①-9 Aさん

私は考察することでいっぱいで、Aさんについての相談を忘れていた。


「シェーマンさんに言われて思い出しました。『人を幸せにする魔法』の使用について相談されたんですよ」

シェーマンさんは、訝しげな顔をした。


「その人は,どう言ってたんだ?もう魔法はしたのか?」


「いや、相談されただけなので使っていないはずです。だけど、幸せについては“わからない”って言ってました」


「それはまずいな。『人を幸せにする魔法』は危険かもしれない」

シェーマンさんは焦らず淡々に答えている。


「それと...その魔法はまた出回ってるのはまずいな。私は大臣の方に伝えねばならなくなった。すまない、すぐにでも行動したい」


「わかりました。本当に今日はありがとうございました。Aさんについての相談はこちらできちんと対応しておきます」


「ああ、くれぐれも魔法を使うのは止めてくれ。では、お先失礼する」

そう言って、シェーマンさんは、ワインの事を忘れて外に出ていってしまった。

「....ということで、『人を幸せにする魔法』はかなり危険な魔法になっていると結論付けました」

昨日のことを、他言しないことを約束して伝えた。Aさんは、前に会った時よりもかなりやつれている様に思えた。


「そうですか、わかりました。あまり死にたいとかは今は考えてないですが、そう言う可能性があるんですね。やめておきます」

そう聞き、私は内心安心した。


「そう言われてこちらとしても嬉しいです。もし何かあったらすぐにでもご連絡くださいね。魔法以外でも受け付けますので、お好きな時にでもお越しくださいね」


「....」


Aさんは、話を聞いているか聞いていないかわからないぐらいの返事をして帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る