第15話 初めての村で、初めての一人で。

――リオside――



その頃、俺は一人で村の中を見回りながら歩き、本屋を探していた。

あの街に居た時は、俺を見るだけで女子供は逃げて家の中にすっ飛んで行ったし、この村でもそうなるじゃないかと内心冷や冷やしていた。

けれど、村を走り回る子供たちは俺の事なんて気にしてないし、畑仕事をする奴は「旅の人か~い」と気軽に声をかけてくれる。


余りのギャップに俺自身がついて行けない状態ではあったが、首元もシッカリ隠れてるし、手だって指先が少し袖から出ている程度だから安心感があった。

小さな村はリンカルドよりも空気が綺麗で、空も青く透き通っている様に思える。



「……こんな外の世界があるなんてな……」



――――小さく呟いた、心の底から出て来た言葉。

それと同時に、村に着いた時のトモカサの言葉が、今も耳に……心に聞こえてくる。



『良いじゃない、こうしてリオと出会う事が出来たんだもん!』



あの言葉を聞いた時、凄く凄く嬉しくて、でも凄く凄く気恥ずかしかった。

十四歳だと聞いたが、実際年齢よりもっと幼く見えるトモカサは、色んなモノに興味を示し、何時も笑顔で元気が良い。

一瞬女の子かと思われても仕方ない顔だし、クリームが猫可愛がりする気持ちも分かる気がした。


そして、もう一人の俺の仲間のクリーム。

最初はいけ好かない奴だと思ったが、俺の為に家事の合間に勉強を教えてくれたりドリルを作ってくれたり、無論家事の最中に分からない所を聞けば、直ぐに俺の元へきて勉強を教えてくれた。

俺と同じ年だと聞いたが、同年代の奴と話した事なんて無論俺には無くて、また喧嘩する事なんて初めてだった。

そして――――俺の今着ている服だってそうだ。

俺が褐色の肌を気にしている事を理解して、ちゃんと肌を隠せる様に服を作ってくれた。



「……あいつ等の為にも、俺は堂々としてないとダメだよな」



そう口にすると、俺は畑で仕事をしているオジサンに思い切って声を掛け、本屋の場所を聞くと、お礼を言って本屋へと急いだ。

正直、本屋に入るのも初めてで……小さな本屋ではあったが、何所に何があるのかサッパリ分からずウロウロしていた。

そんな時、クリームが本屋に入ってきた。



「お?」

「おっ 良い所に来たクリーム!! 悪い……どれが化学とかなのかわかんなくてさ」

「あ―――??? それ位自分で調べろよな~」

「仕方ないだろ? 本屋なんて初めて入ったんだから~」



そう怒ると、クリームは「面倒くさいな~」と言いながらも、二人で教材を選び、俺は更にペンやノートを選んでいた。



「俺がお前にやった金で支払えよ~」

「おーう」



そんなやり取りを小さな本屋でしていると、クリームは沢山の新聞を買い、先に出て行ってしまった。

俺の事待っててくれても罰は当たらないだろう~……なんて思ったが、ちゃんと支払も済んで先に宿屋に帰るクリームを追いかける。

そして、十字路の所でトモカサとも出くわし三人で宿屋に帰り、夕食時間まで俺達は各々やりたい様に過ごした。

俺としては、化学や物理が面白くって問題をドンドン解いて行っていると、午後6時を知らせる時計の音と共にクリームはエプロンを装着して部屋を出て行った。



「何だ? クリームが飯作るのか」

「うん、お爺ちゃんは料理作れないからって食材は用意してくれたみたい」

「ふーん……クリームの買い物は結構早く終わったみたいだけど、何時もあんな感じか?」

「クリーム?」



そう問い掛けると、トモカサはベッドから起き上がり、足をブラブラさせながら「そうだなぁ~」と口にする。



「主夫的な所は全部クリームがしてるから、良く分からないや」

「そっか」

「僕も手伝いたいって言うけど、僕がする事って言えば町や村に着いた時に宿屋で泊まる手続きをするくらいだよ」

「ふ~ん……」

「後は、村や町でも仕事の依頼が舞込んでくる事はあるがあったりするから、依頼を受け付けたり……それと、情報収集が僕の仕事かな」

「依頼と情報収集?」



聞きなれない言葉にトモカサに問い掛けると、トモカサは分かりやすく俺に説明してくれた。

どうやら、村や町での依頼と言うのは、家畜を襲うモンスターを倒して欲しいと言う依頼が主なモノらしい。

そして情報収集は、近くにこんな洞窟がある等と言ったモノらしく、そう言う情報が入るとトモカサとクリームは洞窟に入り宝箱やアイテムを得ているそうだ。



「依頼内容に寄っては、クリームが報酬を上げたりしてくれるね」

「流石主夫、財布の紐はシッカリと……か」

「それでリオ」

「ん?」

「村の中では、肌の事気にならなかったでしょ?」



そう問い掛けられ、俺はキョトンとした顔で頷いた。



「でしょ?」

「俺でも驚いてるぜ……リンガルドとは全然違うからな」

「ふふふ」



そう言って笑うトモカサに釣られて笑うと、外から美味しそうな香りが漂ってくる。



「あっ! そろそろご飯出来るみたいだね」

「だな、勉強は一先ずここまでにしといて―――……食器出し位手伝おうぜ」

「うん!」



そう言うと俺とトモカサは部屋から出ると、鍵を掛けて美味しい匂いのする食事処へと向かったとある日の夜の出来事。




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