第16話 初めての武器屋でドキドキする。

――リオside――



初めての旅。

初めての友達。

初めての仲間。

全てが初めての事だらけだった俺は、色々覚える事が多くて大変だったけれど、それらは全て、クリームとトモカサが教えてくれる。

外の世界はこんなにも自由で、こんなにも楽しいものだと初めて知った旅の中……。


宿屋に泊って一週間、クリームとトモカサは次の旅に出ようとはしなかった。

理由は聞かなかったが、その間俺は黙々と勉強したし、部屋に入ってくるのは二人だけなので、具現化の練習も頑張った。

だが、そんなある日「たまには息抜きしろ」と、クリームに耳を引っ張られ俺は久しぶりに宿屋の外に連れ出された。

宿屋の外には既にトモカサが待っていて、俺達が姿を見せると手を振って俺の名を呼ぶ。

三人で歩く村の中は平和で、騒々しい機械音すら聞こえない静かな場所だ。



「もう……リオったらずっと勉強ばっかりだし、暇さえあれば具現化の練習ばっかりしてるんだもん」



そう言って眉を寄せて俺を怒るトモカサに苦笑いすると、クリームは俺の頭を軽く小突き「たまには外に出ないとダメだろ」と叱る。

「悪い悪い」と苦笑いすると、二人は顔を見合わせて困ったように笑った。

何所へ歩いているのかも聞かず三人で歩いていると、一軒の店に立ち止まる。看板には武器のマークがついていて、俺が首を傾げると同時にトモカサが俺の手を掴み店へと入った。



「うわぁ……」



店に並ぶのは多種多様の武器。

剣もあれば杖の様な物もあるし、短剣や銃も売っていた。

店を隈なく見渡すと、クリームが俺の肩を突き話しかける。



「お前はこの中から自分が使えそうな武器選べよ」

「えっ!?」

「そうそう、リオは銃を使うけど一応接近戦の事を考えて武器を持っておいた方が良いよ」



そう言いながらトモカサは手に取った剣を軽やかに動かして俺に見せた。

二人は剣は苦手だと言っていたが、トモカサは軽やかに剣を操ってるし……本当は得意なんじゃないかと思ってしまう。

様々な武器を眺めて迷っていると、クリームが俺の歩み寄り耳元で話しかけてきた。

何事かと思ったが――。



「お前、具現化出来るんだからこの中で具現化出来そうな武器も頭に入れとけよ」

「なんで?」

「折角具現化が使えるんだ、金出して重い武器持つよりマシだろ」

「なるほど、クリームはどうするんだ? お前の具現化って防御用だろ?」



そう問い掛けると、クリームは短剣を手に取り「俺はコレが得意」と言うと、奥から店の主人らしき男が現れた。

「あ――……困った……」

「どうしたのおじさん」



頭を掻きながら現れた店の主人にトモカサが駆け寄ると、まさか旅人が居るとも気づかなかった店の主人は「いらっしゃい」とは言ってくれたものの、少々困り顔だ。



「いやぁ……この武器を、とある旅人さんに注文受けて作ったんだが、どうもお気に召さなくてね」

「どれどれ? ………オートボウガンか~」

「オートボウガン?」



聞き慣れない言葉に俺もカウンターへと向かうと、そこには連射で矢を放つことが出来る銃と似た性能の武器を見つめた。



「コレは矢代も掛かるからね……ちゃんと断ったのに、それでも注文してくるから作ったら……」

「やっぱイラナイって突っ返されたって事か」

「ははは」



そう言って困ったように笑う主人を余所に、俺はオートボウガンを手に取り作りや性能を考えた。

確かにコレだと矢代も掛かるし、余り戦闘向きではないだろうなぁ~と思っていると、先程クリームが俺に話していた「具現化出来る武器」を思い出す。

―――コレなら、俺でも具現化して作れるんじゃないか?

―――矢代だって、矢を具現化すれば無数に作れる。

そう思い、パッとクリームの方を見ると、クリームは俺の視線に気づいたのかニヤッと笑った。



「それは残念だったなぁ……でも俺達も貧乏な旅人だし、矢代の掛かる武器は買えないな」

「まぁ……君たちは旅人にしては若いからねぇ。お金稼ぎも大変だろう?」

「そりゃそうだぜ? こんな幼い子も一緒に旅してるんだから大変大変」



そう言うとクリームはトモカサの頭を撫でながら店の主人に溜息を吐く。

それに対してはトモカサは怒る様子もなく、困ったように笑いながら店の主人に顔を覗かれている。



「確かに、こんな幼い子が旅をしているなんてなぁ……坊や、理由はなんだい?」

「うん……実はお母さんを探して旅をしてるんだ」



思わず吹き出しそうになったが、本当なのかと目を見開き声を上げようとすると、クリームの肘鉄が腹に入った。

―――黙ってろって事だろう。



「そうか……お母さんを探して旅をしているのか……不憫になぁ。なら武器は少し安くしてあげるから、何か選んでおいで」

「良いの!?」

「ああ、こんな幼い子が母親を想い旅をしているんだ。 おじさんだってそこまで鬼じゃないよ」

「ありがとう!!!」



そう言うとトモカサは子供らしい可愛い笑顔でお礼を言うと、クリームの手を取り飛び跳ねて喜んだ。

後で、二人に色々聞かないといけない事が出来たなと思いながら立ち上がると、トモカサは俺の手を掴みニッコリ微笑む。

天使の笑顔だが心は何気に黒い悪魔じゃないかと思ってしまう。

店の主人がオートボウガンを店の奥に持っていくのを確認した二人は、俺の手を、肩を掴み「お前の武器を選ぶぞ」と小声で口にする。

店の主人が戻ってくるまでに選べと急かされ、咄嗟に手につかんだのは円形の武器ともう一つ、金属で出来た棒の様なモノだった。



「チャクラムとトンファーか」

「もうそれにしちゃおう」



そう言うとトモカサはチャクラムとトンファーを手に取りカウンターに置いた。

それと同時に店の主人も現れ「それに決まったのかい?」と問い掛けてくる。



「うん、コレがカッコイイな~って!」

「うんうん、じゃあ割引してあげるよ」

「ありがとう―――!!!」



そう言ってにこやかなトモカサの横でお金を支払うクリームを余所に、トモカサは二つの武器を鞄に入れると、支払を済ませたクリームと共に後ろで呆然として俺の両腕を掴むと店の外へと出た。



「オイ二人とも!!」

「話は宿屋に帰ってからね!」

「良い買い物したな~」



そう言いながら俺を引っ張りながら宿屋へと戻った。




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【★完結★】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

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