておいたが……随分と精神力を使い果たしているようだ」
「だったら早く宿屋に連れて帰らないと!!」
そう慌てて僕が口にすると、男性は僕に背を向けて村の外へと歩き出す。
「貴方は」
「私の事は気にしなくていい、少々用事があってね」
「え?」
そう言うと、男性は両手から魔法をバチバチと鳴らせながら村の外へと歩いて行く。
「早く行きなさい」
「あっ! うん!!」
そう言うと僕は少女を抱き上げ宿屋へと走った。
彼が何者なのか……そしてこの少女は何故こんなにも血塗れなのか僕には分からなかったけれど、宿屋に駆け込み部屋を開けると、空いてるベッドに少女を横たわらせクリームとリオを叩き起こした。
僕が余りにも慌てていたのもあってか、二人は飛び起きたけれど、それ以上に驚いたのは連れて来た少女の姿だった。
「なっ 何だどうしたんだ!?」
「分からないよ!! 僕も何でか分からないんだけど……気づいたら村の入り口に居て……そしたら男の人が立ってて!!」
「ソイツがこの子を襲ってたのか!?」
「違うよ!! 僕にこの子を助けるように言ったんだ。応急処置はしておいたって言って……。でもその人攻撃魔法を発動させながら村の外へと向かったよ」
「兎に角この女の子の処置が先だな」
そう慌てて話す僕とは違いクリームは凄く冷静で、鞄から『もしも』の為にと作っておいた精神力を若干回復させるアイテムを取り出すと、少女に少しずつ飲ませた。
「体の傷は少ないな……」
「リオ?」
「返り血……か?」
そうリオがクリームに問い掛けると、薬を飲ませた後、少女の傷の具合を診る。
「……この子自身の傷は浅いし数も少ない。それなのにこの血の量……」
「やっぱり……」
「兎に角、この子が起きたら話を聞くしかないが……なぁトモカサ、その男ってのは村の外に攻撃魔法を発動させながら歩いて行ったと言ったな?」
「うん」
そう険しい表情をして僕を見つめるクリームは、返事を聞いた瞬間立ち上がり窓を開けた。
そして、普段なら絶対村の中では耳を隠しているのにターバンを脱ぎ去り、長い精霊族の耳を晒し音を聞いているようだ。
「どうしたんだ?」
「………遠くで攻撃魔法の音がする」
「え?」
「気付き難いだろうが……壁や窓枠を触ってみろ」
そう指示を出したクリームに、僕とリオは各々壁や窓枠に手を乗せてみると、僅かだけど振動を感じることが出来た。
「……戦ってる?」
「恐らく」
「この嬢ちゃんが狙い……だよなぁ」
そう言うと、僕達はベッドに横たわる少女を見つめた。
荒い息遣いで苦しそうだ……。
僕は窓から離れ少女の手を握ると、僕達は眠れぬ時間を過ごした。
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