第14話 何も知らないリオに教える色々講座。
――クリームside――
二日後、リオはまたもドリルをクリアしてしまい、俺としても驚くばかりだが、そろそろ教材を買った方が良いだろうと判断した日。
数日間過ごしたテントを片づけ、俺達は近くの村へ行くべく旅を始めた。
次の村までは歩いて4、5日位だが、リオの体力次第だな~と思いつつ旅をする道中、歩きながらの戦闘術講座を始めた。
この世界では、好きなタイプで戦う者が多く、トモカサの様に格闘タイプもいるが、一番最も多いタイプは『剣』を使って戦うタイプが多い事も話した。
「剣?」
「そ、一番手に入れやすい武器でもあるしな」
「この地上界では、剣術に優れた国もあって、そこの王は歴代ずっと魔法も使えるんだ」
「ラルアガース王の国だな」
「へぇ~」
「旅人ってのは基本戦闘能力が高くないと旅は出来ない。まぁ俺もトモカサも一応剣術の心得はあるが、ぶっちゃけ得意な方じゃない」
「俺は銃しか使えないしなぁ……」
「銃だと遠隔攻撃に入るから、接近戦には向かないんだよね。銃以外の物を作れるようになれば変わるかもしれないし、何か武器を使えるようになれば変わるかもね」
「銃以外ねぇ……」
「それと、リオの場合具現化に時間が掛かるからなぁ……そこも少しはマシにならないと生き残れないぞ」
「まぁ……確かにトモカサの具現化には負けるよ」
そう言うとリオはトモカサの頭をワシワシ撫で回し、トモカサは「髪が滅茶苦茶になっちゃうー」とご立腹だった。
それともう一つ、具現化についても説明をしておかねばならないだろうと思い、リオに具現化についての説明も行う。
過去、俺とトモカサが話し合った結果、どうやら具現化も精神力と同じ様に力を使う事が分かっている。
精神力とは別の力だと言う意見も一致しているし、体の中にある何かを削っているのだと言う所までは理解している。
「で、具現化もそれなりに何かを消費して作られているから、余り武器をコロコロ変えると疲労が蓄積されるらしい」
「なるほど」
「でも変だよね~……クリームは常に具現化してるのに全然疲れないんだもん」
「へ? コイツの何所にその具現化したモノがあるんだ?」
「ほら、これこれ」
そう言うとトモカサは俺が腰に巻いてるオレンジの布を手にしてリオに教えた。
「え? それって只の飾り布じゃねぇの? 何の変哲もない布に見えるけど?」
「違うよ、これがクリームの武器でもあって具現化アイテムなの」
「マジか?」
そう言って二人は歩きながら俺の腰にある布を見つめたが、コレは俺が物心ついた時には既にあったモノで、俺とトモカサを育ててくれた長老が言うには、俺はこの布に守られる様に包まれたまま森に倒れていたらしい。
錬金術を熟知する長老ですら、この布が何なのか分からない………不思議な布。
だが、この布を普通に腰に巻いている時は疲れすら感じないし、布を使う時は基本防御する為に使うことが多い為、それ程俺としては力を使う事は無かった。
「コレってどう言う時に発動するんだ?」
「魔法を使う時にモンスターがクリームを襲うとするでしょ? そしたらこの布が盾になってクリームを完璧に守っちゃうんだよ。どう言う素材なのか分からないけど、大きくも小さくもなるし、剣でも斬れないし、魔法も受け止めちゃうし、燃えないし、凄く頑丈なんだ」
「へぇ~……便利だな」
「後は敵を締め付けたりかな」
「………それって、窒息死……か?」
「まぁ早く言うとそんな感じ」
「うわ………コワッ」
「俺が念じれば、モンスターくらいだったら押し潰す事も出来るけどな~」
そう言ってニヤリとした笑みでリオを見つめると「冗談でも俺を見るな」と慌てていた。
「ま、俺としてもこの布との付き合いは長いけど、何時からあるのかは分からないだよな~」
「ふ~ん……」
「んで、この布が俺を完璧に守っちゃうから、こんな俺好みの露出の激しい服を着てても問題なしって訳だ。 ま、人間の多い街中では発動させないけどな」
「なるほどね」
「念じ様では武器にもなりそうだけどね」
そんな話をしながら、リオは歩きながら銃の具現化の練習を始めた。
どうやら少しでも早く具現化できる様になりたい様だが、夕方になり掛ける頃には疲労困憊の様子だったので、テントを張れる場所を探し早々に眠りについた。
