第6話 魔王軍、襲来

竜が表れたと報告があった町までは部下さんの転移魔法で移動した。



一瞬で町まで移動する。そして空を見てみると、当たり一面ワイバーンで埋め尽くされていた。

ワイバーンは小さな竜だが、それでも人間からしてみればバケモノで、一匹いれば町が滅ぶ。

そなんな奴が空を覆い尽くしているのだ。



確かに緊急事態だ。



町の部隊も応戦しているようだが、効果は薄い。

今はまだ大半のワイバーン達は飛んでいるだけだが、攻撃態勢にはいったら最後。

あっという間に壊滅だ。



「ゆ、勇者様だ!勇者様がきてくださったぞ!」



「勇者パーティーのみなさんもいるぞ!これで勝てる!」



勇者の姿をみた町の兵士達が叫ぶ。

先ほどまで絶望的という顔をしていたのに、一気に表情が明るくなった。

さすが勇者さまだ。来ただけで士気を上げてしまう。



こりゃあ国が手離さないわけだ。



「反撃だ!一気に決めるぞ!」



勇者様が来たことで勢いを取り戻した兵士達が再び戦闘を再開する。



「どうする、勇者?」


「君は町を守ってくれ。僕たちがワイバーンの殲滅をする」


「いいのかい?」


「ああ、3年間の成果を見ていてくれ」



勇者の指示を受け、両手に魔力を込め始める。

そして町が破損せぬよう建物を強化した。



じゃあ後はお言葉に甘えて見学といこう。

3年間の成果とやらをみせてくれよ。


「きたか、勇者よ。魔王様の仇、取らせてもらうぞ」



戦闘を始めようとすると、空から一匹の竜が降りてきた。

どうやらコイツがワイバーンを率いているボスらしい。



ワイバーンでない本物の竜。

しかも言葉までしゃべると来た。

魔王様がなんだといっているところも見ると、魔王軍の元幹部といったところか。



「きたか、ファフニール!君にこの町はやらせな!」



勇者が剣を抜き、戦士と聖女も戦闘態勢にはいる。

そうして勇者達とファフニールと呼ばれた竜との戦いがはじまった。



「死ね!勇者共!」



ファフニールと呼ばれた竜が炎を吐き、町ごと勇者を焼こうとする。

勇者は剣に魔力を込めて、炎を切り裂き、突撃する。



戦士は、竜の反対側に回り、勇者との挟み撃ちの体勢をとる。

挟まれた竜は意識を二分せざる終えず、苦戦しているようだ。

竜は片方を優先的に殺そうと、戦士に攻撃を集中させるが、戦士は

攻撃を食らうたびに、傷が瞬時に治っていく。



聖女の力のおかげだ。



勇者パーティーの連携が完全に決まっているようだ。

本来はここに俺の魔法攻撃がはいるのだが、今日はお休み。

3年たっててるんだ。戦い方も変わる。



下手に邪魔したら危ないからね。



「こしゃくなまねを!」



「いただくぞ!」



ファフニールは叫ぶ。

そしてその隙をつかれ戦士に翼を叩き切られた。



「ギャ!」


ファフニールは悲鳴をあげながら落下していく。



「勇者!トドメを!」



「まかせろ!」



勇者が再び剣に魔法を込める。

そうして輝きを増した剣を落下するファフニールに振り下ろす。



ファフニールは一刀両断。

頭から尻尾にかけて2枚に卸された。



「おお!勇者さまたちの勝利だ!」



兵士達は叫んだ。

勇者達の勝利だ。



勇者は剣を空に捧げ、兵士達に示す。

アピールも欠かさないらしい。



そして肝心な勇者達が俺を見つけてくる。



3年間の成果をみててくれたか?と誇ったような顔をしてた。



以前の勇者パーティーは戦力の半分くらいを俺が担っていた。

そのことについて勇者は一時期とても悩んでいたようだ。



それで極めつけに魔王との戦いでの敗北だ。

きっと死に物狂いで3年間特訓を積んだのだろう。



確かにとても強くなっていた。

たが、



「勇者!まだだ!」



大馬鹿者め。

まだ竜は死んでいない。



勇者は完全に油断してしまっており、

俺の警告を聞いて、驚いた顔をしていた。



「なんだ?この程度か、勇者?」



半分に卸されたはずのファフニールが立ち上がる。

そして傷を再生させ、復活する。



2体になって。



「馬鹿な!?」


勇者が驚きのあまり叫ぶ。



半分にされた胴体が、おのおのファフニールになったのだ。

やろう、さっきはまったく本気をだしていなかったようだ。



「「第二ラウンドと行こうか」」



ファフニール達は同じ言葉を告げると、勇者達に襲いかかっていく。



それから一方的な戦いであった。



勇者や戦士がファフニールを斬るたびに、ファフニールは数を増やしていく。

加えて、奴の戦闘能力は低下していない。



一体一体が最初のファフニールと同じ力を持っているのだ。

勇者達は次々と攻撃を食らい、劣勢になっていく。



「勇者様をお守りしろ!」



町の兵士達も加勢しにいくが、無意味だ。

意図も簡単に尻尾でなぎ払われてしまう。



「どういうしくみだ!」



「クソ!クソ!クソ!」



「か、回復が追いつきませんわ!」



今度は勇者達が無数のファフニールに囲まれていた。

斬撃をやめ、打撃にしても肉片が飛び散ると、それがファフニールへと変わる。



ついには一人につき十数体のファフニールが襲いかかり、

勇者達を一気に傷付けていった。



「弱い。弱すぎる。ああ、魔王様!あなたはこのような雑魚に負けてしまわれたのですか!」



「うう!」


「きゃあ!」


戦士と聖女が地面に倒れる。

勇者も満身創痍だ。



そんな彼らの前に、オリジナルと思われるファフニールが降り立ち、告げた。



「やはり噂は本当だったか。魔王様を殺したの貴様ではないな、勇者?」

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