第4話 名前のない少年は、自分に名をつける。
――クリームside――
結局、トモカサはコイツを連れて行く事を決め、その夜は泉の前で俺が腕を振るい料理を作った。
小さな鞄から次々に出される食材や調理器具に驚いてはいたが、そんな事に一々答えるのも面倒ではあったものの、一応可能な限りは説明したりと、ワイワイ皆で食事を楽しんだ。
そして、翌朝には俺が一端街に戻り、コイツ用の服の素材や旅に必要なモノを買いに行く事まで決まったが――。
「そう言えばトモカサ、肝心な事聞いてないぞ」
「ん?」
「コイツの名前!」
「ああっ!」
「あ、俺名前言ってなかった?」
「「言って無い、言って無い」」
「いやさ、俺……実は本名知らねぇんだよ」
そう言って苦笑いするコイツに、俺は「ふ~ん」とだけ答えた。
実際俺も自分の名前を知らず、トモカサが名付け親だ。 でも何故「クリーム」なのかと聞いたら「何となく」と言う返答だったのは言うまでもない。
「んじゃ、僕が付けてあげるよ!」
「おっ じゃあ一発カッコイイので頼むぜ!」
「うん! 【ブリーフ】なんてどうかな!」
――辺りが一気に氷点下まで下がった気がした。
「……え? 何? 不満??」
「え――……トモカサさん。それは流石に街中では呼ぶには躊躇する名前かと思われますが」
「すまない、トモカサ。流石にブリーフは無いと思うんだ」
「その前にブリーフはカッコイイ名前なのかどうかを論議すべきだな。フンドシは個人的にカッコイイと思う俺ガイル」
「我儘だなぁ!」
トモカサに名前を付けさせる――と言うのが元々ヤバイ事だったのかもしれない。
だが時既に時間切れ、諦めるしかないだろう。
その後も多数の名前候補が上がったが、どれもこれも奇抜な名前で、次第に涙を見せ始める奴が可愛そうになってきた。
「おい、保護者なんだろお前。何とかして止めろよ」
「無茶言うなよ。トモカサだって真剣なんだ」
「真剣だから性質が悪いんだよっ!!」
「何コソコソ話してるの!」
「「何でもない」」
「もう~真剣に考えてるのにー」
「そうだ、コイツに考えさせようぜ、な?」
「ぬ――……」
そう俺が止めると、トモカサも暫く不満気ではあったものの、納得したようでキラキラと期待に満ちた瞳で奴を見始めた。
こうなると、さっきまでトモカサを止めろと言っていた奴も困った様で、ジッと泉を見つめ始めた。
どれ位の時間が経っただろうか……トモカサは既に眠ってるし、このまま外で寝るにしても風邪を引かせると思い、テントを用意し始めた時だった。
「………リオ」
「ん?」
「俺の名前、リオにする」
そう呟く様に口にした奴は、焚火で明るく見える俺をジッと見つめてきた。
「どう思う?」
「……良いんじゃね?」
「んじゃ、起きたらトモカサにも教えないとな」
そう言うと、あどけない寝顔で眠っているトモカサの頭を撫でて笑うリオに、俺もニカッと笑った。
「んじゃ、俺も寝るわ。明日は朝一番にお前の服の素材とか買いに行くしさ」
「あ、悪いな」
「金の事は気にすんな」
そう言うと立てたテントの中にトモカサを抱き上げ入ると、リオも自分のテントへと歩いて良く。
工業都市、リンガルドでまさか新たな仲間が加わるとは思ってもいなかったが、面白いパーティメンバーになったな~と思ったとある日の出来事。
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