第13話 爪を隠しまくりなクリームと、今やるべき事。
――リオside――
見事に白く固まったまま落ち込んでいるクリームを余所にニコニコしているトモカサを見て、クリームが何となく可哀想に思えたのは胸に留めておくとして、確かにトモカサが魔法を使う所を見た事がない。
大抵トモカサは拳で語るし、今はこの開けた草原では鞭になる様な物も少ないからか、鞭すら見ていない。
その後、トモカサから聞いたが、クリームは料理を作ろうと思えば魔法を使って本を読みながらでも作れるそうだ。
でも、それをしないのは、やはり自分が包丁を握って料理をしたいから―――らしい。
「クリームはああ見えて情報量は凄いんだよ。 そう言う素振り見せないけど」
「確かに、喧嘩した時も『能ある鷹は爪を隠す』って言ってたもんな」
「ああ、そうそう。魔法についてもう一つ言うけどさ」
「ん?」
「魔法を使うには、凄い精神力を使うんだ。精神力が0になれば魔法は使えないし、大怪我して大量出血した時みたいな……なんて言うのかな、意識がフラフラしちゃうって言うのかな~……」
「そんなのあるんだな」
「クリームは戦闘においては支援タイプでさ、魔法を屈して戦うタイプなんだよ。 戦術、その敵の特徴を読んで戦うんだ。 だから凄く精神力使うの。 それで、昔ちょっとしたトラブルがあってクリームは全部の精神力使い切っちゃった時あってね………」
そう言うとトモカサは顔を伏して暫く沈黙してしまった……。
多分、俺の予想だとトモカサが招いたトラブルだったんだろうと思う。
「三日三晩起きなかったんだ……凄く疲労してたんだと思う……。起き上がっても中々身体が言う事きかなかったみたいでさ……無理して錬金術し始めて、精神力を回復するアイテム作って凌いだ事があるんだ」
そう言うと腕で目を擦るトモカサに、俺は地面に横たわりブツブツと何か言ってるクリームを見た。
「だから、モンスターとの戦闘とかになったら、出来るだけクリームの負担にならないようにしないと」
「……OK、了解した」
そう答えると、俯いたままのトモカサの頭を強く撫でた。
「その為にも生き抜く術を身につけないとな。 頼むぜ、先生」
「うん!」
そう言ってトモカサの背中をポンと叩くと、涙を拭い笑顔を見せてくれた。
そして、手にしていたドリルを肩でポンポンと叩くと、地面に横たわるクリームの背中をガッと蹴り飛ばす。
「ぬぁ!!」
「オイコラ。 お前が教えなかった内容の所為でトモカサ泣いたじゃねーか。どう落とし前つけるつもりだ、ん?」
「えっ!? トモちゃん泣いたの!?」
「精神力使う云々の時泣いたぞ。ったく……トモカサ泣かせたらダメだろ」
「あ――……」
「ついでに、お前が支援タイプってのも理解した。 俺が戦闘で生き抜く術を教えて貰うまで精神力取っとけよな」
「何だよその上から目線は」
「んだよ、お前が教えないからトモカサ泣いたんだからな」
「それと上から目線ってどう繋がるんだよ」
「また喧嘩始めたぁ………」
ふと後ろから聞こえた溜息混じりの声にビクッとすると、二人で揃ってトモカサを見る。
「あのね? 喧嘩するなとは言わないけどさ? 止める身にもなってよね!?」
「「うっ」」
「それとクリーム! 蘇生アイテムがそろそろ尽きるけど、錬金術で作らなくていいの?」
「あっ!! 作り置きしないとヤバいよな?」
「ほらほら、二人ともやる事出来たでしょ! 一日は短いんだからサッサと動く作業する勉強する!!」
そうトモカサが両手を腰に添えて怒ると、俺は走って机に向かいドリルを開き、クリームは鞄から見た事も無い器具を出して、見た事も無いアイテムを並べて合成し始めた。
「んもう……」
「あっ 理科結構スラスラ解けるぞ」
「マジか? くっそ~~~……次のドリルまだ作ってない!!」
「はぁ………僕、魚釣りしてくる」
そう言うとトモカサは鞄から竿を取り出し、川で泳ぐ魚の群れに釣り糸を落とした。
今日の夕飯は焼き魚か~……何てふと思ったが、直ぐに意識をドリルに集中させて問題を解いていく。
だがしかし―――――。
ゴボゴボゴボ………。
ゴボッ
バフ―――ン……。
そんな音がクリームの元から聞こえるし、何とも言えない臭いまで風に流れてやってくる。
集中したい………が、気になってしょうがない。
ちらっと覗き見すると、何とも表現のしようが無い色の液体がボゴボゴと音を立てていた……。
「………なぁクリーム」
「あぁん?」
「聞きたくねぇけど、それ何のアイテム?」
「お前も飲んだだろ~」
「………」
アレが……蘇生アイテムか…………。
あんなの飲んで俺の身体大丈夫だろうか……。
「大丈夫大丈夫、飲んだ後はお花畑から戻ってこれるから」
「そ……そっか」
―――俺が心配してるのはそっちじゃない。 そう心から叫びたかったとある日の出来事………。
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