①-7 自殺者の情報整理③

〜3人目Zさんの話〜

「最後に、Zさんのケースについて話していくよ」

彼女は、淡々と話し始めた。


「Zさんは、町役場の事務をやっている男性だったかな。家族はいなくが、友人が多く社交的な人物だったと聞いている。ルールを守る事に少し固執してたと聞いているよ。死因は、首吊り自殺。世の中の経済が落ち込んで、彼自身も貧しい状態になったが仕事は多くこなさないといけず、それが原因で自責病となったらしい」


「Zさんは事務の方だったんですね。死因はまた同じですね。彼は、幸せについてはやはり“死ぬ事”と答えてたんですか?」


「ふふふ、いや、彼は”死ぬ事“とは言わなかったよ。ただ、“ない”と言ったんだ。これがXさんとYさんとの違いだよ」

そう聞いた途端、私は導き出していた答えが少し崩れそうになった。私は、『人を幸せにする魔法』は幸せを生み出す魔法であることは確かで、その幸せは気持ちを昂らせる様な状態を生み出すものではなく、単純にその人自身が望んだ幸せを生み出す力と考えた。だが、Zさんの答えを聞いてまたわからなくなった。


「“ない”ですか.......」


「君は、おそらく望んだ幸せを作り出す魔法と思ったのだろう。世の魔法使いはそう解釈していた。だから、悪い考えじゃないよ。だが、この“ない”と回答した人間は自殺した人間の半数を占めてたんだ」


「“ない”といっても自殺をしたってことですよね......もしかして、幸せは彼ら自身が望む形で得る事ができないってことですかね....?

私は自分自身の考察を話続けた。

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