第8話 僕とクリームが旅を始めた理由。
――トモカサside――
――僕達が旅を始めたのは、今からどれくらい前の事になるだろうか。
夜空に輝く満月を見つめながら、僕はリオにどこから話せばいいか迷っていた……。
「僕達が旅だったのは………」
僕とクリームが旅立つ前まで、クリームが住んでいた森に僕も住んでいた。
そこには、沢山の動物がいて、沢山の精霊が住んでいた。
確かに、精霊族が地上界に居る事は珍しい事だったけれど、そこの精霊族はみんな精霊界から逃げてきた人達ばかりだった。
子供の僕らには理由は話さなかったけれど、ただ一つ教えて貰った事は、精霊王のやり方について行けなかったらしい。
皆口々にしていたのは「何故、王はたった一人の息子を殺したのか」と言う事だった。
その一人息子は次期王として相応しく、とても良い精霊だったと聞いた。
――幼い僕達は、森の長老に育てられた。
森の中で遊んだりもしたけれど、人間社会についての勉強だって教えて貰ったし、文字の読み書きだって叩き込まれたし、魔法の使い方も教えて貰った。
僕とクリームは素質があったみたいで、魔法だって直ぐに使えるようになった。
モンスターを倒す事も多々あった。 何れ僕とクリームは外へと旅立つだろうと占いで出ていたから、大人が付きっきりで生き抜く術を教えてくれた。
――でも、その旅立ちは急に訪れた。
「クリーム、そしてトモカサ。お前たちは今この瞬間から旅立つんだ」
「え?」
「さぁボサッとしてる暇はない! 早く出発の準備をするんだ!!」
あの時、大人たちは凄く慌てていた……。
子供を抱えて逃げる親も沢山いて、僕達は急いで必要なモノだけを鞄に詰めると、長老の元へと連れて行かされた。
「今日これより、お前達二人は旅立つのだ。いいか? 絶対に戻ってきてはならぬ!」
「オイ爺ちゃん!!」
「連れて行け!! もう時間が無い、急ぐのだ!!」
「お爺ちゃん!!」
長老が発した言葉と同時に、僕達は大人の人に抱きかかえられ森の外へと放り出された。
僕達を外へと出した大人は、泣きながら「早く行け!! ずっとずっと遠くまで走るんだ!!」と悲鳴の様に叫んだのは覚えている………。
僕とクリームは何が何だか分からないまま走り出し、後ろを振り返る事も無く只々走り続けた。
――でも、どれだけ住み慣れた森から離れたか分からない時。
ドオォン!!!
「「!?」」
地面が揺れる程の爆発音と風圧で、僕とクリームはその場に倒れてしまった。
そして――初めて後ろを振り返ると森は真っ赤な炎に呑まれ、その炎は大きく膨らんで僕達をも飲み込もうとした。
正直……もうダメだと思った………。
僕とクリームが抱き合い身体を強張らせた瞬間、クリームの腰に巻いてる布が突然大きく広がり僕達をすっぽりと足元まで包み込んだ。
ビリビリと揺れる大地……でも不思議と熱さも感じる事も無くて、ただクリームと抱き合って大地が静まるのを待った。
―――どれだけの時間が経ったかは分からない。
僕達を包んでいた布がハラリと外れて、クリームの腰に戻ると……僕達は周りを見て息を呑んだ。
――全てが、消え去っていた。
……森も、地面も、えぐられる様に消え去っていて、荒々しい爪痕の様な地面だけが残っていて、僕は焼け焦げた地面に座り込んでしまった。
「お爺ちゃん!!」
「やめろトモカサ!!」
「だって!! だって誰か生きてるかもしれない!!」
「ダメだ!!」
「何で止めるのクリーム!! 何で!?」
泣き叫ぶ僕を余所にクリームは凄く冷静だった………。
ただ一言「長老は戻るなって言った」と厳しい口調で言うと、僕の腕を掴んで荒れ果てた爪痕の土地の上を何も言わずに僕の腕を強く握って前を歩いた……。
僕はただ泣くだけしか出来なくて……クリームの後を着いて行くだけで必死だったのを覚えてる。
――あの時、何故大人たちが慌てていたのか、それを知るのには時間が掛かったけれど、僕達を逃がす為だと言う事を……クリームに言われて涙を零した。
あの中で生き残る事が出来る精霊はきっと一人も居なかった筈だ。
きっと………皆死んでしまったんだと思う。
そして、一つだけ言える事があるとしたら――……。
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【★完結★】召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
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