そんな日々が5日続いた頃、遠くに村が見えた為、俺はターバンで耳をしっかり隠してから村へと三人で入った。
「あ、リオ少し待って」
「ん?」
そうトモカサが先に進もうとするリオを引き留めると、俺は今はターバンで隠している耳を澄まし、村の中から聞こえる音に集中した。
「何やってるんだ?」
「村や町に入る時クリームが毎回行う事だよ。あれをする事で、この村は治安が良いかどうかを知る事が出来るみたい」
「へぇ……俺の住んでた街はどうだったんだ?」
「うん、治安悪かったよ」
「…………良くそんな中でも入ろうと思ったな」
「良いじゃない、こうしてリオと出会う事が出来たんだもん!」
「はっ……恥ずかしい事言うなよ……」
「オイコラ、リオには後でこの布の餌食になって貰うとして―――どうやら治安は良いみたいだな」
「良かった―――!」
「俺は良くない」
「宿屋探そう!!」
そう言うとトモカサは村に入り、あちらこちらを見渡しては宿屋を探している。
そんな様子を俺とリオが後ろから見守りながら町の中を歩いていると、古びた宿屋を見つける事が出来た。
営業しているのかも怪しいが、取り敢えず中に入るしか無さそうだ。
「ごめんくださ――い!!」
そうトモカサが宿屋に入ると、年老いた老人がカウンターの奥から杖を付いて歩いてきた。
「3人泊まりたいんですけど、3人部屋ってあります?」
「あ――?」
「あのね――!!! 3人で泊まりたいんだけど――!! 3人部屋ある――!?」
「あ―――!!! あるよ―――!!!」
「お願いします―――!!!」
「はぁ~~い!!!」
そう言うとトモカサは俺たちの方を見てピースサインを送ってきた。
杖をつきながら俺達の元にやってくると、顔を上げ眼鏡をクイクイ動かしながら俺とリオを見つめてくる。
「やだお爺ちゃん、そんなに見つめられたら照れるじゃないっ」
「なん……だよ………」
リオの方は何か言われないかとドキドキしていた様だったが………。
「お――……よう働いておる少年だなぁ……黒く日焼けして」
「へ?」
「関心関心」
それだけ言うと老人はトモカサに手招きして部屋へと案内してくれるようだ。
「………」
「だから言っただろ。仕事のし過ぎで黒くなりました~って思われるって」
「なぁクリーム、俺ってあの街から逃げてればこんな風に生きれた?」
「多分な」
そう即答するとリオはガク――ッと肩を落としたが、放置して老人が歩いて良く先に歩き出すと、リオもハッと気づき俺たちの後を着いてきた。
そして、古びて悲鳴を上げる金具の音と共に扉が開き、そこには5人泊まれるだけの広さとベッドが置かれた部屋が現れた。
「ここ使いなっせ――!!!」
「ありがとう――!!!」
「久々の客人じゃけんな――!! 飯は奮発してやりたいが――!! 料理作れる奴がおら――ん!!」
「大丈夫――!! 料理上手い人居るから台所と食材頂戴――!!」
「あいよ――!!!!」
そう叫び合う老人とトモカサだったが、どうやらかなりのご高齢な為か耳が遠いらしい。
杖をつきながら去って行った老人を見送った後、トモカサはベッドにダイブし「久々のベッドだ~~~~!!」と喜んでいた。
ゆっくりしたいのも分かるが………アイテムの換金もあるし、食材も出来るだけ買える時に買いたい。
「んじゃ、分担決めるか」
「あっ うん」
「俺は食材とその他のアイテムを買ってくるから、トモカサはモンスターから剥ぎ取ったアイテムの換金な。 リオはほら」
そう言うと俺はリオ用に分けたお金の入った小袋を投げ渡した。
「お前は本屋がこの村にもある筈だから、必要だと思う教材とペンとかノートとか買ってこい」
「お……おう」
「無駄遣いすんなよ、必要だと思うものを買ってこいよ!」
「分かったって………」
そう言うとリオは先に部屋から出て行ったが、小さな村だし直ぐに本屋は見つかるだろう。
トモカサも鞄に換金するアイテムを詰めて「いってきま~す!」と元気よく出て行った。
「さて、俺も必要素材買ってくるか」
そう言うと鏡の前でちゃんと両耳隠れているかをチェックした後、部屋に鍵を掛けて村へと出た。
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