第7話 反撃はお好きですか?

「やはり噂は本当だったか。魔王様を殺したの貴様ではないな、勇者?」



ファフニールは勇者に向けて告げた。



「魔王様ならばこの私程度一撃で葬りさったはずだ。貴様が、勝てるわけがない」



「・・・・・・」



勇者はファフニールをにらみつける。

そして剣を大地へ刺し、杖の代わりとして立ち上がった。



「その通りだ。僕では魔王を倒せなかった」



「ほう?では誰が殺した?吐くというならば、貴様と仲間の命は見逃してやるぞ?」



ファフニールは仲間達に指示を出し、戦士と聖女をつれてこさせる。



「貴様らも知っているのだろう?吐け?」



ファフニールは彼女らの体に爪を食い込ませる。

苦痛に二人の顔がゆがんだ。



だが悲鳴を上げまいと必死に口をつぐんでいる。



「誰がいうものか。僕たちを甘く見るな」



勇者は再び剣を構える。



「そうか。ならば、死ね」



ファフニールは口を開き、勇者に襲いかかる。

このままいけば、勇者は無数の牙によりかみ砕かれ死んでしまうだろう。



このままいけば、ね。



「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」



「なんだ!」



突然、オリジナルの隣にいたファフニールが消滅する。

戦士と聖女を拘束していた個体達だ。



斬られても、殴られても分裂し増殖していた彼らが、

おぞましい悲鳴を上げながら灰となりしんでいく。



オリジナルファフニールは突然の出来事に噛みつくのをやめ、

うろたえていた。



「やっぱりか!テメエ!再生できるサイズに限度があるな!

灰にしちまえばちゃんと死ぬじゃねえか!」



誰がこんなことをしたかって?

当然俺に決まってるだろ!



それに無残に勇者達を殺させるなんてことさせるわけねえよなあ!



「分身が、一撃だと!貴様、何者だ?」



ファフニールがこちらを向いて問うてくる。

俺の実力をわかってくれてるのか、他の兵士達を攻撃しようとしていた

分身まで連れてきて、包囲してきた。



「さあ?誰だろうな?魔王軍に名乗る名前はねえよ!」



「そうか!ならば貴様も死ね!魔術師のようだが、人が多くては戦えまい!」



ファフニールは分身達に一気に攻撃命令を出す。

無数の竜達が同時に襲いかかってくる。



魔術師の強みはその圧倒的な攻撃力だ。



だがその攻撃力は一般人や負傷者がいるとこでは

まきこんでしまうため、十分発揮できない。



普通ならば絶望的な状況だろう。



だがな、俺が今まで仲間がいたぶられているのをただ見ていただけだと思ったか?

すでにすべての味方にはマーキングをつけてあって、いつでも防御が展開可能だ。

そして町自体も魔法で強化してある。



だから、


「吹っ飛べ!」



「馬鹿な!味方ごとだと!」


躊躇なしに町全体を破壊全方位攻撃魔法を放つ。

分身達は光に包まれ一瞬で灰に変わっていった。



おお!すげえ!



さすが女神様の特別製の体だ。



前よりも魔法の威力が上がってやがる。



ファフニール達の分身どころか、空にいたワイバーンすら

一匹残らず殺しきれちまった。



それに魔力の量も多いのか、減った気がしねえ。

いいからだじゃねえか。



「ありえん!ありえんありえんありえん!

こんなことがありえてなるものか!」



「あ?」



何か声が聞こえたので上を向く。

するとそこにはファフニールのオリジナルが残っていた。

どうやら先ほどの魔法を防ぎきったようだ。



どうやら雑魚ではないらしい。

めんどくせえ。さっきので死んどけよ。



「報告しなければ!こんな奴がいるとなれば、計画が狂ってしまう!」



ファフニールは翼をはためかせ、どこかに飛んでいく。

野郎、逃げる気だ。



「逃がすかよ!」


魔法で体を加速させ、浮遊魔法で空を飛ぶ。

そしてすぐにファフニールに追いつき、蹴り飛ばす。


「ぶへえ!」



ファフニールは悲鳴を上げながら地面に突き刺さった。



「貴様!貴様アアアアアアアア!人の分際で!よくも!」


ファフニールは全身から血を流しながら起き上がる。

分身も作れていない。どうやら阻害魔法が良く聞いてくれているらしい。



もうコイツの強みは消し去った。

あとはただ死んでもらうだけだ。


けど、


「計画ってなんだ、トカゲ野郎?話せば見逃してやらんこともないぜ?」



コイツの言っていた計画が狂ってしまうという言葉が気になった。

だからコイツが勇者達に言っていた言葉をそのまま返してやる。



ファフニールは言葉を聞き、顔を真っ赤に染めながら、叫ぶ。



「調子にのるなあああああ!」



突撃してくるファフニールに対し、魔法で剣を作り出し、その頭を切り落とす。


「ぐあ!」


間髪入れずに体の方は魔法で焼いて、頭には再生阻害の魔法をかけた。

これでもうこいつは元の体に戻れない。



一生頭だけだ。



「クソ!再生ができん!これも貴様の仕業か!」



ファフニールは首だけになりながらも叫んでいた。



「うるせしゃべるな。これから散々尋問されるんだ。そのときにしゃべりやがれ」



俺はファフニールの頭を蹴る。


「ぐぇえ!」


さて帰ろうか。

そしてトカゲ野郎。



てめえはには洗いざらいすべてしゃべってもらうからな。

覚悟しておけよ。

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