二人だけで旅をしていた、その内仲間も増えた。だが僕達は狙われている。

第9話 トモカサの静かなる怒りと、俺の新しい【服】

――リオside――

「……僕は、皆を殺した奴を見つけるんだ」

「……復讐か？」

「違う、仇討だよ」

「……」

そう語ったトモカサの表情は、怒りを現すような表情でもなく、無表情だった。

淡々と「仇討」だと口にした声も、怒りも篭ってない声だったが、何所か冷たく恐ろしかった。

「トモカサ」

「おっし！！　リオの服出来たぞ――！！」

「……」

余程集中していたんだろう、トモカサの言葉も耳に入ってなかった様で、意気揚々とした声で服を見せている。

「どうだ！　これなら首元もシッカリ隠れる上に腕も隠れるし手もある程度隠せるぜ！！」

「わぁ！！」

その声にトモカサはパッと明るい表情に戻った。

それだけで俺としてはホッと安堵出来たが「早く着せて見せてよ！！」と、あの子供らしい笑顔で言われると、俺が感じていた不安も解けてクリームから服を受け取った。

「んじゃ着替えて来る」

「え――？　目の前で着替えて良いじゃない」

「馬鹿、この変態の前で着替えたらどんな目で見られるか分かったもんじゃない」

「馬鹿野郎！　俺が興味あるのはトモカサの柔肌、」

「殺そう、うん、今殺そう」

「ヤメテッ！！」

「ははははｗ」

バタバタと騒がしい二人を余所にその場で着替えると、確かに身体にはフィットするし、嫌な褐色の肌も随分と隠れた気がする。

「サイズぴったりだな」

「あ、俺見ただけでその人のスリーサイズ分かんの」

「お前、それ女性の前で言わない方が良いぜ？」

「わぁ！！　リオ似合う――！！　かっこいい～～！！」

「ははは」

「素材は旅をする上で強度があるのが良いのが本来なら良いんだけどさ、ガッチガチな服装って俺等してないじゃん？　悪いけどリオには敵から攻撃受ける前に避けるなりの練習しないとな」

「ある意味、死と隣り合わせの服装かよ」

「まぁそうなる」

「クリームなんて腹出しヘソ出し、更に肩まで出てるからね～」

「俺は良いの、露出が好きなんだから。　俺から露出取ったら何が残る？」

「主夫と変態だけだね」

「寧ろ変態も取ったらどうなんだ？」

「バーカ、そんなのツマラナイだろ？　ムードメーカーってのがパーティには必要なんだぜ？　分かってる？」

「ムードメーカーなら可愛いのが居るじゃねーか」

「ぬ？」

そう俺が言うと、俺とクリームはキョトンとした表情で俺達を見上げているトモカサを見た。

「……遊び人って言うよりは、こう……バニーちゃんみたいな……」

「パフパフだな？」

「オゥイェス」

「あのさ、現実見ようよ　僕男の子だし、胸なんて無いんだけど」

「ペチャパイは希少価値なんだぜ？」

「うん、やっぱり一発殴らせてクリーム」

「申し訳御座いませんでした！！！」

―――と、拳握りしめてクリームに詰め寄るトモカサに笑いつつ、俺は地面に座り焚火の木を一本投げ入れた。

後ろでクリームの悲鳴と言うか、雄叫びが聞こえるが無視しようと思う。

コイツ等とは昨日出会ったばかりだってのに、凄く気が休まるのを感じるし、それとは別に　『懐かしさ』　を感じている俺がいる。

まぁ……当分慣れないと行けない事は多いし、生き残る為にこれから頑張らないといけない事も多々ある。

「さて……と、おいクリーム、そろそろ晩飯は？」

そう言って後ろを振り返ると既に事切れたクリームが血だらけで倒れていた……。

「おおおお………おいおいクリーム！！」

慌てて駆け寄ると、明らかにクリームは息をしていなかった。

「あ、そうだね、夕飯作って貰わないとダメだったね」

そうサラリと口にしたトモカサには返り血が酷い………こんなのを見た後に夕飯かと思うと頭を抱えたくなった。

「どうすんだよトモカサ、どうやってクリーム蘇生すんだよ！！」

「コレだよコレ」

そう言うとトモカサが鞄から取り出したのは、小さな小瓶だった。

蓋を空けクリームの口に突き刺すと、暫くしてクリームがムクリと起き上がった……。

「……お花畑が見えた～……」

「うんうん、見えたね～。　ご飯作って？」

「はーい」

怒る事も無く、普通に対応しているクリームには驚いたが、人が生き返る瞬間を見るのも初めてで俺としても驚きを隠せない。

「アイテムって……色々あるんだな」

「そこは明日にでも教えるよ」

「あ？　ああ。てかトモカサ」

「ん？」

「お前の武器って……鞭じゃないの？」

思わず湧いた疑問に問い掛けると、トモカサはキョトンとした表情で「ぬー」と口にする。

「リオはさ、戦闘パーティって分かる？」

「知識だけなら」

「僕とクリームは戦闘に慣れてるからアレだけど、僕は鞭とか使えそうな素材がその辺に無かったら、拳で倒すよ？」

「…………モンクですか？」

「うん、でも魔法も使うよ？」

「サポ魔導師ですか？」

「その辺も明日教えるね！」

さわやかで可愛い笑顔を見せたトモカサに俺は小さく溜息を吐くと、トモカサは笑顔のままクリームの元へと走り去った。

「まっ　コイツ等とは長い付き合いになりそうだ」

満月を見つめながらふと出た言葉。

でも、悪い気は全然しないし、寧ろ楽しくてしょうがない。

初めて人から必要とされて、初めて俺を恐れることなく受け入れてくれて、初めて一緒に　『仲間』　として旅が出来て、自由を手に入れて………。

「………」

遠く燻る煙が見えるフォルナスの森を見つめると、何となく悲しそうな風が頬を撫でて去って行った……。

「リオ――ご飯もう直ぐ出来るって――！！」

「おう！」

トモカサの声にハッと我に返り、踵を返して二人の居る明るい焚火の元へと走り出す。

暗かったあの森から―――仲間がいる明るい場所へ。

俺の自由と言う名の旅が、今始まった気がした――――。

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