第83話 田舎王子と俳優 藪 時夜
お知らせ
雅、詩織、彩羽の主演する映画の内容を
君の事を決して忘れない、のタイトルで原作としてスピンオフ投稿しますので是非読んでみて下さい!
https://kakuyomu.jp/works/16818093082599821708
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(・・・・はじめは紫苑に教室で抱き締められ・・・突然唇を奪われる・・・)
加筆された台本を見て驚いてる俺の元に詩織が満面の笑顔でやってきて
「アハハハァ~お芝居だよお芝居、みーくんさっきのアドリブの所の方が焦った感じ出て良かったから、鈴ちゃんと話してお話しに変化を持たせたのぉ」
ということは、キスのフリだけって事だよな・・・カメラの角度とかで其れっぽく見せる事も出来るしな
「あ、あはは・・そうだよね、大勢の人が見るかもしれない映画の中で本当にキスとかは・・・しない・・よね?」
俺を見つめる詩織はニコニコ笑ってて何も言ってこない・・・この場に彩羽が居たら大変だったな・・・
彩羽は今出番の前の準備中で仮設の控室にいる
「リテイク!!シーン3テイク2行くよ――!」
「アクション!!」亀山さんの掛け声でカメラが回り出す
詩織:【はじめちゃん、お疲れ様2得点おめでと!】
雅:【有難う、紫苑もお疲れ様】
雅:【ところで紫苑?この後で行きたいとこってどこ?】
詩織:【うん、小さい頃よく行ってた公園・・もうすぐ取り壊されるって聞いたから・・・その前にはじめちゃんと行っときたくて】
(ここまで少し台詞回しが違うけど・・・この後か・・頭が混乱する)
雅:【あ~ぁ、あの公園、潰されるのか・・・残念だな・・】
詩織は俺に抱き着いて来る
雅:【ど、どうした?紫苑!】
詩織:【これだけじゃ私の気持ち・・・分からないの?・・・じゃぁ・・・】
そう言うと俺に口付けをする・・・「!?」
詩織:【貴方の事、小さい時から見て来て私には貴方しか見えてないの・・・愛してるの・・・】
詩織は潤んだ瞳でもう一度口づけをしてきた・・
「はい!かぁぁぁと!、詩織ちゃん、今の良かったよ!!もうバッチリ、お姉さんキュンキュンしちゃった!」
呆気に取られてる俺の首からゆっくり降りると満面の笑みで亀山監督に微笑むと
「ねぇ?みーくんもドキドキした?あれ、私の本心だから・・私にはみーくんしか居ないから、絶対みーくんおお嫁さんになるからね♪」
詩織は眩しい笑顔でウインクすると、監督の横に行き映像確認に行った・・・
【ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・】胸の高鳴りが収まらない・・・
火照った顔もなんとか収まり次の撮影の為にグラウンドへ向かう・・・仮設のテントに「役者控え」と書かれたのを見かけ中に入ると、先ほどの吹雪くんが此方に気付き笑顔で手を振る
そんな吹雪君の前にはツンツンとした赤い髪の男の人がメイクをしてもらってるようだ・・・この人は確か・・・
高田 翔役の、藪 時夜 (やぶ ときや)さんだ、初対面の時から俺に対しキツイイメージだったけど・・一応挨拶しないとな・・
「藪さん、本日は宜しくお願いします」俺は藪さんの前に立つと深々とお辞儀した
「ああ、メイク中で失礼するけど・・まぁ宜しくね・・」
目を瞑ったまま無表情でメイクを施されて藪さんは俺に対して明らかに冷たい態度だ・・そっと吹雪の方を見ると苦笑いして首を振っている
結局3人の役者は特に言葉も無いまま其々が準備をして撮影本番を待つスタッフの人が呼びに来て撮影が始まる
「それじゃーここが冒頭の掴みの所だから!!気合いれてぇぇシーン1テイク1・・・・アクション!!」
藪:【ナイスアシスト!はじめー!】
雅:【ナイシュー!翔!】
俺と藪さんはお互い笑顔で見合って人差し指を立てて合図する
吹雪:【はじめ、DFラインをもう少し下げるべきだな】吹雪さんはさっきまでのチャラけた様子を微塵も感じさせないシリアスな表情でその実力に感嘆するしかない
藪:【はぁぁぁ?大樹!!俺の華麗なシュート見ただろ!ここは俄然攻勢に出る場面だろ!!】台本よりも強めに吹雪さんを押しのけカメラの前にアピールする藪さん
吹雪:【翔・・・お前の動きに他のFWもMFもついていけてないだろ?、お前、前回の大会で何回オフサイド取られたか忘れたのか?】
藪:【んなもん!DFラインの前でパス受けて俺がドリブルで突破してやら!】明らかに翔の演技がオーバーリアクションぽいけど・・カットは入らないので演技続行だろう・・
それからも藪さんの演技は目立っていて明らかに俺達よりカメラ前に出ようとする意志を感じた
雅:【翔の頭の中は別として、奴等を引きずり出すって所は賛成だ】
吹雪:【なるほど・・判った・・出来れば後半にはお出まし頂きたいもんだな】
「は――い!カット!映像確認します!」
亀山監督と助監督の人たちスタッフで映像を確認してる間、俺達は「役者控え」に戻っていた・・・
「なぁ時夜、あれ何だよ・・・話の雰囲気台無しにして自分が目立ちに来るとか役者として有り得ないだろ」
いつも飄々としてる吹雪君にしては珍しくイライラしてる様だった・・
「はぁ?何だぁ吹雪・・自分のその下手くそな演技棚に上げて俺に因縁付けて来るなよ・・鬱陶しいぃ!」
「そ、その・・俺は役者素人で偉そうな事は言えませんが・・・吹雪君の演技は凄く良かったと思います」
俺の事を横目で睨むと「フンッ」と鼻で笑って見向きもしない藪君
「ああ、確かにお前の演技では何も言えないわぁこのド素人がぁ!!」【ガシャ】目の前のパイプ椅子を蹴り倒す
「おい!時夜!!いい加減に「皆さん先ほどのシーンは一発OK出ましたので次のシーンに入りま~す」
スタッフはそう告げると「クッ」悔しそうに俯く吹雪君と「アハハハダッセっ!見る人は見てるって事だぁ!!」
そう言いながら俺と吹雪君を蔑んだ目で見ながら控えのテントから出て行った・・・
「・・・まぁ行こうか・・・雅・・・」「う、うん・・」俺達は少し重苦しい空気の中で次のシーンの撮影に入る
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